じいの家族と昼食
じいにお風呂の説明をして、居間に行ったら机が増設されてた。
今から昼食だからね。
こんなに人が居たのかってほど、人が多い。
なになに?
じいに、息子夫婦に娘夫婦、子供達の孫嫁、孫婿達とひ孫達たくさんと。
家が大きいのに、こんなに人が居たらぎゅうぎゅうだよ。
そら、嫁さん達って言うか、奥様方が団体で帰ってくるよ。
それで、昼食は大皿提供のバイキング式と。
料理の取り合いにならないかな?これ。
みんな、じいのビフォーアフターに驚いていた。
「じい、若返って綺麗になったね」て。
子供達は「肉ー!肉ー!」って騒いで、肉料理の前に陣取ってたよ。元気ー。
私と同じくらいの子供もいた。私より大きいけど1歳半だって。
なんか凄い寄ってきた。自分より小さい子が珍しいのかも。
そして、待望の農家の昼食!
肉を提供したからか、野菜!って感じの食事にはならなかった。
ゴルダンの肉の味は「まったりもったり」。なるほどなと思う味だった。
肉は小さく、私に丁度いいくらいの大きさで切られてたけど、舌に絡みつくような、ねっとり感があって不思議な感じの食感だった。
じいの家族は、取り合いになるでもなく、みんな味わって食べてたのが印象的だった。(農家に肉は貴重です)
それでね、食事中は我慢してたんだよ?
でもね、午前中、農作業していた大人達が帰ってきたんだよ?普段から体を清めるのは拭くだけの大人達が汗かいて。
もうね、くっさーーー!!!
服に染みついた匂いやら、フレッシュな汗の臭いやらが充満して、もう、ね?
食事を食べ終わったら、ボスの、いや、じいの娘さんに「全員分の服を作るなら、幾つ必要ですか?」ってラズに通訳してもらって反物いっぱい取り出したよね。すっごい喜んでくれた。
で、男性陣が休憩して仕事に出た後に部屋の空気の入れ替えを能力でしちゃったよね。仕方ないよね?ね?
でも、みんなトイレから帰ってきた時が1番面白かったかも!未知との遭遇!みたいな!
じいがいちいち説明しに行ってた。(じいの膝が良くなってよかった)
それで、食事の後片付けをする奥様方と子供とじいと私達が残ったのさ。
それで、石鹸の木を植えないといけないわけで、じいに植える場所を案内してもらったの。
農家を78年してきたじいは、それはもう陽当たりのいい場所を案内してくれたんだけど、石鹸の木は日陰でも、どんな環境でも育つんだよね。だから、「日陰で乾燥した場所でもいいよ」て言ったら「本当に?」って顔で見られて面白かった。
それで、私、天空王国の人の靴ってまじまじと見た事無かったんだけど、皮じゃないんだよね。木靴なんだよ。
もうね、創造神様製の柔らかい丈夫な靴を履いてるのが申し訳なくなってきちゃうよね?
だから、じいの家にマップで印をつけて「またくりゅにぇ」て最後に抱っこしてもらってから、お城に帰ったの。
帰った事にしただけ。
じいの家が見えなくなったら、全員のバイクを収納にしまってザイデンの家の前まで全員で瞬間移動する。
玄関前についたら代表でラズにノックしてもらう。
なんかラズが秘書っぽいな。私の秘書。いや、生活のお世話もしてくれているからベビーシッターか?
パカっと玄関の覗き見するところが開く。
「どちら様ですか?」
めっちゃ警戒されてる。
「教会の者です。サチ・スメラギが来たとザイデンさんにお伝えください」
いつぞやの執事!また来たか!と心を落ち着ける。
動作にもそれは現れた。
扉が開く。
目で飛んでいる使徒様と教会の御付きを確認する。
そして優雅にお辞儀する。
「ようこそおいでくださいました。
ですが、主人のザイデンは只今、店の本店におりまして、火急の要件ならば使いを出す事もできますが、いかがなさいますか?」
ラズがサチを窺う。
「サチ様、どうしますか?」
「りべんだーしゃんは、いましゅか?」
これは執事にも聞き取れた!
「リベンダーは在宅しております。応接室へご案内いたします」
一行を家の中に案内して、メイドを捕まえて接客をお願いしたら、執事、マッハである!主人の元へ!
以前もそうだったが、執事、意外と体力がある。
その頃、サチ達は数日前に来たばかりなので、応接室でくつろいでいた。護衛3人は立ったままだが。
そこへ、メイドがやってきて、目の前でお茶を入れてくれる。優雅だ。
それからクッキーも出てきた!
サチ、また大喜びである。
そして、味を品評する。うむ、サクッとした食感と舌触りが良い。満足である。
お茶も素晴らしい。商家の家なだけはある。香りが良い。
うん、サチ満足。
以前よりも早くリベンダーが来た。
以前はお茶のおかわりをした後だった。あ、お菓子もおかわりしたよね。
「使徒様、ようこそ、我が家においでくださいました。歓迎いたします」
そう言って一礼した後にソファに座った。
すかさずメイドがお茶を置く。
リベンダーがお茶をひと口飲むのを待ってから話をきりだす。
「りべんだーしゃんに、おにぇがいしたいことがあって、きましゅた」
微笑を浮かべてリベンダーがサチへ問う。
「私にお願いとは何ですかな?使徒様には恩がありますので、できる限りはお聞きしたいですが」
「くつしょくにんを、しょうかいしてほしいでしゅ」
リベンダーが少し眉を顰めた。
実はこの会話、サチがタ行が苦手なのを隠している。
サチ的には「くつしょくにん」と言えているのだが「くちゅしょくにん」になってしまった!「くつ」と「しょくにん」の合わせ技はサチには早かったようである。
でも大丈夫。
ちゃんと通訳がいるからね!ラズ!
「サチ様は、靴職人を探しています。それも出張で靴の作り方を教えていただける者です。いますでしょうか?」
リベンダー、やっと理解できた。
ホッと一安心である。
そして、思案する。知り合いの靴職人を思い出して。
「何人か心当たりがありますが、職場を離れて指導してくださるかはわかりません。それでもよろしければ紹介状を書きますが……」
サチとラズは顔を見合わせた。
うん、それでOK!
「よりょしくおねがいしましゅ」
「それでは、席を外します。紹介状を数件分、約1時間ほどで帰ってきますので、庭などを散策されてはいかがでしょうか?」
「そうですね。ご好意に甘えさせてもらいます。お手数おかけしますが紹介状の方、よろしくお願いします」
ラズが立ち上がって礼を述べた。
リベンダーも礼を返した後に部屋を後にし、少し待つと執事が来て庭に案内してくれた。
例の神々の像が設置してある庭である。
サチ達は清浄な空気と自然の香りに頬が緩む。
じいの家の家族が臭すぎた。いや、あれは忘れよう。
庭を一周散策した後はガゼボに移動して座っていると、メイドさんが軽食とお茶を持ってきてくれた。
ご好意に護衛達も全員座って、休憩する。
パンが、パンが美味しい!
サチがザイデンにお願いしたパンの完成度が高くて、サチもみんなも笑顔だ。
メイドさんに料理長を褒めるようにお願いする。
メイドさんは心良く請け負ってくれた。
メイドさん自身も、元から美味しかったリー家の食事が更に美味しくなって満足していたのだ。
メイドさんは『このお屋敷より快適に働ける職場なんて無い』と心から思っている。
主人達家族は抜け目が無いが使用人に基本的には優しい。給料などの待遇も良い。商家だから貴族の使用人のように気負わなくても良い。
自身が結婚しても働き続ける理由がここにあった。




