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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第二章 似すぎている敵
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第176話 水子供養

 結衣のお母さんになった妹は、もう一人の赤ちゃんのことも忘れていなかった。

 だから水子供養をすることに決めていた。


 水子とは、生まれることができなかった子どものこと。

 生まれてこなかった赤ちゃんの霊を、地蔵に祀るのがならわしになっている。


 水子供養は必ず行う決まりはない。

 ただ、生まれることができなかった赤ちゃんに対し、供養したいという気持ちがあれば行うのがいいと言われている。

 水子へ愛しているという想いを伝えたい時や、水子の幸せを願っている時に行うのだ。


 だが、それを見ていた本人は、素直に受け取ることが出来なかった。


(今さらなんの償いだよ……っ。そんなことするぐらいなら……産まれさせてくれればよかったのに……!)


 少女にとっては、妹が邪悪な犯罪者にしか見えないのだ。

 自分が完全な被害者で、妹が完全な加害者。

 ともすれば悪霊になっていたであろう少女は、圧倒的な理性でそれを抑え込む。


(こんなところで悪霊化したら即あの世へ送られる……っ! そんなのは嫌だ……!)


 少女がどう報復しようか考えている時。

 水子供養用のお地蔵様が少女に迫ってきていた。


「な、なんなんだ!? 誰だ、お前!」

「あなたをお迎えに参りました」

「はぁ!? ……っ! あいつっ!」


 少女が再び妹へ目を向けると、お地蔵様に手を合わせているところだった。

 その光景に、少女は思わず舌打ちする。

 そしてどんどん自分に迫るお地蔵様に、為す術なくあの世へ送られようとしていた時。


「……あ」


 ――また、一冊の魔導書のような本が目に入った。

 少女はそれをすかさず手にし、しっかりと抱きしめる。

 大切なもののように、なくしたくないもののように――大事に。


「……俺は、まだ……あの世へ逝わけには――いかないんだよっ!!」


 少女が感情を込めて叫ぶと、それに呼応するように本が光り出す。

 その光に、お地蔵様は姿を消した。


(な、なにが……何が起こって……)


 あまりに現実離れした光景に、混乱することしか出来なかった少女。

 だが、光り出している本が放った言葉に、少女の脳が落ち着く。


「――お主の“願い”はなんじゃ? その強烈な胸の内を、明かしてみよっ!」


(――あ、そうか……俺は――)


 心の中で自分の願いを再確認すると、そこから少女の意識は黒く染った。


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