人を食べたもう1匹のギガンデスが売れた!
サチ達がザイデンに呼ばれて玄関前のロータリーに出ると、ザイデンに「車を出してください」と言われて5台出す。
見学に来ていた、仕事に行っているサンティ以外のリー家族が歓声をあげた。近くに行って観察している。みんな好奇心旺盛なようだ。
「使徒様、父さんと私を乗せて運転してもらいたいのですが、お願い出来ますか?」
ザイデンがサチに頼み込む。サチはカイザーとエレナに運転手をするようにお願いした。
リー家はカッコいい赤の4人乗りスポーツカーに群がっている。車全部に状態保存もかけておこう。
男性陣がお財布を握っているのをリー家の女性は知っているのか、空いている座席に座ろうと女性たちの戦いが繰り広げられていた。「また乗ればよかろう!」とリベンダーに一喝されていたが。
エレナとカイザー、頑張れ。
ー赤のスポーツカーにてー
「お父様、このくるまの乗り心地は最高でしょう?」
「ふむ、馬車と違って狭いのが難点だが、乗り心地は比べものにならぬな」
「これでミスリル貨400枚ほどです」
「う〜む、高いなぁ。だが、買わぬと言う選択は愚かだろうな」
「分かってくれますか?」
「ふむ」
「次は使徒様達もお乗りになっていたくるまに乗りましょう。使徒様が選ばれるくらいだから乗り心地もいいですよ」
リー家の男性達が熱い議論を交わしている中で、飽きたサチ達はパラソルテーブルを出してお茶会をしていた。
嗅覚が鋭かったムエルナがご満悦にソフトクリームを食べている。もちろんサチ達も食べているが。
暑い外で食べるソフトクリームは溶けやすいが美味しい。これぞ夏!と言った具合だ。
「使徒様!おいしいです!他に冷たい食べ物はありませんの?」
ちゃっかり催促されている。パフェは昨日食べたしな。そうだ!◯ODIVAのショコ◯キサーを出そう!美味しかったし!見た目も豪華!
サチが出すとムエルナから歓声が上がった。おやつドリンクもいいだろう。濃厚なチョコレートがおいしいんだよな。もちろんラズとライデンも道連れだ。美味しいものを食べやがれ!
最近サチと甘いものを食べ過ぎて太る心配があるぞ!気をつけろ!
「使徒様!赤いくるまと使徒様と同じくるまを買います!」
「GR◯6とエル◯ランドでしゅね」
「え!すみません!もう一度くるまの名前を教えていただけますか?」
「あかいすぽーつかー、GR◯6でしゅ。くりょいふぁみりーかーが、エル◯ランドでしゅ」
サチは間違えてはいけないと、いつもより腹に力を込めた。ちょっと怒ってる風に聞こえたかもしれない。
「すぽーつかーが、GR◯6で、ふぁみりーかーがエル◯ランドですね!カッコいい!」
大丈夫だったようだ。喜んでいる。
2つ以外の車は収納にしまう。
「使徒様!運転方法を私と父に教えて頂きたいのですが、護衛2人をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「いいでしゅよ」
それを聞いたザイデンはお礼を言って喜んで車に走って行った。ライト、ハザード、バック、ワイパーとか覚える事いろいろあるからね。車庫入れとかも覚えないといけないだろうし。あ!CDをプレゼントしようと思ったんだった。後からでいいや。
ママさん方もこっちに来た。みんなでお茶会だ!
