ライデン お相手と結ばれる
親父さんが店の奥に行った後、ラズはライデンを励ます。
「サチ様は嘘はつきません。ここに貴方のお嫁さんがいるのは確定でしょう。後はライデン次第です。頑張ってください」
エレナとカイザーの目が輝いた。人の恋路ほど面白いものもない。2人は見守る体制になった。
ラズも一歩下がる。サチはお相手の見極めだ。
足音が聞こえてきた。店の奥から姿を現したのは親父店主と姉妹と思わしき女性2人だった。
サチがライデンに耳打ちする。
「まえにょじょしぇいでしゅ」
ライデンは緊張の中で、前と言う言葉が聞き取れた。
女性をじっと見ると身体がカッと熱くなる。
「長女のナタリーと次女のミルです。あのー、どちらにご用事で?」
親父店主が紹介してくれた。姉妹は2人共、神聖騎士をこんなに近くで見るのは初めてだ。緊張の中でも、ぽーっと見上げる。
長女ナタリーはバチっとライデンと目が合い、恥じらって下を向いた。
明るい茶色の髪にピンクの瞳の素朴な女性だ。ライデンは勇気を出してナタリーの前に行った。それをみんなで見守る。
サチは邪魔にならないように、ちゃっかりとラズの腕の中だ。普通の赤子に見える。幼児だが。
「な、ナタリーさん。貴女が私の運命の相手だ。私と、ライデンと結婚してください!」
エレナとカイザーから「おおーっ!」と声が上がった。ライデン男を見せた!
「な、な、な、なにを、あわわわ」
ナタリーの慌て方が親父店主にそっくりだ。店主も「あわわっ」としていたが、妹のミルは好奇心たっぷりで聞いてくる。
「姉とはどこで知り合いになったんですか!?」
「今が初めてだ。使徒様のお導きにより私のお嫁さんに出会わせていただいた」
「使徒様!!」
今、話題真っ盛りの人だ!妹の胸が高鳴る。ナタリーの胸も高鳴った。親父さんは「使徒様」と聞いて余計にあわあわしている。
店の奥から奥さんらしき人とお兄さんとお嫁さんらしき人が覗いている。家族は心配そうだ。うきうきしてるのは妹だけかもしれない。
「姉!姉!神聖騎士に結婚を申し込まれるなんて二度とないよ!姉も行き遅れになって来たし私は良い話だと思うな!使徒様が選んでくれた縁だよ!」
ナタリーはライデンの顔をチラリと見る。真面目で好青年な顔だ。悪い気はしない。ナタリーは勇気を出した。
「よ、よろしく、お願い、します!」
サチは嬉しくて飛び上がった!2人の周囲に花を降らせる。地面につくと消える花だ。ナタリーの頭に乗っける。
それをライデンが取ってナタリーの手に渡すとナタリーが真っ赤になった。うぶうぶですなー!
ちょっとの間、カップルを見てからおうちを出してナタリーをご招待する。
「りゃいでん!にゃたりーを連れておうちに入ってくだしゃい!」
サチが入った後に続いて、ライデンはナタリーをエスコートする。ナタリーは夢に浮かされたようにふわふわと歩くとおうちに入った。
サチは礼拝堂でライデンがナタリーと祈っているのを見て、信心深いなぁと思った。
2人の気持ちが落ち着いたら、ナタリーの部屋にご招待だ。もちろんライデンの隣りの部屋である。
ナタリーはサチが飛んでいるのにびっくりして、ライデンに「使徒様だよ」と教えられて更にびっくりしていた。
ライデンの部屋の隣の部屋の前に着くと、サチが宣言した。
「にゃたりーにょへやでしゅ!」
「わ、私の!?」
ナタリーはずっと妹と一緒の部屋だった。そんな自分に部屋を貰えるなんて!と感激していた。
サチはドアを開けると、飛んで部屋の中に入り壁にナタリーの実家の部屋に繋がるドアをつけた。あとはナタリーが思い描いてドアを開けるだけだ。
「にゃたりー!にゃたりーのへやへつづく、どあをつくりましゅた。どあをあけてくだしゃい!」
落ち着きなさげにキョロキョロしてライデンを見上げると一緒にドアの前まで行ってドアを開く。
そこはナタリーと妹がいつも使っている部屋だった。ナタリーはもう、驚きすぎて言葉も出ない!
