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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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レッツ バイキング!

 ぶっちゃけて言えば『食べ方の作法がわからない』


 サチ達を案内してくれた案内人は仮セグウェイを駐輪場ならぬ、仮セグウェイ置き場に置いて後ろを見た。

 サチ達一行が固まってるのを見て「そういや地上からのお客様だったな」と思い説明に動き出した。


「ここは身分を気にしなくていい食堂です。料理の隅に置いてあるお皿とカトラリーを手に持って、食べたい料理を盛り付けてください。それから空いている席に座り食事をしてください。おかわりは自由です。食べ終えたら出入り口にある入れ物に汚れたお皿とカトラリーを入れてから退室してください。えーと、この説明でわかりましたか?」


 案内人は自信なさげに客人を見る。

 なんだか助けを求めるような目で見られた。


「えー、じゃあ、私について来てください。真似してくれたらいいですから」


 カイザー達は案内人の女の人についていくことにした。だって説明してくれてもよくわからないのだ。異文化交流だね。




 そんなわけで、みんな1列に並んで皿を1枚ずつ手に持った。サチは目も頭もぱっちりと起きたのでラズの頭の上を飛んでいる。翼を出して。非常に目立っているが。


「誰だ?」

「誰だ?」

「妖精族か?」


 と、一部に誤解されそうになっているが、今は無視である。

 ラズ達が『初めてのおつかい』ならぬ『初めてのバイキング』を成功させるのを見届けるのが役割りであるからして。


 ラズ達一行はけっして案内人の女性から目を離さない。見逃してはいけないとばかりにガン見している。


 案内人が料理を皿によそえば同じ物を取り、歩けばついていく。決して違う動きはしない。

 バイキングを知っているサチからすれば、お笑い芸人を見ているような気になってきた。思わず顔がにんまりしちゃう。

 案内人の女の人も戸惑っている。


「皆さん、同じ料理を取らなくてもいいんですよ!」


 はて、私達はマナー違反をしましたか?という顔で一斉に見る。女性の顔が引き攣った。そして諦め顔になり黙々と自分の食べたい料理をよそっていく。

 お皿が料理でいっぱいになったら空いている席を探す。


 やっぱり料理に近い場所から人気の席があるようだ。


 案内人女性が動き出した!遅れまいと慌てて後をついていく。


 サチはそれを高みの見物だ。笑っている。


 案内人女性は6人掛けのテーブルに料理を置いた後、飲み物を取りに行った。

 置いてかれまいと、みんなも料理を置いて案内人女性についていく。

 案内人女性はチラッと後ろを振り返った。ついて来ている。木製のコップを手にとってドリンクバーもとい、複数種類の飲み物が並んでいる中から案内人女性の好きな飲み物のフルーティーな香りのするお茶をピッチャーから注いだ。


 飲み物は沢山あるのに、案内人女性の動きを見逃さない目つきでみんな見ている。

 案内人女性の顔は真っ赤だ。振り返ってラズ達に言う。お茶まで同じ物を入れられては恥ずかしくてたまらない。


「飲み物は沢山種類があります!自分の好きな飲み物を選んでください!」


 言った後にカトラリーを手に持って席に歩いていく。


 ラズ達は複数の飲み物の前に固まった。味の想像が全く予想がつかないのだ。

 そして、やっぱりハズレがないだろうと案内人女性と同じ飲み物を注いでいくのだった。


 もうサチは耐えられない。笑いが!お腹が!苦しい!


 笑いで苦しいが、このままだと自分の食事だけがない。案内人女性の後を追った。


 そして案内人女性の肩をポンポンする。


「おにぇーしゃん、おにぇーしゃん、わたちのしょくじよしょってくりぇりゅ?」


「え?」


 何か飛んでるなぁとは思っていたが、飛ぶ乗り物が珍しくない天空城にとって飛んでいる人は珍しくないが、飛ぶ幼児は珍しい。

 よって、案内人女性は驚きすぎて体を大きくのけ反らせた。


 それでもサチは料理のアピールをする。


「りょーり、ほしい」


 これなら難解なサチ語もわかりやすいだろうと。


「え?は、え?」


「りょーり、ほしい」


「料理、が、欲しい、の?」


「いっしょに、えりゃんで」


「一緒に?」


「しょう」


 サチは頷く。


 「一緒に、一緒に」と案内人女性は理解するように呟く。

 そして、うん、と頷いてからサチの希望を叶えようと立ち上がってくれた。

 サチもにっこりだ。


 案内人女性と一緒に料理の置いてある場所に向かう。


 そして、案内人女性に少しずつ沢山の数の料理をよそってもらう事に成功して、さらににっこりだ。飲み物も入れてくれた。


 その間、ラズ達は勝手に食べて良いのかわからずに、大人しく周りを観察して静かにしていた。

 そしてこの料理の食事の仕方を理解することが出来た。一歩成長した地上組だった。


 サチが案内人女性とテーブルに帰ってきたら、成長した大人達がいた。サチも一安心だ。


 天空城には食事前の挨拶が無いようで案内人女性に教会組は不思議そうに見られたが無事料理を食べ始めることが出来た。


 でも、サチは不思議だ。

 もっちもっちと食べながら天空人は菜食主義者なのかと悩む。料理に肉が無いのだ。いや、あるのだが、細切れ肉でとてもヘルシーなお味だ。という事は菜食主義者じゃ無いと言う結論になるのだが、その結果にたどり着くと天空城でのせっかくの楽しみが半減してしまいそうなのだ。いや、決して料理が不味い訳では無い。むしろ野菜と細切れ肉でここまで味を出せるのは凄いと思う。

 そしてスープが無い。厨房から持ってくるのは大変なのだろう。いつも以上にお茶が進む。


 初めは勝手に動くカトラリーに驚いていた案内人女性だが、誰も驚いて無いのを見ると心を落ち着かせたのか普通に料理を食べ出した。


 相手が女性という事でエレナが案内人女性にいろいろと聞いて情報を引き出している。

 それを盗み聞きする地上組。


 まず、飛んで、いや、浮いて移動する乗り物は『スナー』と言うらしい。大小と多少言い方が変わるらしいが大枠ではスナーなのだ。


「スナーで荷物を運ぶ」「スナーで移動する」こんな感じだ。住民1人1つは持っているらしい。複数代持っている人もいるらしいが。

 それと『地上人に浮遊石は渡さない』

 これは昔からの決まりなんだそうな。多分、浮遊石を巡って争いを起こさない事が目的ではなかろうか?


 エレナがズバリ聞いていたのは「肉は貴重なの?」

 これはYES。

 魔物が居ない代わりに家畜しかいないらしい。そして、家畜は貴重なんだとか。

 これがさっきの楽しみ半減だ。


「住民は何人いるの?」の質問には「天空王国の大地は広いから何人居るのかわからない」だ。

 これは国の上層部が隠してる説が濃厚だと思う。


「国王様と王妃様には、どうしたら会えるの?」と聞けば「国王様の部屋に行けばいつでも会える」そうだ。そんなに気楽でいいんかい。


 とにかくエレナと案内人女性のお話を聞く限りは、この国はこの世界のどこよりも安全な場所だという事だ。日本人の平和ボケに通じるものを見た気がする。


 だって「飛行魔物がきたらどうするの?」の質問に「結界があるから入ってこないわよ」だもん。私達、結界を潜り抜けてきましたけど。


 こう、危機意識が無いね。


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