「使徒様、こちらにいらして。はい、あーんです」
何してるかって?ママさん達に遊ばれ、膝抱っこされています。机の上に出したクッキーも食べさせてくれます。女の人、柔らかい。
「使徒様の出してくれる物はみんな美味しいわ!使徒様っていろいろな事を知っているのですね」
「サチ様は前世の記憶を持たれているのですよ。創造神様にも直接お会いした事がお有りのようです」
ここぞとばかりに私の自慢をするラズ。それに食いつくママさん達。
「え!そうですの!?使徒様は以前何をされていたのですか?」
「こことは違う世界でちきゅうと言うそうですよ。この世界はアラタカラと言う世界だとも教えてくれました」
「まあ!この世界の名前なんてあったのですね!あらたから、あらたから、覚えましたわ!聖書が新しくなるでしょうね!」
「それはなるでしょう!サチ様はお小さいですが、前世は自分の子供を育てて亡くなったそうです。貴女方とは同世代くらいになるんじゃないでしょうか?」
「え!使徒様って何歳ですの?」
「いっしゃいでしゅ」
「サチ様、前世ですよ」
「ごじゅうにしゃいでしゅ」
「まあ!本当に同世代だなんて!使徒様は子供と離れても頑張っていらっしゃるのね」
「あにょこはひとりでもだいじょうぶでしゅ」
「まぁ、本当にお母様なのですね。子供を信頼されて」
頭をいい子いい子されてしまった。お母さん扱いするの?子供扱いするの?混乱するからどっちかにしてほしい。
それからも、ラズとママさん方とムエルナちゃんが談笑していた。ラズも大人になったねぇ。(サチの話題だが)
鐘の音がした。お昼の鐘だ。
「まぁ!もうそんな時間になったのね!なんだかあまりお腹が空いていないわ」
「シェフが料理を作ってくれているのですよ。そんな事を言ってはいけません」
「はぁい」
「さぁ、昼食にしましょう」
みんな立ち上がる。私はラズに渡された。パラソルテーブルを収納にしまってから屋敷に入った。リー家男性、エレナとカイザーも入って来た。
食堂で待っているといい匂いがしてきた。煮込み料理が昼食だ。
お祈りしていただくと、食べた事のある肉・ギガンデスの肉だ。やっぱり旨みが凄いある。
「なんだ、この肉は!美味しい!シェフを呼んでくれ!」
リベンダーがメイドに向かって叫んだ。
みんな食べていると、シェフが慌ててやって来た。
「お呼びでしょうか?大旦那様」
「呼んだとも。この肉は何の肉だ?」
「使徒様にいただいたギガンデス、竜の肉でございます」
サチの方をみんながバッと見た。恥ずかしいじゃないか。
「使徒様がこの肉を。ありがとうございます!」
「使徒様、ありがとうねぇ」
「美味しいわ」
「お腹いっぱいでも食べれるよ!」
「使徒様、まだ、この肉はお持ちですか?」
「もってましゅよ」
「買わせていただいてもよろしいですか?」
「まりゅまりゅ、いっぴきもありましゅけど、にくだけでいいでしゅか?」
「は?え?」
ザイデンが買いたいと伝えたが、サチの言葉は通じなかった。ラズが代わりに言う。
「サチ様はギガンデスを複数体倒されました。中央都市で解体されて肉を半分引き取りましたが、素材と残り半分の肉はギルドに売りました。サチ様はギガンデスをまるまる1匹お持ちです。肉だけでいいかとお尋ねになっています」
リー家のみんなが驚いた顔をした。竜まるまる1匹?それはおとぎ話の中のことではないだろうか?いや、使徒様がお持ちだ。
リベンダーとザイデンの商人としての感が1匹買え!と伝えてくる。
「使徒様!1匹まるまる売ってください!」
「いいにょとわりゅいにょがありましゅ。どちりゃがいいでしゅか?」
これはなんとなく分かったぞ!いい個体と悪い個体があるんだな!
「悪いのは何が悪いのですか?」
「ひとをたべましゅた。くびはひときりでしゅが。やしゅくしましゅよ」
ザイデンは考えるが、もともと魔物など何を食べているかわかったもんじゃない。その肉を日常的に食べているのだから問題ないだろう。首は一切りで人を食べただけで安くなるなら儲け物だ。
「では、それを買わせてください!幾らになりますか?」
「みしゅりりゅか40まいで、いいでしゅ。もういっぴきいたのは、みしゅりりゅか55まいでうりぇました」
「そんなに!ありがとうございます!午後から冒険者ギルドに行きますか?」
「ぎがんでしゅは、とてもおおきいでしゅ。まちにょしょとにいかにゃいと、かいたいできましぇん。あしたにょあしゃがいいとおもいましゅ」
「すみません、難関で。使徒様は何とおっしゃったのでしょうか?」
「ギガンデスはとても大きいのです。街の外でないと解体できません。それに解体も1日仕事です。明日の朝に行かれる方がいいと申されております」
「そうですか。ありがとうございます。使徒様、それでは明日の朝、冒険者ギルドに同行願えますか?」
「いいでしゅよ」
サチは了承した。不良在庫が消えるので、清々しい気持ちだ。明日の朝のサチの予定は決まった。
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