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12、デート−1

学園内のカップルは何組もある。

アルベルみたいに婚約関係にある者も、浮名を流す者も、モテモテ人間たちに恋を捧げる者も、様々だ。


殿下たちも婚約関係にあるが、節度あるお付き合いなので、月に1度会って贈り物をし、お茶をしながら話をする程度で親密に見えるか、と言えばそこまでではない。まあ、上品な感じ 貴族のお付き合いって感じだ。


教室にいるとクラウスが現れた。

「ベル、おいで」

「どうしたの、クラウス様?」

「ん? 今日馬車で熱っぽかったから、ほらやっぱり。医務室で薬を貰ってきたからほら飲んで」

「有難うクラウス様、本当は熱っぽくて…怠かったの」

「なら、帰る? 待ってて荷物を取ってくるから、キースさんにも声をかけてくるよ。大丈夫待ってられる?」

「クラウス様にご迷惑をかけられないわ、もう少し我慢できる」

「馬鹿、無理する必要なんてないよ?」

ヘナヘナと座り込んでしまった。

「ほら、席はどこ? ここ?」

クラウスは片手でアルベルを抱き上げて片手でアルベルの荷物をしまい帰る支度をした。

「忘れ物はない? なら、帰ろう」

コクンと頷いた。


クラウスは医務室へ寄りアルベルの事を伝えて帰宅した。医務室の先生もアルベルが馬車に乗れないことは知っているので、クラウスと一緒の帰宅を許可した。


途中でキースに伝え馬車の準備は出来ていた、すぐに乗り込み出発した。

『はぁー、心配だな。僕が卒業したらベルはどうしたらいいかな?』


その日、クラウスはアルベルが心配なのでデバール邸に泊まることにした。

薬を飲んでひと眠りしたアルベルは目を覚ますとベッドの傍で手を繋いで眠っているクラウスに気づいた。


『心配させちゃったな…。よいしょっと』

アルベルはベッドの傍らで座っているクラウスに布団をかけた、その中に自分も入り肩を寄せ合って目を閉じた。

水を換えに来た侍女はその微笑ましい光景に頬が緩んだ。

だが、アルベルは熱を出しているのでこのままにしておくのもどうしたものか…と思い悩み、結局護衛に言ってベッドに戻して貰うことにした。

2人を包んだ毛布を剥がすとその中でも2人は手を繋いでいた。それを離すのは忍びなく、アルベルのベッドに手を繋いだまま寝かせた。


明け方目を覚ましたクラウスは状況が理解できなかった。

『何で隣にアルベルが寝ているんだ?』

冷静に昨日の行動を思い返してみる。


『熱のあるベルを連れてきて…熱を測って…眠らせて…起きてから汗を拭いて…スープを飲ませて…薬を飲ませて…寝かせて…。何で僕までベッドで寝てるの!?

寒かった? 寝にくかった!?』

自分の顔を触ろうとして動かないことに気がついた。

その手は温かく少し汗ばんでいて固まったように自由に動かせない理由はアルベルの手と繋がっていたから。じわーっと温かい気持ちが広がっていく。

『愛しい』が溢れる、体を傾け空いている手でアルベルの額の熱を測る。先程より下がっている。

額に張り付いた髪を取り、そのまま頬に手を滑らせる。隣で安らかに眠るアルベルの存在が自分の中で凄く大きなことに今更ながらに感じる。初恋を実らせた幸せに酔いしれる。


ジィーッと見ているとアルベルの目が開いた。

動揺する、今の状況は不可抗力で自分の意思ではない!いや、自分の意思でないこともない、いやいや、だけどわざとじゃ無い! 気づいたらこの状況だっただけで!!


