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悪役令嬢は記憶を失くす  作者: 鈴本 梨加
7/8

第6話

投稿遅れてしまいました。

数人単位で近づいてくると思ったが、何かをしたのか、人影は一人になり近づいてきた。


「やぁ、モニアレアさん。ああ、僕の事わかります?」


物腰が柔らかそうなタイプの顔をしており、取りつきやすそうな感じの美形だ。

その顔に合った、いかにも人懐っこそうな笑みを浮かべて彼は私に話しかけてきた。

彼こそが今日のパーティーの主役、フルメニア・ティートバルだ。


「勿論存じています。」

「記憶喪失と聞きましたが、私のことは覚えているのですか?」

「今日のパーティーの主役じゃありませんか。ここにいる誰もがあなたの事を知っていると思いますよ?」


私は記憶喪失のことを演技と思われたのかと思い、少し冗談めかしてそれをちゃんと否定した。


「僕も、まるで人気者ですね。」

「ええ、少なくとも女子からの人気には自信をお持ちになって下さい。ほら、先ほどのようにね」

「はは、見られていましたか…」


皮肉ともとれる冗談を何とも思ってないようで、さらりと冗談で返された。

人が良いというのか、鈍いというのかは分からないが疑った自分が馬鹿のようだ。


「また人気のある主役様がこんなところにどんな用で?」

「別に特に理由はありませんよ。強いて言うなら貴方と同じ理由だと思いますが。」


前言撤回。この人、意外にも頭の回転は早い方。

コミュニケーション能力も人並み以上に高いな。

フィリア様もこれぐらいを目指してほしい。無理だろうけど。


「あら、貴方を好意的に思っている方は沢山いますのに。」

「モニアレアさんもあんなにずっと人に囲まれていると疲れるでしょう?」

「そうですね、あまり同じ状況になったことが無いので実際には分かりませんが、

 確かに疲れそうです。」

「でしょう?意外と大変なんですよ。」


のらりくらりと交わしてそうなのに意外だ。


「ああ、自己紹介がまだでしたね。お互いのことを分かっているかもしれませんが一応。

私、アスメニア王国から参りました、フルメニア・ティートバルと申します。」


そういうと跪き、私の手の甲に唇を落とした。

見た目に不釣り合いというべきか、相応というべきか紳士的な挨拶をしてくれた。


「私はモニアレア・ディザーレアと申します。今後とも是非仲良くして頂けると嬉しいです。」


1歩下がってドレスの裾を適度に摘みお辞儀をする。

昔から教養だけをずっと叩き込まれてきたようなものなので挨拶などは世間に出ても恥ずかしくはないと思っている。


「えぇ、もちろんです、仲良くして下さい。貴方さえ良ければ僕は今でも全然お話したいので。」

「それは嬉しいです。でも主役がパーティから抜けるとそれはそれで問題になりそうですね?」

「生憎、意外と皆さん新しいお相手を探すのは得意みたいで」


彼の視線を追い、先程まで取り巻いていた彼女たちの方向を見れば彼女たちは各々相手を見つけダンスを踊っている。


「ああ、なるほど。時間って恐ろしいものですね。」

「ええ、皆さんの興味なんてすぐ薄れていきますからね。」

「そのほうが気が楽ですけど。」

「前向きなんですね」


少し驚いたような笑顔で言葉を返してきた。

そんなに私が陰気臭い顔に見えるのだろか。少しショックだ。


「ああ、いえ、心がお強いですね、という意味なんでご気分を害さないでください」

「あら、顔に出ていましたか?」

「なんとなくですよ。或いは心を読めるかですね」


まるで心が読めるかのように、思っていたことを否定してきた。

やはり、とても鋭いんだと思う。流石に驚いた。


「心を読めるとしたら…大変ですね。」

「ふふ、そんな。もしもの話ですよ。」

「私、からかわれてしまいましたか」


軽口を交わし合っていると、小柄な女の子が近づいてきた。

おっと、もしやあの人はリズベルトさんではないか。

近づいてくると疑問は確信に変わった。

人の趣味をどうこう言うつもりはないが、あのフリフリのドレス、髪についている大きなリボン、あの子なら好みそうだ。

やがて、会話できるほどの距離に近づいてきた。


「ああ、お姉さま、こちらにいらっしゃったんですね。」

「ええ、ご迷惑をおかけしてしまったかしら。」

「それよりもお姉さま、こちらの方は?」

「えっと、アスメニア王国からいらしてくれたフルメニア・ティートバル様です。」

「ご紹介いただきました。アスメニア王国のフルメニア・ティートバルです。」

