エリザベートの運命の相手
お昼、私達は食堂でギガンデスの肉を待っていた。
少し時間がかかったが、料理長はギガンデスの肉の焼きたてステーキを出してくれた。
お祈りしてみんなでいただく。
ギガンデスの肉は噛むと肉汁が溢れて旨みが凄かった。みんな幸せそうに食べている。さすが竜の肉だ。
サチは、ちみちみと食べるが、肉が柔らかくて美味しい。ギガンデスの部位によって味が変わるのだろうか?食べてみたい。
食べる気満々である。
今、冒険者ギルドにギガンデスを買い取ってもらおうとしても今のギルドに金は無いぞ!
教皇様が話しかけてきた。
「サチ様が倒された竜の肉とお聞きしました!とても美味しいですな!貴重な肉を提供してくださりありがとうございます!」
「いいでしゅよ」
サチはご機嫌で答える。そういや、カイザーは食べてないな。またの機会に食べてもらおう。
みんな大きい美味しいステーキを食べて大満足である。
さて、今から中央教会に行くぞ!
出入り口に行くと、神聖騎士と馬車が待っていた。早めに昼食を食べて出かける準備をしていた。
サチが倒した竜の肉を食べて、サチに尊敬の念を抱いた。いつもよりキラキラ度がアップしている。
サチはネックレスを配ってラズと馬車に乗り込み、神聖騎士達を含む範囲を冷却した。
神聖騎士達は同僚に聞いていた。「いきなり空気が冷えたが多分使徒様のお力だ」と。使徒様凄い!リスペクトである。
馬車はゆっくりと出発した。
午後からの街は混んでいる。ラズとゆったりと馬車でおしゃべりしながら中央教会まで行く。人を轢かないようにゆっくり進んで。
中央教会に着いた。裏口から中に入ると枢機卿父子がいた。
「使徒様!お待ちしたおりました!こちら娘のエリザベートです!」
「よりょしく」
「お会いできて光栄です!」
「私達はいつでも出掛けられます!」
「ちょっとまってくだしゃいにぇ」
エリザベートの運命の相手・結婚相手を探せ!
いた!ここ中央都市にいる!oh、ラズの運の悪さが際立つ。運命の相手、遠!
「みつけましゅた。いきましゅよ!」
「おお!良かったな!エリザベート!」
「はい!お父様!」
サチとラズは馬車に戻り、乗り込む。サチ達の馬車の後ろに馬車が止まった。2台で行くのか。
「ここかりゃ、きたにしゅしゅんでくだしゃい!」
「は!」
御者の神聖騎士が返事をした。馬車が動き出す。
馬車が運命の相手から逸れそうになったら、サチが御者の隣まで飛んで行き先を指示した。
1時間半ほど走った所で馬車が入れない道に来てしまった。馬車から降りる。
後ろの馬車から枢機卿父子が降りてくる。
「つきましたか!?」
「まだでしゅ!ばしゃがはいりぇましぇんかりゃ、ありゅいていきましゅ」
「ここは治安が悪い所なので、神聖騎士をお連れください」
「は!我々が護衛いたします!」
「しゅうききょうふしもおにぇがいしましゅ!」
「は!」
サチを先頭に道に入っていく。
外壁が近くなると、江戸時代の長屋のような1階建ての建物に着いた。ここに、エリザベートの運命の人がいる。
「つきましゅた。ここにいましゅ!」
「失礼します。私が確認に行きます」
神聖騎士が扉をノックした。
「誰だい!」
粗野な声が聞こえた。
「ここの息子に用事がある!」
家の中から音と声が聞こえる。
「あんた!何かしたのかい!外に出な!」
扉が開いて少年?が出て来た。髪はボサボサで服もボロだ。その後ろに居た中年の女性は神聖騎士を見て怯え?顔を強張らせていた。
「あんた!用事を済ますまで帰ってくるんじゃないよ!」
勢いよく扉が閉められた。ぼうっと立つ少年が残された。
「少年?これはどうしたことか?」
枢機卿は訝しげに呟いた。サチは少年の胸元が光っているのが不思議でならない。少年を鑑定すると、驚きの事実がわかった!
