第32話 放たれた光は……
「へくちっ!」
「おやおやぁ〜? どうしたんですかぁ、結衣様? そんな可愛いくしゃみしてぇ」
「わ、わかんない……誰かに噂されてるのかなぁ?」
からかうように言うガーネットを横目に。
結衣は窓から見える景色をセンチメンタルに眺め、顔を顰める。
あの後、真菜とお別れをしてから数時間が経とうとしていた。
日は既に昇りきり、万物を照らしだしていて、眩しいほどだ。
静かに思えた昼時はしかし、どこか嫌な予感がしてならない。
だが、そう言える根拠がどこにもなかった。
「むっ……! これは……!」
「! やっぱり、ガーネットも感じる?」
「ええ……! 感じますよぉ……!」
そして、一呼吸置くと。
「今からテレビで魔法少女モノのアニメが始まるとぉ!」
――…………
相変わらず結衣とは違った意見を持っているらしいガーネットに。
結衣は呆れすら通り越して、ただただ無が襲った。
そんな結衣に目もくれず、ガーネットはテレビのリモコンのボタンを押してチャンネルを変える。
そして、その魔法少女モノのアニメとやらを観させられた。
「ほんとガーネットって魔法少女好きだよね……私が魔法少女させられてるのもガーネットの趣味でしょ……」
ため息を吐きながら、結衣は変わらず窓の外を眺めてそう言う。
「ええ、その通りですが何か?」
ガーネットが何故か真顔で、素のトーンで言葉を放ったように感じられた。
結衣はもうガーネットと会話する気力がなかったため、無視を決め込んだ。
そうしている間にアニメが始まったのか。
ガーネットは結衣の態度に興味をなくし、テレビに見入っている。
そんな時――窓の外から一筋の光が地上から放たれ、天に向かっているように見える現象が起こった。
結衣はそれを、目を見開いて見つめる。
「な、何あれっ!」
「結衣様? 五月蝿いですよぉ。もぉ〜」
「アニメなんかいいから! 窓の外見て! あれって多分――」
結衣がそこまで言った時、渋々窓の外を視たガーネットが驚いた様子で言葉を発する。
「なっ――! この気配――まさか!?」
「やっぱりなんかあるんだよね!? 行かなきゃじゃない!?」
結衣が焦った様子でそう問うと。
「い、いえ……あれには――関わらない方がいいです……」
深刻な問題を見つけたかのような声のトーンで呟いたガーネットの真意は計り知れない。
だが、ガーネットがそう言うということは――恐らく関わらない方がいいのだろう。
ガーネットは奇想天外なことばかり言うし、多くを語ろうとはしない。
――が、嘘をついたことはないのだから。
結衣は逸る気持ちを抑え、見て見ぬ振りを決め込んだ。
それがこの後、最悪の展開を招くことになるなんて――気づかずに。




