第8貝 「数分間クッキング」
ムキムキマッチョの男性が、小さな緑色のエプロンをつけて立っていた。
その隣には、ピンクのエプロンをつけた女性。
2人とも仕事のようで、エプロンの下はスーツを着こなしている。
やがて、どこからともなく流れてくる軽快な音楽。
撮影用のテレビカメラが、作動中のランプを点灯させた。
やがて、軽快な音楽が消え、エプロン姿の男性が口を開いた。
「これから、数分間クッキングの時間だ!」
手には活きたサザエを持っている。
「先生、今日はどんなお料理ですか?」
エプロン姿の女性が笑顔で尋ねた。
「いいか!まず、このように硬い火箸でだな……。」
いつの間に手に持っていたのか、先生と呼ばれた男は、火箸でサザエの中身をとりだす。
「その貝殻どうするんですか? また、波の音でも聞くんですか?」
またか?と言う顔で、エプロン姿の女性が先生の行動を見ながら言った。
「ちがう!しっぽ部分のジャリジャリを切り開いて捨てるのだ!」
流水とペティナイフを使い、エプロン姿の男性がサザエのした処理をする。
「そろそろ残った貝殻を耳にあてて、汁たらさないといけませんよ。」
エプロン姿の女性が、近くにあった大ぶりのつぶ貝を手に取り耳にあてた。
「だめだ!つぶ貝では、波の音は聞こえん!こうするのだ!」
先生と呼ばれた男性が、手に持っていたサザエを耳にあてた。
「先生……汁たれてますよ。汚いですよ。」
「以上、数分間クッキングを終わる!」
再び軽快な音楽が流れた。
お昼ご飯を食べながら、テレビをみていた人は思った。
「なんの料理作っとるねん!」
つづく