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モドキの弟子  作者: こばかい
30/34

『第三区画のバケモノ』

◆◆◆◆◇◇


「ハハハハハアハハハァ!どうしたドウシタァ!」

 溶岩のつぶてが飛び、鳴り止むことのない爆発音。

 魔女の家も既に半壊し、庭の第一区画の草花には炎が上がっていた。

「もう少しダ、この奥の行き方はオレが知ってるから絶対はなれるナヨ!」

「『わかっ――ぐふ…』」

「オラァナ?人ってヤツをコロシテみたかったンダヨナァ!」

「『ぐ――アアア…ぐ、ガハアッァ――ァ』

 火の縄がロキの足に掴むと左脇腹に拳ほどの槍が貫いた。

「ダケドな?グロ画像とかダイッキライだから燃えて消えロヤァ!!」

 口から血を吐く、脇腹が血と共に中身を吐き出す。

 それでも追撃を交わし庭の奥へ奥へ奥へ、その意識だけは途切れさせることなく相手の攻撃を交わし、引き込む。

「逃げるんダッタラヨォ!さっさと死ねやバケモノガ!」

「この奥ダ!ロキ!」

 それでもここまできた、ここまであいつはやってきた。

 マーカジュラの合図に、ロキは最後の切り札を見せる。

 男性から放たれた五十メートルの距離を燃やし尽くす火柱。

 その直撃を避け、それでも火柱に手を突っ込んだ。

 あたかも固形物質のように掴み、引き込む、千度を超える熱がロキの体に襲いかかるが――ぐっと腰を沈めそれを投げ飛ばす。

 熱の痛みはすでに肌を食い破り、神経に骨までに至っていた。

「ああああああああ――!」

 一本背負い――。

 しなった火柱が術者本人も巻き込み、最奥へと投げられた。

「フン、ナンダよそれ。マッタク聞いちゃ――」

「煌炎!」

 炎の幻想種には見えていなかった。

 その最奥部が炎ですら照らせていなかった事を。

「な、ナンだヨコレ、やめ、ヤメロやめてやめてヤメテイヤ、いやだ、溶ける、トケ――ぎゃあああああああああ」

「ロキ!オレ達もヤバイ!逃げるぞ!」

「『あ、ああ…』」

 マーカジュラが視線を向ける。

 ロキは脇腹に風穴、左腕以外の上半身は火傷が赤くまるで模様のようになっていた。

 それでも足を動かす。

 そこはアテナが封印した中でも最悪の存在が眠る第三区画、その領域は全てを無に帰すの怪物の腹のなかに等しい。

「フザケルナぁあ!お前だけハゼッタイコロス、コロス、ロシテヤァ!」

 既に人型の炎は下半身を呑まれている。

 感覚無き幻想種ですら苦しめ殺すのが第三区画の怪物。

 もはや、ただの怨念。ただの執念で、炎の縄を再びロキの左足へ絡ませたのだ。

「『アアア…グアアアアア』」

 左足を呑む炎、そして幻想種を呑む怪物の手も伸びてきた。

 区画の入り口も獲物を逃さんと閉まっていく。

「ロキ!クソどうすりゃいいんダ…」

 マーカジュラも解こうと魔術をぶつけるが全てを振り絞ったそれは容易には解けない。


――ぶちり。


 そんな刹那だった。

 ロキの左腕が自身の左脚を付け根から落とした。

 伸びて放されたゴムのように跳ねていくロキ。

 しかし、体はもうそこまでだ。片脚も無く、全身の痛みはもう感覚がないのか、脳が焼き切れたのかもう何もできなかった。

「ヨシ!ああ、もう仕方ねえナ!」

 先の明かりが閉じていく。朦朧とする意識の中、ロキはただその闇が全てを包むのを見ているしかできなかった。

 右手が最後に見えた。金色のボタンが手の間から見える。

「なんとか無くさずに済んだか。悪い…な…ガキ…しゃしゃり出てもこれぐらいしか――」

 そうして意識は完全に消えた。


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