国王一家とケーキ
国王一家はケーキを食べ終えた後に一息ついてお茶を飲んだ後に、まだ残っているケーキに目をつけた。
見てる。めっちゃケーキを見てる。ガン見である。
天空王国。食事は基本的にバイキングの国である。
無くなったらおかわりが出来るのだ。
「おかわりを貰ってもいいかね?」
国王様がラズに聞く。
「どなたがおかわりなさいますか?」
国王一家全員が手を挙げた。
だが、豪華フルーツケーキは、あと2人分しかない。
困ったラズは「サチ様、ケーキのおかわりをお願いできますか?」と聞く。
聞いたサチは「同じケーキじゃ飽きるよね」と、うんと頷いて、みんな大好きチョコレートケーキを創造した。子供が好きそうなデコデコのデコレーションの綺麗なチョコケーキだ!これも大きい。
国王一家の目が輝いた!何これ!?凄い綺麗!!
納得したラズは聞いた。
「どちらを食べますか?」
国王一家満場一致でチョコレートケーキだ!!!
綺麗にカットされたケーキが手元に来たら、うっとりと眺める。幸せな香りがする。
フォークを差し込み口の中に入れると、ほろ苦さとガツンとくる甘味にうっとりする。こんなの初めてーー。
凄く、うっとりした顔で国王一家がチョコレートケーキを味わって食べている。
もちろん、そんなの見せられたらサチもラズも食べたくなっちゃう。2人もチョコレートケーキを食べる。
チープじゃない濃厚な味。だけど子供も美味しく食べれる。これぞ一流!
一同、満足の息を吐き出した。
後ろの騎士達は涎を我慢しているが。
そして、残ったケーキが国王一家に食べ尽くされて、新たに紅茶を入れ直した後に本題に入る。
本題前が長かった。
「たいじゃいひを、はりゃいたいとおもいましゅ。にゃにかほしいもにょは、ありましゅか?」
国王一家「?」である。子育てした経験があってもわからないものはわからない。サチ語は難しい。
ラズが通訳する。
「このお城にお世話になっている滞在費を払いたいと思います。何か欲しいものはございませんか?サチ様なら何でもご用意できますよ」
ラズ、何でもは言い過ぎかもしれないの。凄く誇らしい顔をしているけど。
国王の長男が理解して叫んだ。
「肉!!」
「これ!ヒース!」
サチはうんと頷いた。
この城には肉が少ないと思っていたのだ。
王妃様が呟く。
「綺麗な服を仕立てたいわ……」
これには国王が凹んだ。甲斐性のない夫で済まないと。
とりあえず欲しいものを言えば良いと理解した末っ子も呟く。
「くだもの」
甘いのが食べたいお年頃です。
国王は凹んでいるが、国の為になる物を考える。
家畜。
そう、家畜が少ないのがそもそも不満の原因なのだ。
たまに地上に降りても大量に物を買ってこれない。そこが問題だ。
国王も口から欲しいものがこぼれでた。
「家畜……マジックバッグ……」
素直な家族だ。
サチはうんうんと頷いて広い場所に飛んだ。
そこで、容量が宮殿くらいの大きさの時間停止の不壊のマジックバッグを創造する。
その中に今の手持ちのギガンデスの肉を収納から取り出してマジックバッグの中に入れていく。
少し食べたが元は大きい竜だ。個体半分くらいの量はある。城で満足できるくらい食べられるだろう。
次に綺麗な服は仕立てられないが、布は結構持ってる。
妖精の里で買ったハブスシェードでしょ。各色5反ずつだせばいいかな?あとは妖精の里近くで買った綿に似た反物これも各色5反ずつ出す。
これで服が仕立てられるだろう。
果物。
これはむずかしくないけど土地が必要だ。あとお世話する人も。
国王に相談。(サチは城での滞在費が果物段ボール1箱ぐらいとは考えていない。大人4人サチ1人。三食部屋付き、いつまでいるかわからないからだ)
家畜。
なんとなくあてはあるけど、大量には売ってくれないかもしれない。
あとはザイデンさんに村を紹介してもらおう。
これも国王に相談。
うむ、とサチが顔を上げると国王様が唖然とした顔で見てきた。
あ!マジックバッグの中に肉を入れたから良くなかったかな?
マジックバッグを持って国王の隣のソファに着地する。
「まじっくばっぐのにゃかに、おにくいりぇたにょ。だめだった?」
これは国王にもわかったぞ。
「い、いいや、駄目じゃないよ」
「じゃあ、はい!あげりゅ」
差し出されたバッグを慎重に受け取って、実感が湧く。
大量の肉をマジックバッグにいれてくれた!そのままくれた!貰ってもいいの?これ?貰ったけど。
「使徒様、この床に置いてある布は?」
王妃様が期待半分にドキドキしながら聞く。
「きりぇいなふくをしたてて!」
ズキューン!!!
貴方は神か!
王妃様はサチに胸を射抜かれた!!
「こくおーしゃま、かちくとくだもにょには、とちがひつようでしゅ。どこをつかっていいでしゅか?」
「かちくとくだもにょ」
ラズが通訳する。
「家畜と果物には土地が必要です。何処の土地を使ってもいいか教えてください。あ、あとお世話する人も必要ですね」
サチが言い忘れていた人員のことを言ってくれた!さすがラズだ!
国王様は涙腺が緩んできた。自分たち家族の希望を全て聞いて叶えてくれようとしているからだ。
「創造神の、使徒、様……」
「さちってよんで」
「サチ、様?」
「しょう」
「くぅっ」と国王は喉から絞り出したような声を出してマジックバッグを抱きしめて下を向いた。
正面に座る家族が夫の父の見たことのない姿を見て戸惑っている。
国王には家族と国民を守る重圧があり、仕事を理解すればするほど足りない物がわかってきた。
限りある資源の中で生きていかなければならない重圧。それが少し緩んだのだ。
国王は目元をグイッとぬぐって、サチを見た。
「土地と人員はお任せください。明日には揃えてみせます」
真っ赤な顔に晴れやかな顔だった。
当初の国王に会って肉について話そうと思ってた事が、国王とその息子に言われたので解決しそうである。
いや、まだサチがしないといけないことがあるのだが。
部屋から出たサチ達は、まだ早い時間にどうしようか?と顔を見合わせると、騎士達からの熱い視線に気がついた。
ん?と不思議な顔をするとカイザーが目の前にヤンキー座りしてきた。
「サチ様よお。国王様達とよう、ラズと2人で、随分とうまそうにケーキを食べてくれたなぁ。こちとら腹が空いちまってよお」
なんかガラの悪いヤンキーみたいに凄んでくるが、ようはあれでしょ?「俺もケーキ食べたーい!」だよね?
「けーき、たべましゅか?」
「おう!食べたくて食べたくて、どうにかなりそうだったぜ」
機嫌良さそうに立ち上がって新セグウェイを取りに行く。
帰り道はわかるようだ。
サチも飛んでみんなについていく。
部屋に戻ったら、フルーツケーキとチョコレートケーキをねだられた。
ラズとサチはお腹いっぱい。