シュゼックス・モルート領主と対面
ラズに昼食を食べさせてもらっている時に大司教様が来た。
「サチ様はご機嫌麗しいようで、昼もかわいさと神々しさが溢れてますなぁ」
「だいしきょしゃま、なにかごようじでしゅか?」
「いやあ、バレましたか。
昨日伝え忘れたのですが、今日の午後、これからですな。この地の領主様がいらっしゃるのですよ。そこでサチ様にもご同席いただきたく。
忘れてしまって申し訳ないです。して、サチ様のこれからのご用事はありますかな?」
「ようじにゃいでしゅ。りょうしゅしゃまがきたりゃ、どうしたらいいでしゅか?」
「サチ様は何もする必要はありません。綺麗な翼をちょこっと見せればよいのですよ。それでわかりますからな」
飛んで領主との面会場所に行けばいいってことね。
「わかりましゅた」
「それでは領主様が来たらご連絡しますので、部屋でおくつろぎください。では失礼します」
大司教様、視線を合わせるのに中腰だったけど、腰痛くなかったのかな?優しいなぁ。
「サチ様、あーんですよ」
「あーん」
まだ昼食中でした。どうにか1人で食べれないかな?不満があるんじゃなくて、教会から出て行った時に1人で食事も出来ないんじゃ、何処にも行けない。机と椅子の大きさも合わないし、飛んで食べるしかないかな。
でもナイフとフォークが上手く持てない。スプーンもあやしい。能力で思うように動かないかな?
あ、フォークはラズが持ってるけど、ナイフとスプーンがカタカタいってる。あ、飛んだ。スプーンでスープを掬ってこっちまで持ってきてくれる。ぱくりと食べる。
「サチ様、スープが飲みたいなら言っていただけば動きますのに」
「ひとりでたべりゅ、りぇんしゅうでしゅ」
「お一人で食べるなんて。教会にサチ様がおります限り私がお世話させていただきます」
「きょうかいかりゃ、でていったときにこまりゅ」
「教会から出て行くなんて!そんな!」
ラズがショックを受けている。そんなにショックだったかなぁ。私も勉強が終われば、お勤めの為に世界に出て行くんだから当たり前だと思うけどなぁ。
「りゃず、あーん」
「失礼しました。あーん」
真面目なラズが「あーん」などと言うと「ギャップ萌え〜」なんて声が聞こえてきそうだ。
領主ってどんな人だろう?午後からの面会に思いを馳せた。
昼食を食べて部屋のベッドでうとうとしていると、ノックの音が聞こえてきた。
「誰ぞ!」
「領主様が到着されました!面会室までおいでください!」
「わかった!サチ様、起きれますか?」
「あい、おきましゅ」
靴を履かせてもらって翼でラズの後を飛んでついて行く。ちょっと寝ぼけてしまった。涎が垂れてないのが救いだ。
面会室は1階のようだ。ちなみにサチの部屋は2階である。客間を使っている。だから豪華なのだ。
ちょっと長い距離を飛んで、着いたようだ。
トントントン。
「サチ様、ご到着です!」
「入りなさい!」
扉を開けてくれた。
「サチ様、どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
飛んで入ると豪華な室内だ。昨日からだけど、教会豪華すぎないだろうか。
「サチ様、ようこそいらっしゃいました」
「お!おおおお!つ、翼で飛んでおる!」
驚いてるのが領主様かな?
