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第3貝 「ボクシング?」
四角いリングでは、男たちが自分の世界をかけた戦いが続いていた。
カ~ン!
闘いの始まりを告げるゴングが鳴る。
「く、くらえ!」
挑戦者の男が、手に持っているサザエの貝殻を耳にあてた。
「わぁ~!波の音が聞こえるぜ~!」
チャンピオンの足元が、ぐらりと揺れる。
「や、やるな!だが、汁たれてるぞ!汚いぞ!次は俺の番だ!くらえ!」
チャンピオンは、大ぶりのつぶ貝を耳にあてた。
「残念だな!つぶ貝では、波の音は聞こえないんだ!汁たれてるからな!汚いからな!」
べたべたの耳元から、サザエの貝殻を外し、挑戦者が叫んだ。
「な、なんだと……。お、俺が負けるのか……。確かに……波の音は聞こえない……。」
チャンピオンは、がっくりと膝をついた。
テンカウントが流れ、試合終了のゴングが鳴る。
新チャンピオン誕生の瞬間だった。
どんな試合やねん!
つづく