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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第一章 少女たちの願い(後編)
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第88話 忍者との戦い

「んー? かかってこないの? なら――」


 そう言うと、結衣の視界から姿を消し――


「そぉれっ!」


 そう言ったと同時、黒髪の少女が増える。

 その増えた少女たちは、結衣と夏音を囲む。

 冷や汗が、結衣の背筋を伝う。


「これは、まさか――」

「……分身の術、ですにゃ……?」


 結衣が言おうとしたことを、夏音が言った。

 ……そう、これは『分身の術』。

 黒髪の少女はまるで、“忍者”のようだった。

 そんな忍者は、蒼輝(サファイア)のような瞳をこちらに向けながら言う。


「ははっ。驚いた? もし驚いてくれたなら嬉しいよ」


 声は笑っているのに、顔が笑っていない。

 口はかろうじて、少し上にあがっているのがわかる程度だ。


 それが複数。控えめに言ってゾッとする。


「夏音ちゃん!」

「――え?」


 結衣は夏音を引き連れ、真上に飛んだ。

 包囲は、前後左右のみ。

 なら……(うえ)に逃げるだけだ。


「え、え? 結衣おねーさん? これからどうするんですにゃ??」


 だが、逃げるだけでは何も解決しない。

 だから、こうする。


「まずはあの分身たちを何とかする!」

「……で、ですが……どうやって――?」


 黒髪少女の分身を見ながら言い放った結衣に。

 ガーネットが不安そうに尋ねる。


「決まってる! ――全力攻撃!」

「「なっ――!」」


 結衣が言い放った言葉に、ガーネットと夏音が揃って驚く。

 だけど、それに構ってられない。


 分身たちはそれぞれ“手裏剣”を手に持って、こちらの隙を伺っているのだから。


「全力全開!! ――大砲(バング)!」


 そう叫ぶと、黒髪少女の分身たちを目掛けて魔力砲が打ち出される。

 打ち出された魔力砲は、大きな音を伴って分身たちをかき消した。


 砂埃が宙を舞い、公園の中を駆け巡る。


「な、何してるんですにゃ! し、死んじゃったら――」

「大丈夫。あの人は死んでないよ」


 夏音がオロオロと狼狽えるが、結衣は毅然と言い放つ。

 そして、砂埃が止むとそこには、誰一人いなかった。


「え? ど、どういう――よ、よく分からないにゃ……!」


 夏音が疑問に喘ぐ。

 それもそのはずだ。何せ夏音は――


 ――あの分身たちの中に“本物”がいると、思い込んでいるのだから。


「あー……やっぱり気づいてたぁ……?」


 いつの間にそこにいたのか。

 少し離れた場所にあるブランコに乗っている黒髪少女が、困ったように笑う。


「だって“忍者”なんでしょ? だから絶対、あの中にはいないって思ったの」


 だからこその全力攻撃だった。

 ……うん、まあ、魔力砲を放っても死ぬことはないんだけども。


 何はともあれ、そこに居ないとわかっていたからこそ、結衣は全力で繰り出したのだ。


「ふーん……頭の回転がいいんだ……」


 黒髪少女は、声のトーンを落として呟いた。

 そして一転。獰猛な笑みを浮かべて叫ぶ。


「じゃあ、スピード勝負だね!」

「――にゃ……っ?」


 黒髪少女は叫んだ後、唐突に消えた。

 そしてソレは、夏音の背後から現れた。

 そして――


「ぎにゃ……!」


 何が起こったのか判らず、結衣は目を見開く。

 夏音は既に結衣の隣から姿を消し――いや、結衣の眼前に倒れている。


「か、夏音ちゃん……っ!」


 結衣は自分の目を疑った。

 …これは、何かの間違いだ、と。


 夏音の体には傷が無数についていて、血のような液体も見られる。

 こんなにも無惨なものは見たことがなく、結衣はその場に力なくへたり込んだ。


「……い、や……」


 今までだって、流血は経験してきた。

 だけど、今回は少し違う。


「夏音ちゃんが……夏音ちゃんが……!」

「結衣様、落ち着いてください!」

「こんなの落ち着いてられないよ! なんで……なんでこんな……!」


 ガーネットが結衣を宥めるように言うが、結衣はそれどころではない。

 結衣は黒髪少女のことが、完全に頭から抜け落ちていた。


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