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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫


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153/207

家畜を育てている場所へ 2 村に行こう

 大臣に案内してもらった家畜放牧場とは城から20分ほど離れた場所に広大な面積をとられていた。


「こちらが、家畜放牧場です。消費と生産・新しく生まれる命ですな、それが釣り合うように管理してくれています。何かご質問はありますか?」


 広大な牧場。

 そこを中型、サチくらいの大きさの飛ばない鳥たちが走りまわっている。


『城の料理の肉がタンパクだったのは鳥の肉だったからなんだな』


 ふと、納得した。

 だが、卵料理は無かったことから、すべて孵化にまわされているのかもしれない。


「にゃかをしゅこし、けんがくしたいでしゅ」


 すかさずラズが通訳する。


「建物などの見学をさせてもらえますか?」


「いいですよ。行きましょう」


 快く案内してくれた。


 数家族で牧場の経営をしており、とても忙しそうにして働いていた。


 餌場、水場、屠殺した鳥の加工場、血抜き場、羽毛の仕分け。

 いろんな作業場があった。


 とりあえず、頭の地図にマッピングして、大臣に「ありがとう、ここまででいいですよ」とさよならした。


 敷地に対して家畜が少なすぎるので、新しく動物を追加しても良さそうだ。


 サチは偉そうに納得して、城の客室に瞬間移動で全員帰った。



 部屋に帰ったサチは自分の計画をラズに伝える。


「村長さんの所に行って家畜を仕入れたいですって?」


「しょうでしゅ!」


 サチが初めてこの世界のアタラカラに来た時、パンのミルクスープを食べさせてもらった。多分だけど、乳を出す家畜がいるはずだ。


「いみゃ、いまかりゃいきましゅ!」


「私もついて行くとして、護衛はどうしましょうか?」


 ラズが護衛達を見る。

 護衛達は村についていけるのかドキドキだ。


 サチが宣言した!


「えりぇにゃだけ、ちゅ、つれていきましゅ!」


 ちょっと気合いが入りすぎてサチはどもってしまった。だって村長に会えるんだもん。


「かいじゃーと、りゃいでんは、おやしゅみでしゅ!」


「サチ様!じゃあ、どこに行ってもいいのか?」


 カイザーが質問してくる。


 サチはラズの腕の中から鷹揚に頷いた。首が短いけど伝わったようだ。


「じゃあ!じゃあ、サチ様!俺の部屋にモルートに繋がるドアを設置してくれよ!」


 カイザーがうきうきしている。よほど嬉しいのだろう。


 サチはおうちを出して、飛んで中に入る前に格好つけた。


「かいじゃー、きにゃ」


 カイザー、来な、と格好つけたつもりが、可愛くなってしまった。

 だが、カイザーは意味を理解して、いそいそとサチに続いて中に入る。


 その流れで、みんなおうちに入った。

 そして、カイザーの部屋に入っていく。


 サチはカイザーに目配せした。

 カイザーは了解して「ここだ、ここ」と壁を叩く。

 サチはカイザーが叩いた壁の前を飛んでモルートに繋がる扉を出した。


「かいじゃーがつにゃがってほしいばしょを、おもいうかべてくだしゃい」


 カイザーはどきどきしながら、目を閉じて、懐かしい我が家を思い浮かべる。そして扉を開いた。


 そこは、古めかしいが生活感のある家屋の中に続いていた。

 カイザーは目を輝かせて首を突っ込んで見渡してから扉を閉めた。満足そうだ。


「サチ様!ありがとうな!あとよう、エレナも通れるようにしてくれるか?」


 サチの目は輝いた!

 あれか!?娘さんを俺にくださいか!?


