第46話 重すぎる過去
「ひゃー! きーもちーい!!」
「さいっっこうですっ!!」
結衣たちは今――空を飛んでいる。
増幅で速度を上げながら、誰もいないであろう海の上を飛んでいる。
――緋依は翼をはためかせながら。
――結衣は飛行魔法をかけながら。
結衣は遊園地の、何かのアトラクションに乗っているような気分になる。
やがて無人の浜辺を見つけ、そこで腰を落ち着けることにした。
結衣は変身を解き、緋依も翼を畳む。
「はー……楽しかった……」
「たまにはこういうのもいいですよね」
結衣と緋依は、共に充足感を感じていた。
――ストレス発散にいいかもしれない。
結衣が満ち足りた顔を浮かべていると、不意に緋依は陰を落とした。
「私が人類の根絶を願ったのは――紛れもなく両親のせいです」
唐突にそう語った。
そしてさらに声のトーンを落とし……
「ですが、両親のせいだけということでもありません。私は――学校でも居場所がなかった」
衝撃的なことを言い放つ。
緋依の話では――いじめに遭っていたようなのだ。
暴言や暴力――嫌がらせなど、酷い時には椅子で殴られたこともあるようで。
“死にたい”なんて思ったことなど、いくらでもあるようで。
自殺しようとしたこともあったようだ。
だが、いざとなると怖くて出来なかったらしい。
「そうなのですねぇ……真菜様と言い、どうしてこうも重い過去を持った人たちが多いんでしょうねぇ?」
「え……いや、だって“強い願い”を持つ者が力を授けられるなら……そうなんじゃないの?」
ガーネットの問いに、結衣は当たり前のように返す。
だが、ガーネットはもごもごと言葉を濁して、
「あー……まあ、そうなりますかねぇ……」
と誤魔化すように言った。
結衣は、ガーネットが何を考えているか分からないでいる。
いや、分かったことなんて今まで一度もなかったが。
結衣はガーネットの言っていることが、どうも嘘っぽいような気がしていたのだ。
多くを語ろうとしないからそう感じるのかもしれないが、どうにも胡散臭い気がしてならない。
「ま、まあいいや。とりあえず話を戻そう」
そう言って、結衣は緋依の方に向き直る。
緋依は結衣を見て、何を思ったのか。
「そうですね……では――」
淡々と過去を語った。壮絶すぎる過去を――




