第92話 歪んでいる絆でも……
「おーい、夏音ちゃ〜ん!」
「あ、結衣おねーさん……!」
結衣たちは翌日、またあの公園に来ていた。
今日は休みの日だから学校もない。
遠慮なくあの黒髪少女のことに専念できる。
「結衣おねーさん……夏音、信じてますにゃ……」
夏音は、唐突にそう呟いた。
あの黒髪少女と夏音との間にどんなことがあったのか、結衣はわからない。
だけど、夏音はあの少女のことをすごく気にかけているということは、結衣にもわかる。
だから――
「うん、大丈夫! 信じて!」
「さぁ! 結衣様、夏音様――準備はいいですかぁ?」
結衣が笑顔で夏音に言うと、ガーネットが高らかに二人に問う。
結衣と夏音は、その言葉に力強く頷く。
そして、結衣は夏音を抱え、その場をあとにした。
☆ ☆ ☆
木々がざわめく。
何かを拒むようにして、激しく揺れる。
「だれ? ……まあ、どうでもいいけど……」
「だれって……会ったことあるでしょ……」
「この人は記憶が弱っちいんじゃないでしょうかぁ」
無気力そうに呟く少女と、呆れ気味に零す少女。
そして、相手を逆撫でするように笑う魔法のステッキと。
「こんな所にいたんですにゃ……? 自分の家に帰ればいいのに……」
萎れた木々と湿った土を見回す、小さな少女。
そんな小さな少女を、無気力そうな少女が目を剥いて見つめる。
「ど、どうしてここに……っていうか、生きてたのか――!?」
無気力そうな少女――美波は驚きのあまり叫んだ。
それもそのはずだ。
なんせ美波は、小さな少女――夏音が自分のせいで死んでしまったと思っているのだから。
そんな美波の態度に、不機嫌そうに夏音が零す。
「そんなに弱っちいって思われてたとかショックですにゃ……傷ついたですにゃ」
嘘っぽい演技で傷心アピールをする夏音。
それをどう思ったのか、美波が狼狽える。
「え、あ、いや……ごめん。別に僕はそんなつもりじゃ……」
夏音を慰めるようにして、美波はわたわたと手を振る。
そんな二人を遠くから眺めていた結衣は、こんなことを思った。
「なんだかんだで仲良いんじゃん……なんか二人の仲を心配して損したなー……」
「まあ……ちょっと歪んでいるかもしれませんが、これが二人の絆なんでしょうねぇ」
結衣がポツリと零した言葉を、ガーネットが拾って言う。
あの二人を見ていると、自然と結衣は自分とガーネットとの関係性を重ねて見る。
『少し歪んでいるかもしれない』。それは自分たちにも当てはまることだ。
結衣は、自分の願いを叶えるため。
ガーネットは、自分の身を守ってもらうため。
どちらも己が利益を求めながら一緒にいる。
だが――
「ん? 結衣様なぜ私を見つめているんです? あはー、さては結衣様……私に気があゴゲエ!!」
少なくとも結衣は、友情を感じているはずだ。
多分、きっと。




