ポポ街とオリザ村 パズーの卵
卵のアテはある。以前にプッカを食べた街だ。きっと近くの村から卵や鶏肉を取り寄せているはず。街の名前は忘れた。聞いてないかも。
「ぷっかをたべた、まちにいきましゅ」
「ああ、あの街ですね。卵ですか?」
「そうでしゅ」
みんなを集めて瞬間移動でプッカを食べた街まで行く。もうみんなほとんど驚かない。
街人がいきなり出て来た私達に驚いて、関わりにならないように素早く去って行った。不審者じゃないよ。
ザイデンは街をキョロキョロと見て居場所を確かめているようだ。
「ここはポポ街ですね。隣のオリザ村から鳥と卵を仕入れていたはずですよ」
「しょりぇじゃあ、おりじゃむりゃまでいきましょう」
ラズがフォローしてくれる。
「オリザ村まで行きましょうね」
「はい!」
みんなでポポ街から出て、行き先をザイデンに聞いて車に乗る。私がチャイルドシートに座るのをザイデンは興味深く見ていた。
ライデンの運転でオリザ村を探す。中央都市に行くために村は結構飛ばして来たからね。
村を発見した。凄くポポ街に近い村だ。
車から降りて、車を収納にしまい徒歩で村の中に入る。私はラズの抱っこ。入り口で警戒していた村人に止められた。
「この村に何の用だい?」
「卵の取引きに来た」
「身分証は?」
ザイデンさんが身分証を出した。商業ギルド証だ。
「はいよ、入っていいよ。神官様も一緒とは珍しいね」
「今お世話になっているんですよ」
ザイデンが養鳥をしている場所を聞いて、サチ達一行はそこに向かう。
村の主産業だから、かなりわかりやすい場所にあった。
鳥はガチョウに似た鳥で、養鳥場の人に聞くとパズーと言う鳥の羽を切って飛べなくして、柵で囲んでいる土地に広範囲で放し飼いをしているらしい。鳥舎も大きい建物があった。かなり大規模だ。
職員の人に卵を見せてもらうと、鶏の卵より一回りぐらい大きかった。2日に1度ほど生むそうで、放っておくと30日ぐらいで雛が生まれるらしい親鳥が温めないといけないらしいけどね。卵の取り忘れなどもあって、いつのまにか増えているそうだ。生育は楽そうだね。
ザイデンが卵の取引をしたいと交渉すると、事務所のような場所に案内された。そこで、責任者だと言うおじさんに会って、商談に使うのだろう椅子にザイデンとサチを抱っこしたラズが座った。向かいには責任者のおじさんだ。
「鳥卵舎の責任者のダルです。卵の取引をしたいと伺いましたが、1日どれほどの卵を必要とされますか?」
ザイデンが答える。
「私はリー商会の代表のザイデン・リーと申します。今のところは時間停止のマジックバッグを持っているので、いくつでも取引が出来ます。ダルさんの卵は1日いくつ、卵1個をいくらで売っていただけますか?」
「それは素晴らしい!時間停止のマジックバッグをお持ちなのですか!生物を扱う私達には夢のようなバッグですな!
卵は今から孵化用に卵を回せば、30日後に雛が孵化して卵を産めるようになるまで2ヶ月はかかりますので、それからならご希望の卵を提供出来るはずです。卵1個につき5リンです。いくつご入り用ですか?」
「あるだけ引き取ります。卵をどんどん増やしていただけますか?」
「それはありがたい!村人の雇用にも繋がります!う〜ん、今から余った卵を孵化に回して3ヶ月後、ふ〜む。約100個ほど増やせますな。もっと取引したいなら待っていただく必要が出て来ますが?」
「出来るだけ増やしてください。リー商会はいくらでも買取ります」
「そうですか!いやー嬉しい!では今日からどんどん余った卵を孵化させていきますね。餌の育成もありますので早くはできませんが、契約書をつくりましょう」
ダルさんは紙を持って来て必要事項を書いていく。今日の日付けに卵の買い取り、3ヶ月後に卵1日100個と記載していく。それから責任者のダルさんの名前にザイデンがサインする所も記載する。
ダルさんは責任者だけあって契約に慣れている。卵1個5リン・50円は安いのだろうか?大量生産していた日本と比べてはいけないのかもしれない。卵も大きいし。日本の大量生産と違ってパズーを平飼いだからね。平飼い卵は日本でも値段が高いのだ。
でも、3ヶ月後かぁ。柔らかパンが遠のいたよ。いや、それまではサチが提供する卵で作ってもらったらいいかもしれない。
ザイデンさんが契約書を確かめてからサインをしている。終わったらダルさんが大口の取引だとザイデンさんと握手していた。
みんなで事務所から出て、ダルさんに卵を買いたいと申し出る。私が言ったのに不思議そうにしながらも、快く引き受けてくれた。
卵の保管場所に行くと、卵が藁の上に並べられていた。
私はラズの腕から飛んで卵の近くに行き、卵を見極める。みんな新鮮で良い卵ばかりだ。
私は30個卵が乗せれるパズーの卵用の卵トレーを作り、能力で卵を浮かせてトレーに乗せていく。
唖然とした顔でそれを見つめるダルさん。
私が150リン渡すと、我に帰ってたダルさんが叫んだ。
「そ!その!入れ物を売ってください!」
「たまごとりぇーでしゅか?」
「卵とりぇーと言うのですか!?」
「と!れ!ーでしゅ」
「卵とれーですか?」
「そうでしゅ」
「卵とれーを100、いや、1000個売ってください!」
ダルさん大興奮だ。確かに卵トレーに乗せれば卵が割れにくいし、集めるのも楽になると思う。1000個は大規模養鳥場じゃ必要かもしれない。
「いいでしゅよ。いちまい銅貨1まいでしゅ」
「安い!では、2000枚ありますか!?」
「ありましゅ」
作ればいいだけだからね。
「2000枚、売ってください!お金を取ってきます!」
ダルさんは走って事務所に戻って行った。
私は卵トレーを2000枚、創造する。おお!沢山だ!