「クラウス…おはよう」

そう言うと、モゾモゾと動いてクラウスの胸に顔を埋めた。

『え? え、え!? えっと、ベル? あ、あ…』

「スー スー」

『ん? 寝た?』

モゾモゾ   ムギュー

『うぉぉう!』

アルベルは手を外すと両手でクラウスを抱きしめてしがみついて寝ている。

『あ、あ、あんまりくっつくと不味いモノまでくっついちゃう! もう、それ以上動かないでー!!』

「クラウス………大好き…」

ズクン

『え? ダメダメダメ! 今だけは駄目!!』

「ああぁぁ、なんてこった」

クラウスはそっとアルベルを引き剥がし、風呂場へ向かった。


そして、煩悩を振り払う為に朝練を実施。

自領を離れてからハードな訓練はしていなかったので、デバールの兵たちと久々にドギツイ訓練をした。その姿に兵士たちは『流石次期辺境伯』と褒めていたが、真実は本人のみぞ知るところであった。


しかしこの日を切っ掛けにクラウスはデバール邸で一緒に暮らすようになった。

同じ家に住めば学園への送迎も手間がない。それにここにいれば厳しい訓練が出来る、アルベルを守る力を付けるためにも…、大好きな人の傍にいるためにも一緒に暮らすことにしたのだ。




アルベルは元気になってからクラウスをデートに誘った。

友人に聞いた恋人同士で行くのに最適!と言う一押しスポットへ向かった。


今日のクラウスはいつも以上に格好良く感じる。

『さっきもめちゃくちゃ格好良かった…。同じ屋敷に住んでいるけど、クラウスは着替えを済ませると玄関ホールで待っていてくれた。

「お待たせしてごめんなさい」と言うと「待つ時間も特別で素敵な時間だったよ、はいこれ」

同じ屋敷に住んでいるのにいつの間にか準備してくれた花束を差し出してくれた。凄く綺麗でいい香りがした。「この香りから今日の楽しかった思い出がベルを幸せにしてくれたら嬉しいな。ふふ、始まってもいないのに気が早いかな?」照れた顔が超キュート! ちょっとキザだけどサラッとこなしてスマート、あああああ、めちゃくちゃ格好いい!!』


「何? ニマニマして」

クラウスの顔を間近で見ると途端に心臓が早鐘を打って真っ赤になってしまった。

その様子にクラウスは密かに気を良くしている。

「クラウスが格好良くて…反芻しているところに、本物が出てきて、心臓が止まりそう!」

『ああああ、ベル! オブラート! ストレートすぎてこっちがやられる!

鎮まれ! 落ち着け! 今日は格好良いところを見せるんだ! ちゃんと予習してきただろう? ベルが言うまでデートもしていなかったなんて失態をここで挽回すると誓っただろう!! 幼馴染だけじゃない、婚約者、恋人としてもっと意識してもらうように頑張れ僕! ふぅーーーー』


「本当? 僕格好いい? 他の誰でもないベルにそう思って貰えるなら嬉しいな。

ねえ、ベル僕たちは恋人同士だよね? それも…コホン ラブラブな恋人同士。だから、もっともっと仲良くなりたい、いい?」

ボン!

そう音が出たみたいに真っ赤になった。


「え! え? 嘘、どうしよう、ええ、あ、ヤダ嘘でしょ!」

それは不本意と取れる言葉の数々。

『不味い! 調子に乗ったか!!』

言い直そうとすると、

「私、思っていること言葉にしてた? やだ恥ずかしすぎる!! クラウス…クラウ…嫌わないで?」

ウルウルして瞳に大粒の涙が溜まっていく。

『ん? あれどう言うこと? 嫌じゃない?』

「何が? 何で僕がベルを嫌うの?」

「だってだって、クラウスともっとイチャイチャしたいって考えていたことが漏れていたんでしょう? だからさっきああ言ってくれたんでしょう? でも…本当の事だから…、お願い嫌わないで?」


『ああ、神様 これは新手の拷問ですか? こんな可愛いアルベルを前に手を出さないなんて…無理。いや、うんアルベルもイチャイチャしたいって言ってくれたし、うん いいよね? これは完全に合意だよね?』


「ん? ベルも僕と同じこと考えてくれてたの? 嬉しいな、ちゅう。こうしていきなりキスしても怒らない?」

物凄い近い位置で見つめてくるクラウスにコクコク頷くことしか出来ない。

「ねえ、さっきのクラウってもう一度呼んで? 凄く特別って感じがして…凄く…いい」

『なんなん? 壮絶な色気がクラウスから出てくる、逃げられない…気がする』


「クラウ」

「もう一回」

「クラウ」

「もう一回」

「クラウ…ん!」

唇を重ねた。今まで見たいな軽いキスじゃなくて、目が寄るほど近い位置で見つめ合いながら角度を何度も変えて唇を重ね、クラウスが舌でアルベルの唇をなぞる。背中からお尻までゾワゾワする。