 サチはいそいそとエレナも通れるようにした。


 扉の前で腕を組んで満足そうだ。腕、組めて無いけど。


 とりあえずお昼になったので、リビングで収納から取り出した料理をよそって昼食を食べた。

 肉が入ってたので、みんな満足そうだ。


 サチは昼食後にしゃりしゃりのミックスジュースを飲んでひと休憩してからエレナとラズを伴って、おうちを出た。

 カイザーとライデンはおうちからつながるモルートとナタリーの食堂に行くようで、おうちをいったんサチの収納にしまった。トイレは持ち運びしないとね。


 ラズとエレナを近くに呼んで、村の門番さんの死角となる場所に瞬間移動して村の近くまで来た。


 サチはラズに抱っこされて、門番さんの前に姿を現した。


「お?お!今回は覚えてるぞ!神官様と迷子の赤ちゃんだな!初顔さんがいるが、神官様の関係者か?」


 サチ達に気がついた門番さんが気軽に声かけてくれる。

 エレナが自己紹介をした。


「聖騎士のエレナと申します。サチ様の護衛です。よろしく」


 ビシッと姿勢正しく門番さんに相対した。

 門番さんは「聖騎士様ですか!よろしくお願いします」とぺこぺこと頭を下げた。

 教会の威光が強いぞ!


 と、何事もなく村の中に入って、村長の家を目指す。


 ここは、いつ来ても変わらないな、とちょっと村長に会えるので、胸を高鳴らせていると、村長の家が見えた!


