第122話 期待を裏切らないもの
さすがというか、緋依は期待を裏切らなかった。
小さい子どもでも扱いやすいようになっているのに、機体を壁にぶつけたり、他の機体にぶつかっていったりしていたのだ。
「……なんか、逆にすごいね……」
「ええ……なんと言うかもう……ぶふっ!」
結衣はもう、逆にそこまでできる緋依に感心している。
そして、ガーネットに至っては、笑いを堪えきれずに吹き出してしまっている。
緋依に見られたらまずい。
結衣はそう思い、ガーネットをリュックの奥にしまい込んだ。
「ぶぎょ!? 結衣様酷すぎませんか!?」
「ちょっとだけでいいから黙ってて!?」
――酷いのはどっちの方だ。
そんな言葉は飲み込んで、気持ちを切り替える。
緋依はベンチに腰掛け、どんよりとした重いオーラを纏っている。
その緋依の横には、真菜が座っている。
「ほ、ほら……元気……出して? せっかく、遊園地に……来てる……のに……」
真菜は必死に励ましているが、緋依は聞く耳を持っていないようだった。
そんな時――
「あれ!? 夏音ちゃんがいないよ!?」
驚愕と混乱にまみれた美波の声が響く。
その声を拾った結衣は、慌てて周囲を見回す。
目の前には、ひどく落ち込んでいる緋依と、それを励ます真菜。
その横には、疲れ切った顔をしている明葉とせーちゃん。
そして、結衣の後ろには。
「ど、どうしよう……」
顔面蒼白になっている美波がいる。
どこを見回しても、夏音の姿が見当たらない。
「……夏音ちゃん……」
なんだか、雲行きが怪しくなってきた。
結衣は不安に響く鼓動を抑え、夏音の身を案じる。




