サチ 大金を儲ける
美味しい昼食を食べ終わったら、次は車の鍵を渡して(もちろん不壊・状態保存)マジックバッグの話し合いだ。
エレナとカイザーは女性達を車に乗せに行った。お疲れ様です。
リビングでソファに座って、マジックバッグの鑑定書を見せる。
リベンダーとザイデンはどの大きさが必要か話し合っている。
「1番大きいのは、ギガンデスを購入すると決めたので必要でしょう。あとは商売に使う物と個人で使う物があれば望ましいですが」
「予算もあるのだ。商会の金に手を付けてはならんぞ」
「分かっています。どれにしましょうか。どれも買わなければ損すると私の勘が言っています」
「わしもだ。同じだな。だが、本当に予算があるのが悩ましい!」
サチとラズはその悩ましい話を聞かされていた。こういうのはなあなあにしてはいけないのだ。ちょっとサービスはするけど。
サチはいつのまにかラズの膝の上で寝てしまった。
「サチ様、サチ様、起きてください。夜に寝れなくなりますよ」
「うぅ」
「サチ様、起きましたか?サチ様?」
「む〜ん、む〜ん」
「イヤイヤじゃないですよ。起きるんです。また、まぶたを開きましょうか?」
ラズがえげつない事を言っている。寝起きの心臓にも頭にも悪そうだ。
「むぅ、むぅ」
「ほら、サチ様、起きるんですよ。サチ様」
サチはぷらんと抱き上げられた。ラズにしっかりと握られているが、脇がすり抜けそうだ。
「ラズ殿、そんな適当にして使徒様は大丈夫ですか?」
「大丈夫です。サチ様はちょっと強くしないと起きないのです。このままだと夜まで寝ますよ」
「それは困りますが……」
「ふゆ、ふゆ」
「また、ふゆふゆ言って。今は夏ですよ。サチ様!」
ラズがサチをぶんぶんと振り回す。サチの頭はだんだんと起きて来た。
「むぅ、りゃず」
「はい、ラズですよ。起きましたね!サチ様!」
抱っこされたから、ラズにぺったりと張り付く。涎は垂れてないようだ。
「ザイデンさんがお会計しますよ。サチ様、何か渡したい物があったのではないですか?」
「しーでぃー」
「そうでしょう?ほら、サチ様。ザイデンさん達の方に向けますよ」
ラズからベリっと剥がされて反対を向かされた。サチの目つきは悪い。ストローマグで無意識に麦茶を飲む。自由だ。
起きた。まだ意識が怪しいが。
「それでは使徒様、マジックバッグのサイズを言わせていただきます。1番大きい宮殿が入ると言われていたマジックバッグが1つ。1番小さいマジックバッグを5つお願いします」
サチは赤のスポーツカーとエル◯ランドの鑑定書を出して渡すポーズをする。恐る恐るザイデンが受け取った。サチはボーッとしている。これは計算せよとのことなのか?
まあ、いいやと、ザイデンは自分が購入する物を計算し始めた。ちょっと自分で計算していても震えがくる金額だ。
合計金額が出たら父と部屋の金庫へお金を取りに行く。父の出資は共同購入という形にしてもらって借金はないが、2人で車を使う事になっている。もちろん商売が優先だが。
ラズはその間にサチのほっぺを伸ばしたり、手をバンザイさせたり、サチをぶるぶるさせて何とか起こそうとした。まだ半分寝ているのが分かったからである。見ていたライデンが吹き出すかと思った。
だんだんラズのサチへの扱いがぞんざいになっている気がする。
ラズの頑張りがあって、サチは目をぱっちりさせた。いつもの可愛いサチである。
ご注文のマジックバッグを作った。
リベンダーとザイデンは使用人にお金を持たせて帰ってきた。金額は部屋で数えてから持ってきてある。ザイデンの金庫が寂しくなった。
ザイデンが内約を話し出す。
「スポーツカーGR◯6がミスリル貨385枚。ファミリーカーエル◯ランドがミスリル貨660枚。マジックバッグの家2軒分がミスリル貨33枚。ミスリル貨135枚と大金貨3枚。それと竜1匹の代金ミスリル貨40枚。全部でミスリル貨1253枚と大金貨3枚です。お確かめください」
サチは飛んで机の上のお金をしまった。金額は丁度ある。お金に細かい大商会である。だからここまで大きくなったとも言えるが。
サチは机の上に商業ギルドで出した音楽のCDを出した。リベンダーとザイデンはよくわからない顔をしている。
「しーでぃーはくりゅまで、おんがくがきけましゅ。ぜひきいてみてくだしゃい。あげましゅ」
ザイデンはギョッとした。これは昨日ギルドで高値がついた物じゃなかっただろうか。いや、そうだ。
「使徒様!こんな高価な物をーー」
サチが手を出して止めた。その手には紙が握られている。机の上に広げた。ペンも持っている。
「おうちをつくりましゅ!じゃいでんしゃんにょ、りしょうにょおうちでしゅ!」
サチ、力が入りすぎてラズにしか理解されていない。格好良く決めたつもりなのに。ラズがフォローする。
「おうちを作ります。ザイデンさんの理想のおうちだそうです」
「それは!値段が付けられないと!」
また、サチが手を出して止めた。ザイデンの顔から近すぎである。思わず声も止まっちゃう。
「しゃーびしゅでしゅ!」
また、サチが決めポーズをした!今のは本当にラズしか理解していない。
「サービスだそうですよ」
ラズのフォローがありがたい!ザイデンは胸が熱くなった。一度は諦めたおうちをサービスで作ってくれると言う。しかも、ザイデンの希望どおりのおうちが!
