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2話 サンタクロースの表と裏

本作で一番痛い部分がここだと思うので、「うわ痛ったwwwなにこのクソ展開www」とか思わずに読み続けていただければと思います。

痛くない代案が思い付けば加筆修正します。

 紙袋を開いた僕は困惑した。

 渡された紙袋を開けてみると本来目に飛び込んでくる筈の赤がどこにも見当たらない。

 もしかしたら二重梱包してあるのかもと思い、紙袋の中身を開けてみたが、出てきたのは茶色くて暖かそうなローブだった。

「毛皮のローブ?毛皮で茶色…。」

 どういうことか考えているとき、ふと紙袋から鈴が溢れてきた。鈴にはアタッチメントがついており、首のところにある金具に引っ掻けることができそうであった。

「ああ、トナカイね。」

 トナカイなら本物┃(白いし喋るから本当にトナカイかは分からない)がいるだろう。でもサンタクロースが2人というのも何か都合がよくないのかもしれない。

 何にせよ夢の話だ。気にせずにトナカイ役を全うしようと、とりあえずローブを羽織って鏡を見る。

「…。角がないな。」

 紙袋の中かと思って探してみたが、角は見つからず、代わりにトナカイの角とは思えない、枝分かれのないまっすぐな棒が2本見つかった。

「…。どう頑張ってもトナカイっぽくはならないな。」

 いくら考えても意図が分からないが、不思議と違和感を覚えなかったので、入れ間違いだろうと結論付け、とりあえずローブだけ着たままお兄さんのもとに帰ることにした。


 お兄さんの居る場所へと戻ると、彼はなにやらスマホを眺めていた。

「お兄さん。一応着替えたんですけど。」

「おう、一緒にやってく仲なんだ、俺は三田みたって言うからそう呼んでくれ。ええっと…」

「二河聖人です。」

「二河君だね。でだ、何で杖を頭の上で掲げてるんだい?それも組み立てないまま。」

「いや、角っぽくしておいた方がいいかなって。」

「角?」

 三田は怪訝な顔で見てくる。

「ええっと、角のパーツ無いかなーって探したんですけど、これしかなかったのでこれかなって。」

 場に沈黙が訪れる。

「ええっと、何て言ったらいいかな。今はもう"ボクが居るから"そういうのでは無いんだよって言うか…」

 ルドルフが何やら歯切れの悪いことを言う。ボクが居るを強調したと言うことは恐らく、衣装がトナカイだと思った僕の予想が外れていることを教えてくれたのだろう。しかしなぜこうも婉曲に指摘してきたのだろうか?

 僕がそう疑問に思っていると、三田が何か合点がいったように手を打つと吹き出した。

「あー、そう言うことね。二河君これトナカイのコスプレかと思ったの。いや流石二河君だ、似合ってるね。」

 ルドルフが、ごめんと言うように僕から視線を反らす横で三田は大笑いしている。

 だから僕だけに伝えようと言葉を選んでいたのか。

 笑われると途端に自分の格好と行動が恥ずかしくなってきた。

 というかなぜ僕は違和感を覚えなかったんだ。

「じゃ、じゃあこの衣装は何なんですか!茶色い2本の棍棒を持ったサンタクロースなんて聞いたことないですけど!」

 三田はツボに入ったのか笑い続ける。

「それはね、角じゃないしこん棒でもないよ、杖だよつえ、組立式の。」

 言われて棒をよく見ると確かに両端にジョイントがついており、1本の長い杖になるようになっていた。

「棍棒だなんて、意外に暴力的なんだね二河君って。」

 尚も笑い続ける三田に少し怒りを覚える。

「そんなに笑わなくたっていいじゃないですか!で、茶色いローブはどういうことなんですか?」

 三田は、ルドルフに笑いすぎを窘められてから笑いを治めるのに十数秒要してから話に復帰してきた。

「いや、すまない少し笑いすぎた。それで、ローブの話だよね。簡単な話、君が着てるのは『クネヒト』の衣装だからさ。」

 『クネヒト』という聞きなれない単語に思わず首をかしげる。

「日本人にはあまり馴染みがないから、知らないのも無理ないよ。三田だって日本人だから知らないのは察しつくだろうに、そういう必要そうな説明を省くのは良くないよ。『クネヒト』クネヒト・ループレヒトって言うのは、簡単に言えばサンタクロースの助手のことだよ。」

「サンタクロースに助手なんて居るんだ。と言うか助手必要なんですね。てっきり万能なお爺さんかと思ってました。」

「まあね、詳しいことはサンタクロースの起源から話さないといけなくなるから省くとして、サンタクロースはその性質上『善』じゃないといけないからね。サンタクロースとしての『悪』の部分を担ってくれる存在が必要になるのさ。で、そいつが『クネヒト』ってわけさ。」

「三田が善ってのは最早ギャグみたいなものだけどね。」

「なんだと!俺はこの上ないくらい善だぞ!」

「善な人間は他人の間違いであんなに大笑いしません。」

 2人の漫才が始まってしまったが、僕には少し気になることがあったので強引に話を戻す。

「あのさ、サンタクロースの『悪』って何?」

 二人は漫才を止め、こちらへと向かい合う。

「そうだね、クネヒトはサンタの助手って言ったのは間違いじゃないんだけど、日本だとあまり浸透してないから…そうだな、ブラックサンタって言えばわかるかな?」

「聞いたことはあります。確か悪い子を袋詰めにして売って、そのお金を親にプレゼントするとか言う話でしたよね。」

「…。ええっと、日本にはどんな風に伝わったんだい?」

「いや、これはこいつの家だけだぞ多分。俺もこんな話聞いたことない。」

 ルドルフが困ったように言い、三田がジト目で否定した。うちの親はこう言ってたぞ。

「まあ、とにかく、サンタクロースは今年1年いい子にしていた子供たちにプレゼントを配る、この側面を『善』として、悪い子は灰袋で叩いたり、石や石炭の塊をプレゼントする、この側面を『悪』としている。それだけと言えばそれだけなんだけどね。」

 つまりクネヒトはサンタクロースの悪の面として、悪い子に嫌がらせをしたり叩いたりすると。と言うことは今から僕は悪い子ぶっ叩かなきゃいけないのか?

 そんな僕の思考を見透かすようにルドルフが補足した。

「安心して。現代日本、と言うか日本ではその習慣はないよ。いい子はプレゼントが貰えて、悪い子は貰えないだけだね。」

「まあお前がその衣装を着てるのはまあ簡単に言うと衣装がそれしかないだけだ。」

「あ、そうなんですね。結構ぶっちゃけるなぁ…。」

 とりあえず叩いたり嫌がらせしたりといった嫌な役目はやらなくてすみそうだと安堵する。

「じゃあ気を取り直して、僕は何をすればいいんですか?」

「それはね。」

 三田が指を鳴らすとルドルフの後ろにソリが出現した。

「恐らく君の予想しているであろう通り、プレゼント配りさ。」

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