「まあ、そうだったんですね!そうとは気付かず申し訳ないですわ。」


リズベルトさんが知っていたのか、知らなかったのかにはさほど興味がない。

しかし、リズベルトさんが彼を目的に近づいて来たというのは分かっている。

フィリア様といる時のような声音だからだ。甘くて、声が高い。私と二人きりの時には絶対に聞けない声音だ。


「いえいえ、別に大丈夫ですよ。皆さんが僕のことを知っているのも怖いですしね」

「確かにそうですわね。ですが、こんな所にいていいのですか?こんな人気のない。」

「僕は楽しいですよ。素敵な話し相手もいますしね。」


彼は私の方を向いて微笑んだ。その仕草に不覚にもどきりとしてしまった。

そんな流れをリズベルトさんは快く思わないようで、私を話に入れないように話を進めていく。

話に入れないこともないのだが、ここは私が抜けていたほうがよさそうだ。


「私はここらでお暇させていただきますね。」

「あら、お姉さまそうなの?分かりましたわ。」

「え、そんなお気遣いいただかなくても…」

「まあまあ、ティートバル様いいじゃないですか。お姉さまがそうしたいって言っているんですし。」

「え、あ、まあそうですね。では、またお話していただけませんか?モニアレアさん。」

「ええ、勿論。それでは。」


ちゃんと別れの挨拶までしてくれる紳士的な行動が嬉しかった。

しかし、このままいると隣の女の子の視線が痛いので、私はその場を去った。

反感を買ってまでその場にいようとは思わなかった。

お腹が空いたので、違う場所に行く前に大広間に戻ることにした。

向こうなら食べ物も、飲み物も沢山あるだろう。


目立たないように、壁と同化したつもりで食べ物をとりに行く。

スイーツ好きなので、スイーツを重点的に取る。

色とりどりのスイーツがお皿に盛られる。待ちきれず一番上のをつまみ食いするように食べた。


「んんー…美味しい!」


周りに人がいないことをいいことに、私は声を出しながらスイーツを食べた。

ここのコックさんも腕がいい。とっても美味しい。

思わず笑みを浮かべながら、私はもう一度スイーツを取り、休憩室に行くことにした。

休憩室なら人も少なく、イスとテーブルが置いてあるのだ。

我ながら名案を思い付いたので、私は早速歩き出した。


意外にもあっという間に着き、私は恐る恐るドアを開けた。

人がいたらどうしようなど思っていたが、誰もいない。

中央の大きな机にワインや少しの食べ物が置いてある。

それならこんなに取ってくる必要もなかったかな、などと考えながら、私は窓際の椅子に腰かけた。

対面する形で一人掛け用の椅子が二つ置いてあり、二つの椅子の間に机が置いてある。

そして横の壁には、自分の身長半分ほどの長方形の窓がついている。

休憩室の片隅の位置だが、それがかえって落ち着くので好きだ。


一人でせっせと盛り付けたスイーツを食べる。

窓の外に見える大きな木を眺めながら食べる。

この時間がなんだか楽しくて、案外パーティーも悪くはないと思い始めた自分がいた。


まだお皿の上にあるスイーツを食べようと手を伸ばした時、丁度ドアが開いた。

フリフリのドレスがチャームポイントのあの子だ。


「あら、お姉さまじゃない。こんなところに一人で何をしているのかしら。」

「えーっと、スイーツを食べてます?」

「そんなの見てわかりますわ。」

「そちらは、もうお話は終わったのですか?」

「やっぱり気になるでしょう?また、会う約束をしてくださったの。それも具体的にね。」


私の去り際に彼が言っていた言葉を、まだ根に持っているようだ。

流石に面倒くさくなる。

とりあえず、褒めておけばこの場をしのげるだろうと思い、とにかく彼女を褒めちぎった。

目論見通り、彼女は気をよくして、でしょでしょと話を終わらした。


「ああ、そういえば、フィリア様が貴方のことを探していらしてましたよ。」

「まあ、ほんと?それならいかなきゃね。」


なぜか少しだけ憂鬱が混じった声を出した。しかし、それでも誰かに求められるのが嬉しいのだろうか。すぐに表情を変え楽し気に部屋を後にしようとしていた。


「ああ、そうだ。忘れてた。お姉様にちょっと用事がありましたの。」


フィリア様やティートバル様といた時のような甘い声で話しかけてながら、出口に向かってた足をくるりと向け、私の方に歩み寄ってくる。

私相手にそんな声を出すことに驚きつつ、話を促すように相槌を打った。

これからもゆっくりですがよろしくお願いします。

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