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11、入学式

今日から学園生活が始まる。


学園へ行くのには王都のタウンハウスから通うか、寮から通うかの2択。

ただ警備上 護衛を傍に置くためには、寮に連れて行けるのは同性の護衛が必要となる、そうなると高位貴族は寮ではなく大抵タウンハウスから通う者が殆どだった。


アルベルも何とか1人で通えるように馬車に乗る訓練をしたのだが、どうしても具合が悪くなってしまう。そこで寮に入ろうかと検討したのだが、アルベルは女性の護衛がいないので結局タウンハウスから歩いて通学するつもりだった。

しかしそこは過保護なクラウスが自宅から毎日アルベルと一緒に馬車に乗ることでクリア。


「アルベル様、クラウス様がお迎えに参りましたよ」

「はーい、すぐに参ります」


「アルベル、おはよう」

「クラウス、おはよう!」

「ふふ、制服とっても似合っているよ」

「本当? 良かった、どこもおかしいところはない?」

1回転してクラウスの最終確認を待つ。

「どこも問題なんかないよ。ふふ 緊張しているの?」

「…うん、ドキドキして昨日はあまり眠れなかったの」

「馬車に乗って続きは話そうか」

「あ、そうよね。クラウス兄さま ギュってして?」

「あははは、珍しいね『兄さま』が出るなんて、何がそんなに不安なの?」

『乙女ゲームが始動することとは言えない』


今日も手を繋いで馬車に乗り込む。

「クラウスと、ずっとはいられないもの、1人でちゃんと出来るか心配で…」

何気なく言った言葉だが、クラウスは照れて少し赤くなっていた。だが今のアルベルには気づく余裕はない。


「そうだ、これベルに贈り物だよ。入学祝いだね」

「なあに? 開けてもいい?」

「勿論 開けて。ペンだよ、私とお揃い。今使っているんだけど凄く使いやすいんだ。だからベルにもあ贈りたいって思ったんだ」

「うわぁー素敵! 凄い握りやすい!! もしかしてち特注してくれたの?」

「ふふ、長く持っても疲れないようにね」

「有難うクラウス兄さま!」

「あはは、また兄さまが出た。頭の中がごちゃごちゃなんだね。おいで」

クラウスはアルベルを優しく抱きしめ落ち着かせる。クラウスの匂いは安心できた。

『ふぅー、大丈夫、きっと大丈夫』


学園に着いてしまった。ドキドキが最高潮!

どうか どうか無事何事もなく卒業出来ますように!!




入学式は遅刻イベントがある。

前回王妃陛下のお茶会で遅刻イベントあったからもうないのかな? どうなるんだろう?

王妃陛下主催のお茶会で会ったメンバーが揃っている。席は家の序列順に決まっているので友人と隣同士と言うわけにはいかない、所定の位置につく。

椅子にはプレートがあり、自分の名前のところに座る。チラッと確認し優雅に座っていく。


新入学生の代表の挨拶は今年はラティウス第1王子殿下だ。

1年生の代表は身分の序列の1番上の者。2・3年生の代表は成績で決まる、前年度の年間通した成績優秀者。

3年生の代表者はクラウス・マイヤーだ。そう、お兄様―――!!

今更ながら私の彼は最高にカッコいい!

あんなカッコいい人と結婚するんだなぁ〜。クラウスが幼馴染で良かった!!


……そう言えば、ウォルターは私と同じ歳だから本当だったら、ウォルターも今年入学なんだよね。どうしているのかな、会いたくないけど…私が会いたくないって言ったからずっと修道院に入っているのかな? それはそれでなんかやだな。殺されるのは嫌だからやっぱり会いたくないけど、不幸になって欲しいとまでは思わない。

今になって思えばディビットやクラウスを独占してて寂しかったのな?って思うから。


おっと、これからクラウスの挨拶、その後にラティウス殿下の挨拶っと。

入学式イベントって何だっけ?

えーっと、確かヒロインは遅れて登場するんだよね。


気付けばラティウス殿下の挨拶も終わってしまう。

あれれれ? イベントなし!? 嬉しい、最高かもしれない! ストーリー変わった!?


キーーーーーバタン

扉が開いて閉まる音がした。

反射的に全員が殿下が挨拶なさっている時に扉の方向を見た。


「やっと着いたぁ〜!」

静寂の中に響く声、独り言かもしれないが全員に聞こえている。

「すみません、迷っちゃって〜、てへ」

「速やかに席に座りなさい」

「はーい」

見回して空いている席を探す、あそこかな?

遅れてきたヒロインことソフィアちゃんは1番目立つど真ん中の空いている席に座った。

周りの者は驚愕して言葉を失っていた。

そこへ挨拶を終えて帰ってきたラティウス殿下が自分の席に着こうとするとそこには、女が座っている。

これはどうしたものか…。


「何故、君がそこに座っている! 自分の席に座りなさい!」

「自分の席? 空いている席に座ったのではいけないのですか?」

「座席を確認したら君の名前ではないだろう? 君が来るまではそこは彼が座っていたのだ。退きたまえ!」

「え? 名前? あら本当だ! ごめんなさい空いている席がここしか見つからなくて」

席を立つとまた見回した。

「席は身分の序列順だ。君はどこの家だ?」

「家? ここで言うんですか? あ! 今日は寮から来ましたよ! 家がどこかはプライバシーの侵害です!」

「君の家がどこにあるかなんてどうでもいい。爵位は何だと聞いている、自分の名前は言えるかね?」

「ああ、そうなんだ。…じゃない、そうなんですね。ソフィア・マルティナ! マルティナ男爵家です!」

「なら、君は…あちらが君の席だ、移動しなさい」

「分かりました。すみません」

一礼するとそちらへ向かった。


10分後に入学式は終わった。


ドキドキドキドキドキドキ

い、今のが入学式イベントなのか?

