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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第一章 少女たちの願い(前編)
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第28話 結衣の決意

「ガーネットと真菜ちゃんを、両方――救う!」


 そう言い放ち、せーちゃんの手を取って。


「手伝ってくれる?」


 真っ直ぐせーちゃんの顔を見つめ、結衣は問う。

 答えはもう、分かりきってはいるが。


「何言ってんの。そんなの――当たり前じゃない!」

「っ……! ありがとう、せーちゃん……大好き!」


 結衣はせーちゃんの心強い言葉にまたもや泣きそうになり、それを誤魔化すために笑顔で言った。

 しかし、当のせーちゃんはと言うと――


「あれ? どうしたの? 顔真っ赤だよ?」


 熱があるのではないかと疑うほど顔を真っ赤にさせ、目を見開いて狼狽えている。


「へ、あ、あの……え??」


 声を裏返させ、目をしきりに泳がせていることから、随分動揺しているだろうということがわかった。


「ちょ……どうしたの?? 私……なんか変なこと言った?」


 だが結衣には、せーちゃんが動揺している理由が判らなかった。

 だからそう問うたのだが――


「な、なんでもないわ。さ、行きましょう」

「え? う、うん……? あ、でもそこ――」


 誤魔化して、平然を装うせーちゃんに。

 結衣は制止の声をかけようとして――

 ――ゴンッ。


「いったぁ!?」


 木の幹にぶつかってしまったせーちゃんを半眼で見つつも、心配そうに駆け寄った。


「だ、大丈夫……?」

「え、ええ……大丈夫……」


 結衣がせーちゃんを覗き込もうとすると、せーちゃんはバッと顔を逸らす。


「えっ?? 本当にどうしたの?」

「な、なんでもないわぁぁぁ!」


 そう顔を真っ赤にして叫ぶと、せーちゃんは走ってどこかに行ってしまった。


「ど、どうしよう……せーちゃんがいなきゃまともに戦えるかも分からないのに……」


 せーちゃんとは対照的に、結衣は顔を真っ青にして呟く。

 それもそのはず。ガーネットが奪われ、結衣は魔法少女としての力を失ってしまったのだから。


「こんなんじゃ……救えな――」


 そこまで言うと、結衣はとある台詞について思い出していた。


『どんなことだって! 願えば、叶う!』


 自分が強く言い放った言葉が、脳裏に浮かんだ。

 あんな威勢よく言い放っておいて忘れるなんて――


 そう結衣は自分に呆れ、ここからあの時の気持ちを取り戻すために――瞑想した。

 あの時の――変身する感覚。思い出せ、思い出せっ――!

 そして数秒が経ち、ザアッと一陣の風が吹くと――目を開き、変身のポーズを取る。


 ――閃いた。あの感覚、自分は――覚えている! いや、覚えていなくたっていい。


 ――自分で、創り出すッ!


 先程まで結衣の周りを囲むようにして生えていた木々は既になく、代わりに周りが煌びやかに輝く。

 そして、ガーネット抜きの変身シーンが始まる。


 そして――

 ガーネットと一緒にいた時の魔法少女衣装とは少し異なるが、魔法少女になることができた。

 しかし、それはとても肉体に負荷がかかるものだった。


 皮膚が焦げ付き、健康的な肌色は既になく、褐色に染まる。

 血が滲み、血管が張り裂けているのではと思うほど、体毛を紅く染め上げた。

 ドクンドクンと心臓が脈打つ音がいつもより大きく聴こえる。


 ――魔法少女は、ステッキがないとこんな血なまぐさいものなのだろうか。

 そう勘違いしてしまうほどの生々しさがあった。


 だけど、それに固執しているほどの時間はない。

 早く、ガーネットと合流して――真菜を、救い出さなければ。

 そう決意し、結衣は探索魔法をかけながら空へ飛んだ。


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