ザイデン、前のめりになる。サチと顔が近づいた。近い近い。
「その言葉、本気にしますよ?」
「いいでしゅよ」
2人はニヤリと笑った。サチはニッコリだったかもしれない。悪い顔が出来ないもので。
ザイデンがこれは出来るか?これも出来るか?とサチに確認しながら図面を書く。サチは「うんうん」と返事をする。サチに出来ない事は無い!
こうして、ザイデンの理想のおうちが出来上がった。名前は変えそうだが。
サチは結界付きの犬小屋を人の入れる大きさにして扉を付けて作る。犬小屋と馬鹿にしてはいけない。昨今の犬小屋は進化しているのである。気になったらググってみて。
それからザイデンと作った理想のおうちをイメージする。自分のじゃないから細かく。サチの出来る精一杯である。
いでよ!ザイデンの理想のおうち!
部屋の中にいきなり現れた建物にザイデンが瞳を輝かせた。このおうちはサチのおうちじゃないから、扉を鍵付きにした。結界は5mまで有効である。サチ達みたいに結界ごと持ち上げられたら終わりだが。そんな事は滅多に無いと信じてる。あれは化け物だったのだ。憎きギガンデス。だが、美味しいギガンデス。
ザイデンに鍵を渡した。5つもあれば無くしても困らないだろう。
ザイデンがどきどきと鍵を開けた。ごめん!初めは鍵がかかって無いんだ!
ちょっとスカッたザイデンは扉を開ける。そして中に入った。サチ達と同じ礼拝堂が広がっている。ザイデンは思わず祈った。プライベート礼拝堂である。
そして、サチ達の家にあるお風呂!トイレに洗面所!サチのおうちを観光したのは忘れられない出来事だった。それから洗濯場。サチ仕様なので魔石の供給はいらない。これも値段が付けられない。
次にダイニングキッチン。そしてリビング。それから部屋が20部屋。ザイデンかなり欲張った。
大金、有金をほとんど出して、手に入れたのは値段が付けられないおうち。ザイデン一生物の財産を手に入れた!
後ろについて飛んでいたサチはザイデンを正気に戻して、お風呂の中に入る。ザイデンは鑑定士達が入った時にお風呂に入ってないからよく分からない。とりあえず露天風呂まで連れて来て、土がある場所に石鹸の木を植えた。一瞬で大きくなった木に驚くザイデン!サチの後ろには出来る男ラズが通訳で立っていた。
とりあえず石鹸が無くなったら実をもいで容器に補充すればいいと学んだ。ザイデンの頭には石鹸を売り出すと言う考えもあった。根っからの商人である。
お風呂の使い方がわからないだろうと全員でお風呂に入る事になった。
サチは女湯と男湯に、タオルに岩盤浴の服に備品をたんまりと詰め込んだ。
リビングでくつろいでいた女性達をザイデンは誇らしい気持ちで迎え入れる。ザイデンの理想のおうちだからね!
エレナが女性をご案内。サチも続く。男湯はラズがご案内。サチに振られたラズである。
女性達がエレナに言われるまま服を脱いで、ゴシゴシタオルだけ持って風呂場に入る。お湯でたっぷりの各種浴槽を見て呆然とする女性達にエレナが私を洗って見せる。ふんふんと頷く女性達。サチが洗い終わったら、自分の身体を洗いに行った。
サチはお湯に浮きながら、お昼間からお風呂とは贅沢だなと思った。
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