「あっ!」

下から上ってくる感覚に口が開いてしまった。そこにすかさず舌を入れてきたクラウス。

『うわぁぁぁぁ!』

プチパニック。

驚愕して目の前のクラウスを見れば、色気をガンガン振り撒き、肉食獣のような瞳で真っ直ぐ見つめてくる。『どうしよう』と思っているうちにガクガク体が小刻みに震えて、力が入らなくなってきた。『何これ? どうなってるの?』力が抜けてクラウスの胸にすっぽりとハマってしまった。


「ごめん、つい夢中になった」

『いやーーーん、男って感じの雰囲気に はぅ、メロンメロン』

「クラウが格好良すぎて…力が入らないよぉ〜」

「ぷっ! 光栄です。僕も可愛いベルに夢中です」

胸の中のアルベルの頭や額にキスを贈り、後は到着するまでアルベルを落ち着かせながら大人しくしていた。



目的地に到着。

ここは、近代美術館。美術館といっても絵が展示されているだけではなく、恋人同士でいくと色々と楽しめると教えて貰ったのだ。


「ベルはここに行きたかったの?」

「うーん、実はねクラウとデートしたいなって思って友達にお薦めを聞いたの。そうしたらここを薦められたの、詳細は教えて貰えなかったけど、恋人同士で行くと盛り上がるって」

「そうか…」

「あ? 興味ない?」

「ううん、違う。こっちでも話題になってたから、驚いただけ」

「そうなんだ、どんなところなんだろうね、楽しみ」


『うーん、この様子では知らないんだろうな…、まあ いっか』



美術館の中は、陽光を浴びたステンドグラスによって作り出された光の空間に目を奪われ、太陽の傾きによって印象の変わる絵に感嘆し、地面に映し出された映像に驚愕し、トリックアートに興味津々、彫刻の大きさにまた驚愕、とてもいい経験をしていた。

クラウスも同じように楽しんでくれていた。


次のコーナーは扉の向こう。

扉を潜ると、真っ暗な世界だった。アルベルは狭い四角い空間も苦手なのですぐにクラウスを探した。クラウスの腕にしがみついて周りを観察する。目が慣れてくると小さな光が分かった。それが時間ごとに綺麗な模様を描きながら移り変わっていく。

そう、ここは鏡で閉ざされた万華鏡の中の世界。

小さな光と思っていたが、魅入っていると儚くも美しい満ち足りた光の世界。


「凄く綺麗…。ね?」

隣のクラウスを見ると、優しげにアルベルを見ていた。光と影がいつもとは違う人間に見せるクラウスの顔にドキッとしていると、突然 顔が近づいてきた。口にキス。

抱きすくめられてさっきよりもう少し激しい情熱的なキス。


少しすると、クラウスは何事もなかったようにアルベルの手を引いて次へ行く。


『何で、いきなりキス!?』

放心していたが、今は妙に腰に回された手が気になる。

クラウスの顔が耳元に近づくと

『ここ、男性の間ではキス出来る絶好のスポットとして噂になっていたよ』

ガバッとクラウスを薄暗い中で見上げると、ニヤリと笑っている。


「きっと、ベルの友人も気を遣ってくれたのかな?」

「もう…意地悪。でも…今日の楽しかった思い出の1つになるね」

『ヒューーーーーーズドーン!! くっそー! アルベルを僕に夢中にさせるつもりがこちらが返り討ちにされてる! 嫌じゃないんだ…くそっ、好き』


隣の部屋に行っても、その次の部屋も少し暗い部屋に入ると普通にキスをするようになった。流石にあまり濃密なキスはしないが存分にイチャラブを楽しんだ。


『クララちゃん、カレンちゃん イチャラブ満喫してるよ! グッジョブ!』

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