氷の刃
ついに戦闘です。
ここまでどんだけ引っ張るんだよって話だよなぁ。
「なぁに、緊張する必要は無いさ。
異能は既に君の物だ。
自分の体の一部みたいに 使いこなせるはずだぜ。」
オオクニヌシの声が頭に直接響く。
「それに相手もCランク。
スサノオの育てた闘技者じゃぁ一筋縄じゃいかないかもだけど、バケモノって程でも無い。
君は既にチーム《出雲》の一員だ!
俺がついてる!
思う存分ぶちかまして来い!」
優馬を励まそうとかけた言葉だが、当の本人は緊張と興奮でまともに返事すら出来ない。
それもそのはず、彼はデビュー戦の直前であった。
最初は心配で反対していた両親も、優馬本人の強い希望を聞いて今は応援してくれている。
テレビの前で見守ってくれている父と母の為にも、無様な戦いは見せられない。
「よし、そろそろ出番だ。」
その声を聞いて、優馬はゆっくりと立ち上がった。
不思議と恐れは無い。
異能を使うのはこれが初めてでは有ったが、何故か使いこなせるという確固たる自信があった。
震えているのは武者震い。
それまでは平凡な少年だった彼に宿った熱い闘志が、彼の身体を打ち震わせたのだ。
そうして、自分の部屋のドアノブに手をかける。
オオクニヌシ曰く、彼の部屋の扉は既に闘技場と繋げてあるのだそうだ。
優馬はゆっくりとドアノブを捻り、ドアを開いた。
歓声、そして熱気が、彼を包み込む!
テレビで幾度と無く見たあの闘技場に自分は今、立っている!
そして、遂に優馬はデビュー戦の相手と対峙した!
「僕の名前は湯川 氷河。18歳。
デビュー戦なんだって?
こんなに若い子だとは思わなくて驚いたけど、油断はしないよ。
僕の全力をもって、相手しよう。」
銀髪の優男が立っていた。
物腰穏やかな雰囲気が漂っている。
「さ、佐藤優馬。よろしくおねがいします…。」
沢山言いたい事があった筈なのに、出てきた言葉はこれだけだった。
互いの挨拶が終わった所で戦闘開始の合図である銅鑼が鳴り響く。
瞬間、辺りに霧が立ち込める!
しまった!
先手を打たれた!
優馬は既に自分が相手の術中に嵌まっている事に気がついた。
この霧はなんだ?
目くらましか、それともこの霧自体が毒等の能力か?
優馬は逡巡する…間も無く右手に鋭い痛み!
鋭い剣が、否!氷柱が彼の右手を貫いていた!
「ぐぅっ!」
思わず優馬は飛び退いた。
続く二撃、三撃。
神秘的とも言える氷柱が次から次へと飛んでくる!
這々の体で飛来する氷柱を避けていくが、このままではジリ貧だ…!
1つ、2つ、躱しきれずに氷柱が掠った。
しかし、そこで優馬は気がつく。
自分が氷柱を‘視て’回避していることに!
つまり、霧は晴れている!
霧と氷は同時に出せないのか!
「だったら、避けれないほどじゃ…無い!」
少しずつ、少しずつではあるが優馬は氷柱の動きに慣れつつあったのだ!
「もう氷柱の動きを見切り始めたのか。じゃあ、こんなのはどうかな?」
氷河がそういうや否や氷柱が溶けて無くなった。
そして次の瞬間、水の壁が迫って来る。
咄嗟に本能がヤバイ!と警鐘を鳴らす!
何かは分からないが触れてはならないと本能が理解する!
しかし、流石に避けきれずに腕に掛かってしまう、と同時に刺すような痛みが優馬に襲い掛かった!
「ぐっうぁぁ!」
熱い、熱い、熱い、なんだ、なんだこの液体は…!
そこで氷河は攻めの手を止めて話始めた。
「油断しない、とは言っても流石にワンサイドゲームじゃつまらないから教えてあげよう。
僕の能力は水だけじゃ無く、あらゆる物質の状態を操る。
今君が触ったのは僕が液状にした空気中の窒素。液体窒素だ。」
絶対零度が、優馬に襲いかかった。
自分が考えたオリジナル能力を戦わせたい一心で書き始めたけど、いやー、楽しいね。
次回も戦闘パートです。