さちはライデンとナタリーの部屋を繫ぐドアを設置していた。ナタリー側から鍵をかけれるようにしている。夫婦になっても、もしもの事があった時の為だ。
「りゃいでん、にゃたりー、こっちにきて」
サチは縮こまるナタリーに鍵を持たせて、ドアを開ける。そこはライデンの部屋だ。
「にゃたりー、りゃいでんにょへやがここ。つながってりゅ。いやにゃらかぎをかけてくだしゃい」
ナタリーは真っ赤になった。ライデンもだ。2人共ゆだっている。
2人共恋愛初心者なのだ。これは刺激が強い!ナタリーは真っ先に鍵をかけた。ライデンが少し残念そうだ。
もう1つ部屋の鍵も渡す。キーケースがいるかな?とかわいいピンクのキーケースを作って渡して鍵をつけてもらう。
「使徒様、あの、ありがとうございます」
「さちってよんで」
「えっ!うえっ!」
ナタリーはちょっとパニック体質なのかもしれない。ライデンがフォローする。
「サチ様とお呼びすればいいんだよ」
なんか、ナタリーとの雰囲気が甘くなっている。ナタリーは勇気を出してサチを呼ぶ。
「あ、の、サチ様!」
「はい」
「ありがとうございます!」
飯屋の娘だ。本来は元気がいいのかもしれない。声の出し方が様になっている。
「かぐはどうしゅりゅ?つくりゅけど。どんにゃにょがいい?」
「え、えあ、と、か、かわいいので!」
ベッドの掛け布団をピンクにする。ソファは白で、机も白。大きいウサギの首にピンクのリボンを結んであるぬいぐるみを隅っこに置いて。クローゼットはピンクにする。
エレナが羨ましそうに見ていた。エレナもぬいぐるみが欲しいのかな?
「わあ!お姫様の部屋みたい!」
気に入ってくれたようだ。
「いつ来てもいいでしゅかりゃにぇ」
「はい!ありがとうございます!」
それではお店で家族が心配してるといけないから戻りますか。
みんなでおうちを出ると、ナタリーのご家族が全員で待っていた。カイザーが1番初めに出ると驚いていた。
ナタリーが出てくるとホッとした空気が流れた。
「ナタリー」
「おめでとう、ナタリー」
「いきなりだが、おめでとう」
奥でいた3人が祝福してくれた。これにはナタリーも嬉しかったようだ。
「ありがとう!みんな!」
家族がわいわいしだした。親父さんが空気を締める。
「まだ、話し足りない事があるだろう!みんな座りなさい!」
あわあわしてるだけの親父店主じゃなかったようだ。
みんな慌てて客のいない食事処の席に座る。ナタリーの隣をライデンがちゃっかりキープしていた。やれば出来る男ライデンだ。
サチはみんなの前に冷えたミックスジュースを置いていく。
「こ、これは使徒様、ありがとうございます」
両親がぺこぺこする。いいのいいのとサチは手を振る。
サチも小さいミックスジュースを飲む。シャリっとして冷たくてジューシーで美味しい!やっぱり本物の果物を使ってなくちゃね。
「2人が初対面なのは分かった。本当に結婚していいんだな?」
親父がナタリーに聞くと不安そうにライデンを見上げる。ライデンがナタリーの手を握った。近い、近いぞ2人共!
ナタリーはぐっと手を繋いで「うん」と答えた。
「と、ライデンさん?はうちの娘でいいので?」
「サチ様が導いてくださったご縁だ。ナタリーがいい。結婚したい」
ナタリーが真っ赤になる。心のハートがドッキドキだ。
「サチ様とは使徒様の事ですか?」
「そうだ」
「ライデンさんはおいくつで?」
「26歳だ」
「娘は24歳ですが、宜しいですか?」
「良いも悪いもナタリーがいい」
「ライデンさんのご両親は?ご挨拶にいかねば」
「親、兄弟はいないので大丈夫だ」
「えーと、新居はどうなさいます?」
「サチ様に部屋をいただいた。そちらでナタリーとの交流を深めていきたい」
ライデンはナタリーの手をきゅっと握った。ナタリーは部屋の鍵がよぎった。
「さっきの不思議な家?ですか?」
「ああ、中は空間拡張されていて、ここの何倍も広い。ナタリー、夜に風呂に入りにおいで。19時頃のはずだ。エレナ!ナタリーに風呂の入り方を教えてもらっていいだろうか?」
「いいわよ。ナタリー、私はエレナ。サチ様の護衛の聖騎士よ。よろしくね」
「よ、よろしく、お願いします!」
「私はサチ様の専属護衛となった。身分は神聖騎士のままだ。だが、サチ様がこの中央都市から出て行く時はついていかなければならない。ナタリー。サチ様のおうちの部屋で会おう。君が許してくれるのならば、このお店で会ってもいい。普段は日中は仕事をしている旦那だと思ってくれ。君次第ではいつでも会えることを忘れないで」
「はい」
ナタリーがぽーっとした顔でライデンを見る。落ちたな。サチはにんまりした。
「りゃいでん!にゃたりー!ちゅうおうきょうかいでしきをあげましゅ!」
「「「「「「ええ!!」」」」」」
「中央教会でですか!?」
サチは知らなかったが中央都市には中央教会だけが教会じゃない。大きな中央都市では分教会があり、そこで式をするのが一般的だ。中央教会で式を挙げるなど、べらぼうに金がかかる。一般人など夢のまた夢だ。
だが、この中央都市ではサチはトップの権力がある。中央教会の枢機卿に会ったこともあるし、顔がきく。
「けっこんにょぎしきでしゅ!いまかりゃちゅうおうきょうかいにいってよやくしましゅ!」
「ああああああ、ライデン、本当!?」
「サチ様が言うのだ本当だろう。サチ様!流石に私の蓄えだけではお金がたりません!」
「わたちがだしましゅ!しきもわたちがしゅどうちましゅ!」
サチは興奮して噛まなく良い言葉を噛んでしまった。まぁ、サチだから。
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