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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第一章 少女たちの願い(後編)
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第83話 子ども扱いしないでよ!

「ふぃー……やっと落ち着いたよ……」

「結衣様はバイオレンスすぎますよぉ……」

「ガーネットが悪いって、なんで気付かないのかしら……」


 結衣たちは肩で息をして、床に倒れている。

 騒ぎ出すガーネットを諌め、生を放棄し出すせーちゃんを止め、結衣はどっと疲れた。


「……で、せーちゃんは何しに来たの?」


 まさかカミングアウトだけをしに来たのではあるまい。


 結衣はそう思って、できるだけ刺激を与えないように訊いた。

 すると、せーちゃんはまた顔を逸らす。


 うーん、事態が好転しない。

 結衣は頑張ってせーちゃんに打ち明けてもらおうと考えるも……


 ……む、無理だ……

 結衣の頭じゃ、良い考えが浮かばない。

 諦めて別の話題に移ろうと考え、口を開こうとしたら。


「……そ、その……結衣は、どんなの付けてるのかと思って……」

「え? 付けてるって……ま、まさか……」


 結衣の言葉に、コクリと頷いたせーちゃん。

 ……ま、まじですか。


「ご、ごめんね……せーちゃん。私じゃ力になれないよ……」


 そう言うと、せーちゃんは勢いよく顔を上げ、絶望し切った顔を浮かべる。

 そして、結衣の肩をガシッと強く掴んで激しく揺らした。


「なんでなんで!? 結衣を頼って結衣の家に来たのに! なんでよぉ!」

「うあぁ……頭が揺れるぅぅ……」

「結衣様ものすっごい顔してますよぉ?」


 結衣の視界がぐわんぐわん揺れる。


 ガーネットの笑い声も聞こえないほどの激しさ。

 遊園地にあるコーヒーカップに乗った時のように目が回る。


 やっと落ち着ついたのか、せーちゃんの手が離れる。


「はぁ……なんで結衣が力になれないのか、それだけ教えてくれないかしら?」

「うぅ、少しぐわんぐわんするけど……それなら言えるよ……」


 まだぐらつく視界に何とか耐え、せーちゃんの問いに答え――


「それは――」

「それは、まだ結衣様にアレが来ていない。ということですね!」


 ――ようとしたが、ガーネットの声に防がれる。

 というか、言おうとしたことを先に言われた。


 ぐらついてた視界が聡明になり、代わりに視界が赤く染まる。


「……ガーネット、覚悟はいい?」

「あっはぁ。やはり図星でしたかぁ」


 ブチッ、という音が聞こえた気がする。

 そして次の瞬間。ガーネットを捉えようと、結衣の体は音速を越えた。


「ぎゃあああ!! やめてください、結衣様ぁぁ!!」

「うっさい! やっぱり一回痛い目見ないと分かんないようだね!」


 怒りと恥で顔を真っ赤にして、結衣はガーネットをシバく。


 せーちゃんは呆然と口を半開きにして、結衣たちを見ている。

 そしてハッと我に返り、結衣を止めようと割り込んでくる。


「ゆ、結衣っ! そ、その……まだ来てないって子たくさんいるし……大丈夫よ??」


 せーちゃんが必死で宥めるも、結衣はガーネットに制裁を加えないと気が済まない。


「ふ、ふふっ。退いて、せーちゃん。私は――」


 そこまで言うと言葉を切り、目を瞑る。

 そして再び目を開けると、本音をぶちまけた。


「――子供扱いされるの、嫌だから!」

「えぇー……」


 気墳を上げ、結衣はまたガーネットに向き直り、どう料理してやろうかと考える。

 呆れ顔のせーちゃんを蚊帳の外に置き、結衣はガーネットを痛めつけた。


 ☆ ☆ ☆


「結衣様は本当にバイオレンスですねぇ……」

「ガーネットが悪いんだけどね……」

「あ、もうあたし帰るわ……」


 今度こそ、結衣たちは疲れ切っていた。

 もう何もしたくない。


「そうだね……もう暗くなってきたし……玄関まで見送るよ」

「……ありがと」


 そんなふうに会話を交わして、怒涛の一日が終わる。


 だけど。

 まるで、世界の終わりを表現したような夕焼けに。

 結衣は少し、胸騒ぎがした。


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