「しぇいじんしてましゅ!じゅうにゃにゃしゃいでしゅ!にょうりょくをしゃずかっていましぇん!」
「使徒様は何とおっしゃったのだ?」
「成人していて17歳だそうです。成人の儀を受けてないそうです」
「おお、エリザベート、大丈夫かい?」
あまりにも貧相な少年に娘を気遣う。
「大丈夫ですわ。お父様」
エリザベートは歩き出して立っている少年の手を握った。
「このまま、馬車までいきますわ!」
運命の相手とは、こうも惹かれるものか。サチはせめてもと少年を綺麗にした。サラリとした髪から見えた顔は悪くなかった。
みんな馬車まで歩いた。
馬車に着いたらサチは特殊な温泉の湯をコップに入れて少年に渡した。
「にょんでくだしゃい」
少年はどうしたらいいか、見渡した。ラズが言う。
「飲んでくださいと申しております」
少年は特殊な温泉の湯を飲んだ。少年のぼろぼろだった肌が綺麗になり垢が落ちていく。
エリザベートが少年に話しかけた。
「貴方は何故小さいの?」
「……多分、食事が少ないせい」
「1日何回食事をしてますの?」
「1回」
サチは慌てて野菜たっぷりのサンドイッチを作った。少年に差し出す。少年は食べない。
「たべてくだしゃい」
「……いいの?」
「いいんでしゅ」
少年は控えめにサンドイッチを取って食べた。美味しかったのか、貪るようにお皿のサンドイッチを全部食べた。その顔は満足そうである。
胃袋が小さくてあまり食べられないんだ。サンドイッチの量は軽食程度だった。
エリザベートが少年に質問する。
「貴方、兄弟はいまして?」
「いない」
「今の暮らしは好き?」
「嫌だ」
「それは何故?」
「……殴られたり、蹴られるから」
「ぎゃくたいでしゅ」
サチの言葉にみんな固まった。
「大切な人はいる?」
「いない」
「お父様!私、彼を婿養子にしますわ!」
「……覚悟はあるのかい?」
エリザベートは自信満々に告げる。
「今からしますわ!」
「そうか……エリザベートがいいのなら、そうしよう」
エリザベートの運命の人探しは終わった。
ー少年視点ー
何の為に生きているのかわからなかった。
物心ついた時から殴られ蹴られた。いつも身体のどこかが痛くて、いつも空腹だった。
家の中でいくら仕事をしても裕福にならない。両親は愛情をくれなかった。
ここは神聖教国。毎日神様に祈った。どうかこの日常を終わらせてくださいと。
ある日、僕を訪ねてきた人がいた。
母に外に出されて呆然としていると、綺麗な服を着た女の子が僕の手を握ってきた。僕の胸が跳ねた。女の子からはいい匂いがした。
それから僕の暮らしは変わった。
綺麗な服を着せてもらい、髪を切って、風呂と言うものに入り、教会で祈ったら神様から能力を貰った。神聖魔法と言うらしい。
大きくて綺麗な家に住んで、エリザベートと勉強をした。エリザベートと家族は優しくて、みんな大好きだ。
1年も経つと僕は歪な環境で育っていたのだと分かった。
また1年経つと僕はエリザベートよりも背が高くなった。
それからエリザベートのお父さんの勤め先で助祭として仕事をすることになった。僕に務まるのかと思ったが、周囲の人は優しかった。
もう1年経つと僕は常識を知った。
20歳。僕はエリザベートと結婚の儀式をした。
エリザベートは優しくて、手を繋がれると胸が跳ねて、抱きしめたくてたまらなくなる。
大好きなエリザベートと夫婦になる。僕のゴミみたいな名前を大切に呼んでくれる君が大好きだ。
僕達は運命の相手なんだって。僕の運命は君に初めて手を握られた時に変わった。君は僕の全てだ。
かわいい僕のお嫁さん。
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