「はじめまして、さち・すめりゃぎでしゅ」
「こ、これは挨拶、痛み入ります。この地の領主、シュゼックス・モルートと申します。使徒様」
「さちでいいでしゅ」
「恐縮にございます。サチ様」
「サチ様、ささ、こちらへお座りください」
大司教様の隣の席に座る。ソファだ。ふあんとしている。面会室の机がサチにはちょうどよかった。
「それで、領主様の要件はサチ様との面会でよろしかったでしょうか?」
「ああ、そうだ。まさか、こんなに小さいとは思いもよらず。可愛いですな」
「そうでしょうそうでしょう。サチ様は可愛いくも神々しいのです!」
「それで創造神様の使徒とか。何か証明する物はございますかな?」
「領主様は疑っておいでですか?」
「疑っているのではない。歴史的な事だ。それを証明せねばならぬのだ」
「教会の物なら皆、サチ様が創造神様の使徒なのだと知っております。お聞きになられては?」
「意地悪を言うで無い。サチ様、ステータスをお見せいただけますか?」
「はい、わかりましゅた」
サチは領主の隣の椅子まで飛んでいき座ってステータスを開いた。
「おお!これは!誠に!創造神様の使徒様!天使様!だれぞ、写しが必要だ紙を待て!」
「領主様、サチ様の事は極秘ですぞ!ステータスの写しなど、もってのほかです!」
「おお、すまん。興奮してしまった。だが、王国の臣下としては国王にご報告せねばならん!どうかこのとおりだ!」
領主様が大司教様に頭を下げた。緊張した空気が漂っている。誰彼と私のステータスを知られたく無いんだけどな。利用されそうで嫌だ。
「サチ様、どうなさいますか?」
「しょうじょうしんしゃまのしとだ、とはつたえてもかみゃいましぇんが、しゅてーたしゅをしられるのはいやでしゅ」
「創造神様の使徒だとは伝えていいが、ステータスを教えてはなりません。領主様、わかりましたか?」
「くっ、わかった。神託があった事と使徒様だということは伝えさせていただく」
「それでいいでしょう。サチ様もそれで良いですか?」
「はい」
「それでは、顔つなぎは終わったのです!もっと明るい話題にいたしましょう。領主様の後継ぎ様はお嫁様を迎えるとか。めでたいですなぁ。式はどちらで行われるのですか?」
「式はこちらで行いたいと思います。初夏の時期になりましょう。お!それでですな、今、思いついたのですが、サチ様に結婚の儀式をお願いできませんか?」
「う〜ん、サチ様いかがでしょう?」
「わたち、ぎしきしやない」
「儀式は難しくありませんが、この地の次代の当主の結婚式。私もサポートさせていただきますしどうでしょう?」
「サチ様!必ずや素晴らしい結婚の儀式となりましょう。手助けしていただけませんか?」
なんか、大司教様がサポートするとか言って乗り気みたいだし、領主様も力強くお願いしてる。儀式した方がいいかな?
「わかりましゅた。おうけしましゅ」
「おお!これは嬉しいですぞ!使徒様に儀式していただけるなんて!我が家の伝説となりましょう!」
「誠に!サチ様の儀式で失敗は許されません。心してかからねば」
おじさん2人で盛り上がっている。いや、2人とも見目はいいんだけどね。花が無いよね。
結婚かぁ。ケーキ食べたいな。今食べちゃおうか?フルーツケーキがいい。お茶はダージリンかな?ミルクと砂糖を用意しよう。
〈いでよ!お茶セット!〉
「お!おお!なんか机の上に出てきましたぞ!これは何ですかな?」
「けーきとこうちゃでしゅ。こうやってにょみましゅ」
砂糖を入れてまぜまぜミルクを入れてまぜまぜ。ごくん。あー、おいしい。フルーツケーキも食べよう。
「なんか、とても可愛らしいですな。サチ様は美味しそうに召し上がられていらっしゃる。私共もいただいても?」
「どーじょ、めしあがりぇ」
「お茶にこの粉とミルクを入れるのでしたな。ごくっ、おお、これは新しい味だ!それではこちらのけーきとやらを、もぐ、んん!美味しい!これはいい物ですな!」
「本当に。サチ様は天才ですな。おいしい。もぐもぐ」
ケーキとお茶は好評だ。明日の午前中に先生とラズと3人で食べよう。フォークもぶっ刺すだけだし食べやすい。んー!この味だよ!この味!
サチは領主も大司教もそっちのけで、ケーキを堪能した。
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