1話 新種発見
新種。
その個体を「イセカイ人」と名付けることに決定した。
ここにその過程を記録する。
遭遇するなりその個体は鳴き声をあげて僕に近寄ってきた。
どうやらコミュニケーションを図ろうとしている様子。
27分間に渡りその個体の操る言語を記録した。
その結果、ニンゲン族のノゲルド語と文法と単語の大部分が一致するようだと思えた。
検証する。記録にあるノゲルド語のデータから出力。
「きみ は なに?」
「うおっ、しゃ、喋った……っ!?」
その個体は僕が発声したことに気を取られた様子で、言葉が通じたかどうか明確な反応が得られない。
もう一度出力する。
「きみは なに?」
「えっ、お、おぅ、さっきも言ったと思うけど、イツキって言うんだ」
どうやら言葉が通じてそれに答えたように見受けられる。
「イツキ?」
名前と思しき単語を復唱する。
「おう、イツキだ!」
どうやら合っていたようだ。
これからこの個体を「イツキ」と呼称する。
やはりノゲルド語を話していると結論づけて良さそうだ。
ノゲルド語のデータを最適化し、より詳細な表現が出来るようにする。
個体「イツキ」の外見はニンゲン族にごく近しい。
しかし<事項E12793>により「イツキ」がニンゲン族であると結論付けるのは論理的ではない。
よって「イツキ」を新種と定義する。
「君は名前なんて言うんだ?」
イツキがまた言葉を発した。
僕という個体に対する問い。その存在理由。
僕はよく再認識して答えた。
「僕は……生ける幻獣魔獣大全」
存在理由は、記録すること。