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第11貝 「手術中」
手術が始まった。
術着に着替えたドクターとオペ看が、患者と向き合っている。
だが、オペ看はどこか覚めた雰囲気だ。
「メス!」
ドクターが指示を出すが、オペ看は何もしようとしない。
「何をやっているんだ!メス!」
怒鳴るように言うが、オペ看は動かない。
面倒臭そうにため息をつきながら、こう言った。
「メスはあるんですがぁ~。」
と、患者に向かって手を伸ばす。
患者は、まだ生きているサザエのようで、ピュッと身が中に入っていった。
「な、なにをしているんだ!患者が殻の中に入ってしまったじゃないか!」
怒鳴るドクターを尻目に、オペ看はどこからともなく火柱を出し、サザエの中身を綺麗に取り出した。
「こうすれば、簡単ですよ。」
「な、な、な、なんてことを!」
ガックリとドクター膝をついた。
そんなドクターを尻目に、オペ看はサザエの貝殻を耳にあてた。
「わぁ~!波の音が聞こえる~!」
嬉しそうなオペ看に、ドクターが残念そうな口調で呟いた。
「し、汁たれてるぞ……汚いぞ。」
つづく