ダルさんが従業員を連れて来た。卵トレーの枚数を数えている。2000枚だぞ。多いぞ。
私はその間に買った卵を収納にしまった。これを元にして卵を創造するのだ。
数え終わるのを待っていたら、全部あったようで大銀貨2枚渡してくれた。翼を生やした幼児を侮らない良い人だ。
家を買いたいから村長の場所を聞くと、ダルさんは村長の弟らしい。まあ、これだけ大規模にしていたら村長の血族が運営するのも納得だ。
ダルさんが案内してくれるようだ。ありがたい。
村長の家につくと、ずかずかと入って行くダルさん。田舎の家の風習みたい。
「兄ー!ダルだ!客を連れて来たぞー!」
「待っとれー!」
兄弟仲は良いようだ。遠慮がない。ダルさんは村長を呼んだら、こっちに礼をして帰っていった。経営者だ。
村長が来た。やっぱりおじさんだ。ダルさんに似てる。
「お客人、ご用は何かな?」
「いえをかいたいでしゅ」
私が言うと驚いたようだが、優しく言ってくれた。
「ごめんなぁ。余っている家は無いんだよ。お嬢ちゃん」
「じゃあ、とちをかいましゅ」
「土地かぁ。案内するからね」
村長が1番前に出て村の中を進んで行く。結構歩いて、農家の1番端まで来た。
「ここの土地なら自由にしてくれていいですよ」
ザイデンさんが問いかける。
「値段はいくらだろうか?」
「そうさな、どれくらいの土地が必要ですか?」
「1農家ぐらいの土地が欲しい」
「なれば、開墾しなければいけませんな。木こりと人を動員して、ふ〜む。金貨1枚ですな。家はどうしますか?大工に頼みますか?」
「わたちがたてましゅ」
「おおー、お嬢ちゃんが建てるのか。いい子だなー。して、どうなさいます?」
村長は私の言葉を信用してくれずに、ザイデンさんに問いかける。酷い。いや、幼児が言っても信用してくれないか。
「家は自分たちで建てる。開墾費用は後でいいか?」
「いいですよ。働いた者の給金さえ払ってくれれば」
そう言うことになった。
村長にまた後日と挨拶して別れた。
村長が見えなくなったら、飛んで空いている土地を見る。家1軒なら建てれそうだ。
他の村人の家とあまり外観は変えずに、家の中はすぐにでも暮らせるようにイメージする。
いでよ!村人の家!ちょっとだけ便利にね。
家の中に入る。新築の家だ。いい香り。ザイデンが家の中をくまなく調べる。
ザイデンは感心した。1家族が引っ越してきても、すぐに暮らせる設備だ。サチに払うお金を計算して冷や汗をかく。ザイデンの個人資産は無いから、商会の予算で買うしかない。ザイデン、心にメモる。
家に鍵をかけてから、みんなで瞬間移動してリー家の家の外のサチが建てた平家に帰る。
サチは何も無い壁に、オリザ村の家に繋がる扉を作る。ザイデンがまた飛び込んで行った。なんか、感動している。
サチは想像もしていないが、ザイデンのリー商会が仕入れをする時にショートカットしてオリザ村から仕入れを始める事が出来るようになったのだ。これはザイデンにとって凄い事である。
日数の短縮。それが仕入れに影響を及ぼす。リー家は、また一つ高みに登った。
「もうゆうがたでしゅかりゃ、またあしたにしましゅ」
サチから今日の業務終了のお知らせだ。みんなホッとする。いろんな所に飛ばされたもので。
「じゃいでんしゃん、またあしたにしましゅ。むりゃをかんがえていてくだしゃい」
「村ですね。どんな村がよろしいですか?」
「まずしいむりゃがいいとおもいましゅ。しんしぇいきょうこくで」
「分かりました。村1つでいいですか?」
「ふたつかんがえて、くだしゃい」
ザイデンはぶつぶつと取引きしやすそうな村をピックアップした。
また、あしたね!
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