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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第一章 少女たちの願い(後編)
115/261

第115話 とても簡単なこと

 もうすでに日が変わり、辺りは白い光に染まる。

 まだ完全ではなく、夜のような闇も遠くに見えるが。


 その中で、命懸けの戦いをする者たちの姿があった。

 その者たちは今、肩で息をし、今にも倒れそうな顔をしている。

 肉体的にも精神的にも、つらそうな感じだ。


 服は所々破け、髪も乱れ、肌は傷ついている。

 空を飛ぶ気力もないのか。

 地面に降り立ち、ただ相手を睨みつけている。


「はぁ……はぁ……なかなかやるやないの……」

「はぁ……っ、そっちこそ……」


 だが、口ぶりでは相手を認め始めていた。

 鋭い刃物のようだった眼は、元の優しさをたたえた目に戻る。


 そろそろ、あの子が来る頃だろうか。


 結衣は少し微笑む。

 自分も明葉も、自分の願いに振り回されている。


 だが、それがいい。とても心地よい。


 身を滅ぼすのではなく、ただ……

 全力で自分の力を出し切っただけだ。

 そういうのは、案外スッキリする。


 喧嘩でもそうだ。

 不満を自分の胸に秘めるのではなく、言いたいことを言いたいように言えば……少し楽になる。

 そして、冷静な判断ができるようになってから、謝ればいい。


 少しスケールが違うかもしれないが、結衣にとってはそういうものなのだ。


 自分の願いが叶わなくたって。

 自分の思い通りにならなくて、もがいてたって。


 人気のない所で「バカヤロー!」とか叫べば――根本的な解決にならずとも――スカッとするだろう。


 不意に結衣は明葉に歩み寄り、手を伸ばした。

 明葉はそんな結衣を見て、目を見開く。


 だが、しばらくして明葉が笑う。

 誰をも魅了する、あの笑顔を浮かべる。


 なんだ。こんなにも簡単なことだったのか。


 明葉は結衣の手を握る。

 結衣の手の暖かさに、明葉は涙が出そうになる。


 こんなに暖かい手の持ち主を、明葉は知らない。


「……ここまでしてもろて、おおきに……」

「……うん、まあ、慣れてるから……気にしないで」


 結衣と明葉が互いに手を取り合って、笑い合う。

 そこにもう、先程までの殺伐とした雰囲気はなかった。


 ただの普通の少女たちが笑い合っているようにしか見えない。

 いや、実際ただの少女たちが笑い合っているだけだが。


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