あっ!忘れてた!
翌日はカイザーが休みだ。朝食を食べて、バルコニーで民衆に手を振って花を降らせたら、教皇様の食堂と一般食堂にギガンデスの肉を差し入れする。今日のお昼ごはんはこの肉を使ってねと。
それから馬車に乗って冒険者ギルドに行く。
3日目で流石に道に慣れて来た。ラズの膝の上だけど。振動がね、身体にくるんですよ。私なんて転がっちゃいそうな。
時間をかけて冒険者ギルドにつく。今日もスムーズな道のりでした。
ギルドに入って空いている受付に特級ギルド証を出す。受付の後ろに準備してあったお金と明細書を持って来てくれる。
「サチ・スメラギ様、こちらが明細書と素材買い取り金額になります。お確かめくださいませ」
おお!スベンの肉は食べれるようだ。エレナとカイザーには私から討伐した肉代を出そう。どんな味かな〜。
「問題が無ければ解体場へ向かってください」
「ありがとうごじゃいましゅた」
肉♪肉〜♪。
解体場に着いたら昨日のおっちゃんがいた。
「おう!使徒様!木札を貰うぜ!肉は昨日と同じ裏だ!ついてきな!」
ちょっと疲れたようなおっちゃんが元気に声をかけてきた。木札を渡したらついてこいと言われたのでギルドの裏にいく。
ちょっと虫が飛んでるのが嫌だ。スライムよ!頑張って仕事してくれ!(排水溝の中)
裏には昨日みたいにドンと台車に肉が山盛りになっていた。全部収納に入れる。
「お〜、さすがだな。使徒様」
おっちゃんに感心された。もう昨日みたいに「また来てな」とは言われなかった。魔物の解体はもうお腹いっぱいなのだろう。
「サチ様!ちょっと遠回りしていきましょ!昨日噂で聞いたのよ!サチ様が作った等身大・創造神様の隣に新しい神像が出来たのですって!私見たいわ!」
「いいでしゅよ」
寄り道することになった。そういや昨日エレナはお出かけで、私が作ったと知らないんだったな。
馬車に乗って、冒険者ギルドから近いから門の反対側に行く。心なしかみんなわくわくしているようだ。足取りが軽い。
すぐに到着した。ラズと私は馬車から降りる。あくまで私の護衛だからエレナ達は勝手に動けないのだ。私を囲んで神像の前まで行く。
エレナが神像を一つ一つ見ていく。ライデンも見ているようだ。ひっそりと神聖騎士達も見ていた。みんな顔が明るい。
エレナが見終わってサチの所へ来る。
「これ作ったのサチ様でしょ?」
私は口笛を吹く。吹けないが。ヒューヒューと息が吐き出される。ラズが答えた。
「そうですよ。サチ様がこっそりと作った物です」
「全然こっそりしてないけどね。私もう一度みてこよー!」
エレナが暗黒神様の神像の前でうっとりとしている。加護をもらったからゆっくり見られなかったのだろう。でも、うっとりする気持ちは分かる。暗黒神様、超!美男子。
ちょっとゆっくりしていたら、人で混み出した。
「えりぇにゃ!かえりましゅよ!」
「はーい!ねぇ!サチ様の像も作らない?」
「ちゅくりましぇん!」
恥ずかしくて噛んでしまった。
「神像の隣じゃなくってさ!創造神様のお隣に作りましょうよ!」
「それはいいですね!」
ラズが乗り気だ。
「ねぇ!?サチ様ー!」
「サチ様!作りましょう!」
無理矢理、ラズに抱っこで連れて行かれる。
「ほら!ほら!」とラズとエレナに急かされる。私ってどんな顔してたっけ?
全身の姿見鏡を出して見る。翼も出す。そのまま作ろう。ラズを道連れにして。
〈いでよ!私とラズの像!説明書きも一緒に!〉
ドンと地面から生えた。不壊と状態保存もかけている。
「な!サチ様!なんで私もいるんですか!」
目の前には、翼を生やした幼児を抱っこするラズがいた。説明書きの石柱には『創造神の使徒とお世話係のラズ』と書かれている。私だけ恥ずかしい思いをしてたまるか!
「サチ様!作り直してください!」
「こりぇでいいんでしゅ」
ツーンとする。ラズに凄い勢いでシェイクされる。ラズめ!実力行使にでおって!
私は飛んで馬車に帰る。後ろでラズが何か言って追いかけてくる。エレナはケラケラ笑っている。エレナの像も作ってやろうか。
ライデンが何か感動していた。顔は真面目でもオーラが違う。花が飛んでる感じ。神像見て感動したか。
あっ!!忘れてたことを思い出した!中央教会の枢機卿の娘の運命の相手を探すんだった!!行き先変更だ!
「ちゅうおうきょうかいに、いきましゅ!」
「「「「「「は!」」」」」」
おー!神聖騎士、揃ってるー!カッコいい!一般人も驚いたのか、一歩引いた。
馬車がゆっくりと動き出す。ラズはまだ、ぶちぶち文句を言っていた。こんなラズも珍しい。私は胸がスカッとした。いいじゃーん。記念じゃーん!
ぶちぶち言ってるラズを鎮める為に抱きつく。ふぅ!と息を吐いてラズは「仕方ないですねぇ」と諦めた。そうだ!諦めが肝心だ!ラズ!
30分程馬車で移動して中央教会に着いた。裏口からお邪魔すると、枢機卿が待っていた。
「使徒様!お待ちしておりました!あの件ですね!?」
「しょうでしゅ!しゅうききょうにょ、むしゅめにょけんでしゅ!」
「おお!こちらへどうぞ!」
応接室に案内される。いつぞやの大司教がお茶を持って来た。大司教なのに。うん、お茶は常温だ。身体にはいい。
「それで使徒様のご予定は?」
「いつでもいいでしゅ。いまかりゃでもだいじょうぶでしゅ」
「そうですか。娘も期待しておりましてね?お昼からはどうでしょう?娘に今から連絡を出しますので」
「しょりぇでいいでしゅ」
「分かりました。お昼からお待ちしております」
枢機卿の「結婚の儀式は素晴らしかった」と話を聞いて、一度宮殿に帰ることにした。
枢機卿はサチ達が帰ると慌てて、馬車を用意して自分の家まで帰った。
使徒様の護衛の結婚の儀式が終わってから、ずっと娘を家に待機させていた。今日それが実る!早く娘に教えてあげたい!喜ぶ顔が目に見えるようだ!
枢機卿ははやる気持ちを抑えて家に帰る。
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