ハムチャはおいしい!
お昼になるとザイデンが帰って来た。昼食を一緒に食べる。料理はチャーハンのような食べ物だった。美味しかったけどね。麦飯でも米でも無くハムチャと言う穀物が使われているらしかった。もち米とブレンドしたような味で気に入っている。以前に食べたプッカの中身もハムチャだったみたいだ。
食後にリビングのソファでザイデンとサチとラズが向かい合って座る。後ろにエレナとカイザーが立っている。ライデンは休憩だ。
「それで使徒様、ご用件は何ですか?」
「こりぇをたべてくだしゃい」
サチは柔らかパンのレシピ通りのパンをザイデンに差し出した。ザイデンが身を乗り出して受け取り検分する。
そして食べた。カチンとザイデンの歯が打ち鳴らす音が聞こえた。いつもの硬いパンだと思って食べたら柔らかかったのだ。
「痛!これは!むぐむぐ、柔らかい。ほのかに甘い味もする。カウの乳のパンのようだ。いや、それよりも、もっちりと柔らかい」
カウの乳のパンを食べた事があるらしい。まあ、同じ神聖教国にあるしね。
「こりぇをつくってほしいでしゅ。でも、じゃいりょうがたりましぇん。だかりゃ、むりゃかりゃとりよしぇましゅ」
ラズがすかさず翻訳する。
「このパンを作ってほしいそうです。でも材料が足らないので村から取り寄せるそうです」
ザイデンは新しい商売の話に身を乗り出した。
「ほう、材料はどれが必要なのですか?」
サチはサラサラと能力でレシピを書いてザイデンに渡す。牛乳はカウの乳にした。
「う〜む、無理ですな。材料を手に入れる村が遠すぎます。それと、砂糖とは何ですか?イースト・天然酵母と言う物も知りません。使徒様はどうお考えですか?」
イーストや天然酵母は知らないと思っていたが、砂糖も知らないとは!この世界には別の甘味料があるのかもしれない。
「こにょやしきであいている、とちはありましゅか?」
「まぁ、馬車が沢山いらなくなったので、土地はありますが」
「わたちがたてもにょをたてましゅ。しょにょにゃかに、むりゃにつにゃがりゅ、とびりゃをつくりましゅ。しょこかりゃしいりぇましゅ。いーしゅとと、てんにぇんこうぼと、しゃとうは、じゃいでんしゃんに、むりゃをしょうかいしてもりゃって、しょこでつくりましゅ」
「ラズ殿、解説をお願いします」
ザイデン、おてあげである。
「はい、サチ様がこの屋敷の敷地に建物を建てます。その中に村に繋がる扉を作ります。そこから仕入れをするそうです。イースト、天然酵母、砂糖はザイデンさんに村を紹介してもらって、そこで作るそうです」
「ちょっと待ってください!村に繋がる扉など作ることが出来るのですか!?」
「サチ様のお力なら可能です」
「そうなんですか!さすが、使徒様!」
ザイデンは頭で計算していた。カウの乳をこの街で売るだけでも十分に儲けが期待出来るし、イーストと天然酵母と砂糖がよく分からないが、独占販売も出来るかもしれない。使徒様の願いはさっきの柔らかいパンを作る事みたいだが、知り合いのパン屋に任せればいい。それを使徒様が主導して行ってくれるなら損は無い。むしろ、各村と繋がる扉が魅力的だ。紹介する村も当てがある。
「いいでしょう!屋敷の敷地を空けましょう。村の紹介ですが、私が現地で交渉しなければいけません。それはどうしますか?」
「わたちたちといっしょに、いきましょう」
「そうですか!旅の準備をしなければいけませんな!出発はいつにしますか?」
「いまかりゃいきましょう」
「今から!?」
ザイデンぶったまげである。旅とはいろいろ準備をしなければいけないのだ。
「サチ様、ザイデンさんの準備がございますよ」
ラズが膝を揺する。膝の上のサチはカクカクした。
「しゅんかんいどうで、もどってこりぇましゅ」
「あ!そうですね!ザイデンさん心配ありません。今から行きましょう。サチ様は瞬間移動が出来ます」
「瞬間移動!?」
サラリと伝説の魔法を言われてしまった。商人の夢である。それを体験出来るとは!