ゲームでは爽やかに

『遅れちゃった…、私の席は…あった! 

そこは私の席だ。君は…ああ、あそこのようだ、行くといい。

有難う…ございます。チラッ』

程度で、後に『君はあの時の! あなたはあの時の!』

みたいなことにゲームではなるけど、ないないない実際はない。

あの式典での遅刻!? あり得ない、遅刻してあの雰囲気の中割って入れる猛者はいない。

3時間の式典で2時間50分遅刻したら、普通は休むか出席せずに式典の後に合流するだろうさ。しかも寮に住んでるってポロリしてた。歩いて寮から学園までが6分、校門から講堂まで10分、どう迷ったら3時間近く遅刻出来るって言うのか…。ただの寝坊じゃね?

兎に角、関わり合いになりたくない!


何で気づかなかったのだろう…、クラスは成績順だって。

うっかり攻略者4人の内、ウォルター以外の3人と同じクラス。攻略者の婚約者は全員他の同じクラス。成績順ではあるが、選択しているカリキュラムが違うから分かれているのだ。何事もなく卒業出来ますように、くわばらくわばら…。



休み時間になるとキャメロン様やリアーナ様が取り巻きを引き連れてやってくる。

あれまで同じクラスではなくて良かったか。

私やシェネルにはいなかったわよねー?

ラティウス殿下の婚約者バリー公爵家、ギルバートの婚約者アデレイド公爵家もウィリアムの婚約者オスカリア伯爵家も王族派、そしてこのクラスには貴族派もいるのだ。


フランク・エイカー 公爵家

ローアン・ホーク  伯爵家

クレア・キャンベル 侯爵家

ニコラ・シスターク 伯爵家


この4人はガッツリ貴族派、何もないといいけど…。

因みにクラウスのマイヤー家は王族派、何と言っても騎士団長だしね。うちのデバールは王族派よりの中立派、と言うかどちらにも加担せずってところ。辺境伯がどちらかに積極的に付いてしまうと政治的思惑でゴタゴタしている隙に他国に攻めいられると国自体を揺るがす事態となる、よって基本的には中立の立場を守っている。


辺境伯自身は他の貴族と違い、社交を免除されている。

それは当然1番重要とされているのは、持ち場を守ることだから。

例えば、王家主催の夜会などは基本的に出席しなければ王家に叛意ありと取られることもあるが、そう言ったものも全て免除されている。他にも王族が学園内で護衛をつけることは当然としても、辺境伯や大臣の子供たちも護衛を付けることを許されている。それだけ危険だからだ。


貴族派たちは自分たちの派閥拡大のため、ちょっかいをかけてくる可能性あり。

しかも私の婚約者はマイヤー騎士団長子息、もしかしてだけど…ヒロイン効果だけではない!? まさかの陰謀説! そうこう思っていると肩を叩かれた。見るとクラウスだった。


「ベル、ボーッとしてどうしたの? もうお昼だよ、食事に行こう?」

「いけない、有難うクラウス…様」

「ふふ、悪くないね、新鮮だ」


食事を摂りながら、派閥のことについて話をした。

「確かにね それはあるかも。例えばだけど、殿下やその側近の失態を分かり易い形で知らしめれば、自然と下級貴族でどっちつかずの者たちを取り込めるだろう? そういう意味では殿下を嵌めるために同じクラスにいる者たちは使われるかもね」


「はぁー、成績落として別のクラスになろうかしら?」

「あははは、面白い考え方をするね、よしよし 何かあったら私のクラスに逃げておいで」

「有難う…クラウス様」

学園では幼馴染の婚約者とは言え、最終学年の先輩を呼び捨てにするには問題があるとして様をつけている。



「ええ!! ご飯をただで食べられるんですかー!?」


そんな声に騒めきで応える。

『どこの貧乏人だよ!』

『アイツ入学早々大遅刻してきた奴だろう?』

『顔は可愛いのに馬鹿なんだな』

『あー、使用人に生ませた子供を引き取ったとか言うアレか!』


んまあ、皆さまよくご存じだこと。恐ろしい…情報収集力!


「あの子は今日 遅刻してきた子だね?」

「そうみたいだね」

「同じクラス?」

「違うわ」

「そう」

「クラウス…様、よそ見したりしないでね」

「クス、僕がよそ見? する訳ないでしょう! ベルが何かに巻き込まれないか心配になっただけ。ふふ、学園生活もいいものだね、ベルに嫉妬して貰える日が来るなんて」

「もう、意地悪!」

「安心して、僕の人生でアルベル以外に想いを寄せた人もモノもないから。これから先もアルベルだけしか好きにならない。僕は好きな人と結婚できるから幸せだよ」

真っ赤な顔に頬を伝う涙。

『あれれ 何で涙が出るんだろう?』

「嬉しい…私も好きな人のお嫁さんになれて幸せ」


食堂で愛を語り合う2人。

案外近くで聞き耳を立てている者はいる。


「そうだ、今日はもう帰るのでしょう? 僕はまだ帰れないんだ。悪いけど図書室で待っていてくれる? 恐らく3時くらいには終わると思うんだけど…。用があるなら先に帰ってもいいし、どうする?」

「なら、図書館で勉強しているわ」

「そう、なるべく早く終わらせて行くね」

「うん、待ってる」


2人は一緒に帰るために図書室で待ち合わせるようになった。

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