 ラズが入り口全開の村長の家のドアを指でトントンして、中に声をかけた。


「すみません!どなたかいらっしゃいますか!」


 家の奥から声が聞こえて来た。


「はい、はーい!どなたですかー?」


 あ、息子さんのお嫁さんだ!ラズ達の教会の服を見て怯んでいる。

 ちょっとびくびくしながらも応対してくれた。


「村長に用があるのですが、ご在宅でしょうか?」


「ち、義父は今、村の見回りに出ています」


「おくしゃん!おくしゃんはいましゅか!」


 お嫁さんは声を上げたサチに気が付いて、あっ!とした顔を浮かべた。


「あ!あ〜、お義父さんと仲の良い、んん〜〜、誰だったかしら?」


「しゃちでしゅ!おくしゃんはいましゅか?」


 サチ、自分の名前が言えない。いや、気合いを入れたら言えるのだが。


「おくしゃん……。あ!お義母さんね!家にいるからね、連れてくるわ!」


 「お義母さ〜ん、赤ちゃんが会いに来てるの〜」と声が離れていく。

 赤ちゃんじゃないやい。


 ラズの胸元でうじうじする。


 パタパタパタと足音が聞こえて村長の奥さんが入り口に来てくれた。


「サチちゃん!と神官様!この前はありがとうございました。どうぞ、中に入ってください」


 どうぞ、どうぞと奥さんが中に消える。

 失礼しますと中に入る。


 奥さんがリビングでコップに飲み物を注いでくれた。お茶じゃなく水だけど。


 奥さんの向かいの椅子に座る。エレナは護衛だから立ったままだ。せっかく奥さんが飲み物を用意してくれたのに。


「えりぇにゃも、しゅわってくだしゃい。ここにきけんはありましぇんかりゃ」


 エレナは戸惑ったように椅子にかけて、奥さんに挨拶した。


「聖騎士のエレナです。サチ様の護衛をしております」


「ご丁寧にありがとうございます。この村の村長の妻でございます。聖騎士様には初めてお目にかかりました。格好いいですね」


 奥さんのほんわかした雰囲気に場が和んだ。


 お嫁さんの食器を洗う音だけが聞こえる。


「おくしゃん、きょうは、かちくをかいにきましゅた。ばしょをおしえてほしいでしゅ」


 サチはおやつにシュークリームを出してラズにみんなの前に配ってもらう。


 そして奥さんにはサチの言葉がわかった。


「かちく、家畜ねぇ。村で最小限しか育てていないから売ってくれるかしら?あら、いただきますね。もぐ、あら、美味しい」


 美味しい物の前に人間は無力なのだ。

 しばし、おやつ休憩。


 シュークリームの余韻を楽しんだ後に奥さんがコップを片付けて、家畜のいる場所に案内してくれることになった。ありがたい。

 サチはさりげなく、机の上に、この間収穫したばかりのパイナップルを乗せた。お土産だ。きっと美味しい。


 むふん、と奥さんの後をラズに抱っこされたサチと護衛のエレナが行く。


 村の中で目立つ目立つ。


 奥さんの説明だと、家畜は魔物に狙われるから村の中心部にいるんだって。馬とかもね。村長の管理らしいよ。世話する人は雇っているらしいけど。


 ここでワンポイント!馬にはツノが生えていた!元は魔物で子孫らしいよ。名前も馬じゃなくってマーノと言うらしい。ふむ、勉強になる。


 それと、鳥ももちろんいた。天空王国とは違う種類だけどね。うじゃっといた。


 馬、じゃなくてマーノと鳥を過ぎたら、ミルクを出す種類の4足の動物がいた。

 体毛は薄いピンクで牛ほど大きくなくてまるっとしてて、多産で育ちが早くて繁殖力が強くて雑食で、村向きの家畜らしい。名前はビグー。気性も荒くないから飼育しやすいって。糞も肥料として使っているらしい。

 ふむ、これは飼いやすいんでないかい?


「サスケさん!サスケさん!いるかい!?」


 奥さんが大声を出したからびっくりしちゃった。


「おーう!いるよー!どうしたー?」


 家畜の鳴き声に負けない声でサスケさん?中年の男性が出て来た。


「ビグーを買いたいって子が来てるんだけどね、どれくらい売れるかい?あ、サチちゃん、オスとメス、どっちがいい?」


「はんしょくしゃしぇりゅにょで、りょうほうほしいでしゅ」


 難解なサチ語、キター!

 すかさずラズがフォロー!


「繁殖させるのが目的なので、若いオスとメスが欲しいですね」


「そうかい。サスケさん、どうかね?」


「老いたのから肉にしていってるから、今いるビグーはみんな子供を産むよ。どれくらい売れるかは、う〜ん、ちょっと確かめてくるよ」


 サスケさんは家畜小屋の中に入っていった。


 サスケさん、名前がかっこいいの。日本風。


「サチちゃん、買い物の予算はどれくらい?」


 奥さんが話しかけてくれた。


「よしゃんはね、いくりゃでもいいよ」


 奥さんがでれっとした顔をした。サチが可愛くて仕方がないらしい。

 ラズも満足げだ。


 サスケさんが出て来た。


「オスが6匹にメスが5匹だな。それ以上、売っちまうと村で肉が足らなくなるよ」


「1匹おいくら?」


 奥さんが交渉してくれるらしい。


「オスが銀貨7枚で、メスが大銀貨1枚だな」


「もっと安くならない?」


「この値段でも家畜なら十分安いよ。これ以上は村長の家に損が出るね」


 サチが交渉を止める。


「おくしゃん、おくしゃん、こりぇ、おかにぇでしゅ」


 サチが金貨1枚、約100万円を渡した。

 サチ的にはこんなに良いビグーが安く買えてご機嫌である。


「あら、ありがとう。おつりは家に帰ってからね。それとビグーをどうやって運んでいく?」


 サスケさんがエレナに話しかけている。ビグーの取り扱いだそうだ。初心者でも育てれるけど、雑食だから鳥やビグーより小さい家畜がいると襲うから注意してくれってことらしい。


 むーん、天空王国の牧場は鳥が走り回ってたから、柵で区切ってビグーを孤立させないといけないな。


「あした、あしたとりにきましゅ」


「そう、明日ね。サスケさん!明日ビグーをとりに来るから!」


「おう!わかった!」


 ビグーは良い家畜だ。見た目もかわいい。食べるのが可哀想になるくらい。


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