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塵箱庭~天界覇道~  作者: tomoji
5/7

ヒラオカの流儀

毎度いつもありがとうございます。

 真木達の眼からは一瞬の出来事だった。化け物とヒラオカの間に何かが砕けるような大きな物音と地面の揺れが同時に起こった。立っていられず三人はその場に倒れ込む。土煙の中からかすかに見える一人と一匹。先ほどと大して立ち位置は変わっていないように見える。しかし決定的に変わっていた事があった。それは化け物が携えていた巨大な矛が破壊されていた事だ。一応まだ持つ事は出来るが本来あった長さの半分程度になっていた。化け物は驚きはしたが直ぐに気を取り直し折れた柄を持ったまま構え直した。


ヒラオカはその爬虫類姿の化け物の様子を凝視した後何か思い出したかのような顔になった。

「思いだした。・・・お前確かベイルの部下だな」

「・・・フッ・・・フフ・・・覚えて貰えているとは光栄だ・・・。我は七天の大魔王ベイル様の軍団長が一人、バズ!・・・まさかこんな所で相見えるとは思わなかったぞ勇者ヒラオカ!」

「・・・・・・」

ヒラオカは得意に返事をすることなく右拳を握りしめそこに暖かい吐息を吹きかける。真木達からすれば拳骨をする前に見せる行為のように見えるがそれを見たバズはゆっくりと後ずさりし始めた。真木達から見てもその様子は恐れ、怯えているようだった。

「ぐッ・・・うぅ・・・・・・くそッ!」

一気に飛び掛かるバズ。その速さはその大きな腹からは想像出来ないスピード。真木達からはとても見えないものだった。

・・・そしてバズは灰になった。意味が分からなかった。確かにあの化け物から先に動いたように見えたのに奴の膝から上がまるで巨大な重機か何かに削り取られ赤い火花に姿を変えた。散った火花は宙を舞い辺りを赤く照らす。そしてバズの膝から下も白い灰となり徐々に消えていった。その場に立っていたのは右拳を振りぬいた男の姿だけだった。

「・・・破天(はてん)

ヒラオカはそう呟いた後服に掛かった土埃を払うと絶句している真木達に近づいてきた。

「す・・・すげ・・・ぇ・・・」

「・・・運が悪かったな。よりにもよってこんな所に迷い込むとはな。」

どうやら悪い人ではないらしい。そう感じた真木達は一縷の望みを懸けて目の前の男に助けを求める為に全力で土下座。頭を下げていく。

『お助け下さいぃ!!!!!!』

ほぼ全裸集団に言い寄られるヒラオカ。引く。あまり目線を合わせないように会話をする。

「・・・ここに迷い込んだんだ。何でそんな事になってるのか大方察しはつくが全裸になるまで地面に自分の持ち物落としていった奴はお前らが初めてだよ」

「へへっ、いやぁ・・・そんな」

林は照れた顔で頭を掻いている。

「いや褒めてねえよ」

真木は林の頭を押さえつけながらヒラオカから少しでも情報を聞き出そうとする。

「とにかく俺達急にこんなわけ分からん所に来てしまって本当に困ってるんです。何でこんな事になってるのか教えてください!」

「っていうか出口教えてください!」

真木と林に迫られてヒラオカは面倒臭そうな顔を見せた。しかし直ぐに咳払いした後真剣な顔つきになった。

「積もる話はここを出てからだ。ここは色々と面倒な場所なんだ・・・・・・・こいヤマモト」


ヒラオカが名前を呼ぶと同時に上空から清掃員姿の優男が飛び降りてきた。男は笑顔が張り付いておりいかにも裏がありそうな顔だった。

「いつもありがとうございます!スマイルのヤモマトです!ご用件はなんでしょうか」

「声が大きい。そこの男三人分の服」

「かしこまりました!秒で用意しますね!」

ヤマモトは突然体から可愛い「ピュー」という効果音をさせながら視界から消えた。と思ったら両手に買い物袋を抱えた状態で帰ってきた。

「ありがとう。もういいぞ」

「また何かあれば呼んでください!ではでは!」

そう言うとヤマモトは荷物を地面に置くとその場で空高くジャンプし壁の向こうに消えていった。ヒラオカを袋を手に取ると無造作に中身を取り出し真木達の方に放り投げた。

「とりあえずこれ着とけ。風邪引くだろ」

『ありがとうございます!』

「大きな声出すな」

真木達はお礼を言った後買い物袋から出された衣服を見てみる。そこにはさっきまで自分達が着ていた衣服だった。触ってみると洗濯されているだけでなくアイロンまでかけてあった。

「驚いている所悪いがさっさと行くぞ。移動しながら質問に答えてやる」

そう言うとヒラオカはさっさと歩いていく。それを真木達は着替えながら慌てて付いていく。


ヒラオカは特に分かれ道が目の前にあっても迷う素振りを見せずにずんずんと前に進んでいく。まるで最初から出口が分かっているようだった。真木は出来るだけ声を絞ってヒラオカに聞こえるように質問した。

「・・・ここって日本ですよね?」

「日本?・・・ああ、確かここをそう呼んでいる世界があったな。お前らどうやら本当に別の世界から来たんだな」

それを聞いて驚愕っ・・・、軽く混乱してしまう。真木の頭の中のどこかではまだここは自分達の知っている世界のどこかなのだと思っていたからだ。だが異質な迷路に迷い込んだり巨大な矛を振り回す化け物に殺されかけたり、ヒラオカの言う通りここは自分達の知る『世界』とは明らかに違う事を体感していた。こうなると何故自分達がこんな目に遭わされているのか、理不尽さに頭が痛くなってくる。


「昔はここにも国があったらしいが今はもうなくなってる。だから特に名前はないが知り合いはここを『第八界』と呼んでいるから俺もそう呼んでいる。なんでも地獄に最も近い世界らしい」

「・・・じ、地獄・・・?」

さっきの化け物やヒラオカとはちゃんと言葉も通じているし文化も近いものを感じる。昔は国があった・・・となるとここは未来の日本なのだろうか。それと地獄・・・。本気で言っているのだろうか。


真木が思考を巡らせているその時叫び声が聞こえてきた。人間の女性の叫び声だった。声の感じから察するとかなり近い所に複数人いるようだった。

「・・・どうやらここに迷い込んだのはお前達だけじゃなかったようだな」

「っ・・・・・そんな」

自分達だけじゃない?じゃあほぼ同時刻に多数の人間がここに迷い込んでいるのか?何故こんな事が起きているのか。助けにいった方がいいのは分かる。だが真木達ではどうにも出来ない。ここはヒラオカの判断に頼るしかなかった。

「ちょっと寄り道するぞ」


しばらくヒラオカに頑張って貰います。

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