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魔法少女になれたなら  作者: M・A・J・O
第一章 少女たちの願い(前編)
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第11話 可愛さアピールをしましょう!

 ある程度飛び回ったら人気のない森を見つけた。

 そこで魔法の扱い方について、アホステッキが教えてくれるという。


 そこに降り立ち、結衣は周りを見渡す。

 どこを見ても生い茂った木々しかなく、家も人も――何もない。


 青い芝生だけが、結衣の脚をくすぐる。

 確かに力を振るうなら此処が良さそうだ。


「では、基本の魔法から始めていきましょう!」

「う、うん。よろしく!」


 ゴクリと唾を呑み込み、何を指示されても良いように身構える。


「では、行きますよ――可愛く回ってくださぁい!」


 ――…………


「――は?」

「ですからぁ、可愛い感じで踊るように回ってくださぁい! 魔法少女は人気稼ぎも重要なのでぇす!」

「なんでだろう……あなたが言うとすっごく胡散臭いのに謎の説得力があるよね……」


 結衣は呆れ顔でそう答える。

 そして、それよりも見落としている部分があるだろうと、結衣はステッキに指摘する。


「ていうか! 誰もいないのに人気稼ぎってなに!?」

「あっははぁ。それはですねぇ、私たちからは見えない所にいるのですよぉ……例えばほら、画面の向こうとか――」

「さらっとメタ発言しないでくれるかなぁ!?」


 ステッキが画面の向こうとやらの方を注視していて、結衣の言葉は届いていないようだ。

 ツッコむことにどっと疲れた結衣は、

(もうどこか遠くに行きたい……)

 と、現実逃避することしかできなかった。


「結衣様ぁ。本当に人気稼ぎしたくないんですかぁ?」


 ステッキは突然声のトーンを落として、悪魔が囁くように言う。


「応援されない魔法少女なんて、魔法少女じゃありませんよ!?」

「何それ!? 意味わかんないし!」


 結衣にとって全力のツッコミを入れたのだが、やはり結衣の言葉はステッキの耳には届かないようだ。


「ではまず私の名前を決めてくれますかぁ?」

「ねぇ、私の話聞い――」


 そこまで言いかけ、結衣は言葉を切った。

 ……このアホステッキは今、なんと言ったのだろうか。


「……は!? 名前!? 今更!?」

「まあ、確かに今更ですが良いでしょう。私にも名前がある方が何かとやりやすいでしょお?」

「それは――まあ……」


 確かにその通りだと結衣は思う。

 名前があった方が意思疎通しやすいし、“ステッキ”って呼ぶのも――


「って、“ステッキ”って名前じゃなかったの!?」

「結衣様!? そんなわけないでしょう!?」


 とても大きな声で叫んだ結衣の声はだが、ステッキのツッコミによって掻き消される。

 結衣は割と本気で思っていたのだが、素早いツッコミによってそれはないと断言された。

 ということは、つまり……


「私が……あなたの名前を、考えるってこと?」

「いぇーす! その通りでぇす!」


 そしてステッキは、ビシィッっと指を刺した――ような気がする仕草をする。


「結衣様――いえ、我がマスターに決めていただきたいなと……えへっ☆」


 てへぺろ、と付け加え、照れくさそうに笑った――ように見えた。

 断言できないのは、まあ……顔がないからだ。


「うーん……そこまで言うなら……」


 結衣はそう言い、数秒熟考した後。

 しどろもどろに……名前を付けた。


「じ、じゃあ――“ガーネット”……は、どう……かな?」

「……ガーネット……」

「あ、あれ? どうしたの?」

「はっ……! い、いえ……なんでもありませんよぉ! 素敵なお名前ありがとうございますぅ!」


 結衣はガーネットという宝石について、テレビでその石の意味を話していた番組を観たのを思い出したのだ。

 ステッキには、その宝石の名前が合うだろうと思って付けたようで。


 そうと知ってか知らずか、上機嫌に鼻歌を歌って踊るステッキ――ガーネットの姿がある。

 だが、名前を付けたあとの反応が気がかりで、結衣は素直に『喜んでもらえて良かった』とは思えなかった。


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