「行きましょう!今から!」
ザイデン、ちょっと頭に血が登って来た。興奮している。だって瞬間移動だもん。
さりげなくライデンが戻ってきた。サチはおうちを収納にしまう。
サチが飛び上がるとラズが立った。ザイデンは興奮して立ち上がっているから問題ない。先ずはカウッド町に向かおう。
サチはみんなと瞬間移動した。カウの近くに。
ザイデンはいきなり家の中から外に景色が変わったので驚いた。実はサチ以外みんな驚いていた。
「臭い!これはカウの匂い!」
「サチ様いきなり移動は辛いぜ」
「サチ様、心構えをさせてください」
「あー、驚いたわ」
「……」
ライデン無言である。サチはてへっと笑った。ニコッと笑っているように見えたかもしれない。だって、ラズがほっぺたをむにむにしてくるから。
「まじゅはいえをこうにゅうしましゅ!」
これはみんなに通じた。
ここは町だ。小さくても商業ギルドがあるので、そこで家は買える。
「それじゃあ商業ギルドに行きましょう」
ザイデンはここがカウッド町だと分かったみたいだ。案内してくれるザイデンについて行く。飛んでいるサチはラズにキャッチされた。抱っこされていく。
「確か、ここのはず」
ザイデンの記憶は正しかったようだ。小さいが商業ギルドと看板に書かれている。
扉を開けて中に入る。受付は1つだった。
「いらっしゃい!この辺の人じゃ無いね?」
受付のおばちゃんが言った。ザイデンが答える。
「ああ、違うが家を購入したい」
「どの辺だい?」
「使徒様?」
ザイデンが困ったように見つめてきた。
「かうにょちちを、こうにゅうしゅりゅにょに、ちかいばしょがいいでしゅ」
「カウの乳を購入する場所から近い所がいいらしいですよ」
「カウの牧場かい。あの辺りは人気が無いから空き家があるよ。予算はいくらだい?」
「いくりゃでかえましゅか?」
「そうだね。金貨3枚ってところかね」
「いちばんちかいばしょをかいましゅ」
「はい、いいよ。ちょっと待ってね」
おばちゃんは資料を取りに行った。ザイデンがサチに話しかける。
「すみません使徒様。お金を持って来ていないので、立て替えてもらえますか?」
「いりゃないでしゅ。おかにぇ、だしましゅ」
「いいえ!うちの商売で使うのです!お金は絶対に払います!」
サチは商売人の気迫にのまれた。
「わかりましゅた。かえったりゃしぇいきゅうしましゅ」
「はい!ありがとうございます!」
ザイデンはカウの仕入れ先を手に入れれそうで笑顔だ。なにしろ、サチの思惑以外で儲けようとしているので。
おばちゃんが帰って来た。
「1番近い場所だとカウ牧場の店の前の家だね。築25年だ。金貨2枚と大銀貨3枚だね」
サチはお金をラズに渡して払ってもらう。抱っこされているので。
おばちゃんはお金を貰うと名前を聞いて来たので、ザイデンが名前を言っていた。家主の決定みたいだ。
おばちゃんから家の鍵と売買契約書を貰って、商業ギルドから出る。家を一軒買ったのにあっさりしている。
「サチ様、次は何処に行きますか?」
「かったいえにいきましゅ」
家を見ないと何処に扉を繋げたらいいかわからない。みんなで元の場所に戻って行く。
本当にカウ牧場の近くだった。ちょっとボロい家の鍵を開けて中に入ると、埃っぽかったが、管理はされていたのかそこまで酷くなかった。
みんなで2階建の家を見る。悪くない立地に建物だ。
サチは家の鍵を閉めてからリー家の馬車置き場に全員で瞬間移動した。
またまた驚いた面々だが、ちょっと諦めてもいた。サチのいきなり移動は治らないと。
「じゃいでんしゃん、どこにたてもにょをつくったりゃ、いいでしゅか?」
「そうですね、ちょっと待ってください」
ザイデンは屋敷の左前の位置に行った。そこから全体を見渡す。うんうんと頷いて帰って来た。
「あの辺りなら作ってもいいですよ」
今しがた見ていた場所を示した。
サチはイメージを膨らます。屋敷にあっても違和感が無いように屋敷と同じカラーの平家をイメージする。明かり取りを大人が手を伸ばして届く所につけて。
〈いでよ!平家!〉
扉に鍵付きの平家が出て来た。大きさは10畳くらい。扉を開けて中に入る。鍵はザイデンが確保していた。
サチは壁を確かめて、さっきの家に繋がるようにイメージすると扉が出来た。開けるとカウッドの家に繋がった。
「できましゅた」
「本当ですか!?」
ザイデンが来て扉の中に入って行く。歓喜していた。これでいつでもカウの乳が買える。
「じゃいでんしゃん、じゃいでんしゃん」
「はい!何ですか?」
ザイデンはハキハキと答える。次は卵の入手だ。
「たまごにょむりゃを、さがしにいきましゅよ」
目星はついている。
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