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 春日さんの裸体を覗いたとして、真田 大地はサンドバックの刑に処した。

だが兄貴は高校時代レスリング部だった為、かなり撃たれ強い。私の廻し蹴りなど微塵も通用していないだろう。


「ぅぅ……腰が……腰が痛い……晶ぁ……お兄ちゃん、もう歳なんだから……」


演技が上手くなったな、兄貴。

私は騙されぬ! さあ立て! 続きだ!


「か、勘弁して! 演技じゃないって……! うぅ、妹から家庭内暴力を受けるとは……」


言いつつ立ち上がる兄貴。

なんだ、やっぱピンピンしてるじゃないか。


「そんなことより晶、あのお姉さんは誰だい? お兄ちゃん興味深々なんだが」


「残念だけど……兄ちゃんの手に負える相手じゃないよ。春日さんは超イケメンの元妻なんだから」


そう、今まで彼女居ない歴イコール年齢の貴方にはレベル高すぎてよ! と説明。

兄貴も理解したのか、しょんぼりする。


「まあ、そうか……で、なんでそんな人がここに?」


「んー……説明するの面倒くさ……いや、難しいんだけど……」


なんて説明したらいいのか。

とりあえず酔っぱらって家まで送ってもらって……そのまま元夫婦の喧嘩に巻き込まれて……


と考えていると春日さんが居間に戻って来た。

丁寧に兄貴に対してお辞儀しつつ


「あの、お邪魔してます。晶ちゃんのお兄さんですよね?」


「ぁ、はい、いつも妹がお世話に……」


いつもっていうか……今日初めて会ったんだけどな。

まあいいか。さて、どうするか。とりあえずお茶でも煎れるか。


「春日さん、梅昆布茶飲みます? 兄ちゃんも」


二人とも頷くのを確認しつつ台所へ。

棚からお茶っぱを出して急須へ入れつつ……って、お湯沸かしてねえ!

仕方ない、そこからか……ポットのお湯はいつのか分からんし……新しく沸かすしか……。


 そんなこんなでお茶を煎れるのに十分程掛かる私。

三人分のお茶を持って居間に戻ると、何やら兄貴が難しい顔をしていた。

むむ、どうしたんだ。


「お、晶サンキュー。今ちょっと春日さんから相談受けてたんだ。子供に会いたいけど、どうしたらいいのかって」


ほほう、その話で難しい顔してたのか。

しかし春日さん、相談する相手間違ってるぞ。言っちゃ悪いが兄貴は彼女すら出来た事ないんだ!


「悪かったな……。まあ、でも……難しいですね……」


兄貴は梅昆布茶を啜ると、ホッとした顔をしつつ


「話を聞く限り……圧倒的に春日さんが悪いですし……」


って、うおぉい! 空気よめ! そんな事あっさりと言うな!


「いやぁ、だって浮気して離婚して……それで今更子供に会いたいっていうのは虫が良すぎるって気もしないでもないですが……」


ちょ、兄ちゃん! ハッキリ言いすぎだろ!

や、やばい! 春日さんがまた泣いてしまう……! しかし春日さんは兄ちゃんの言葉に「おっしゃる通りです」と頷いていた。


むむ、しかし子供に会って何が悪い! 央昌さんも会わせてくれたっていいのに……!


「まあ夫側も面白くないだろ。浮気した妻が子供に会いたいって言って素直に会わせるのは」


ちょ……兄ちゃんもっと言葉選んで!

春日さんは悲しそうな顔で梅昆布茶を啜る。


「はい……その通りだと思います……全面的に私が悪いって事も理解してます……でも……一目でも……遠くからでもいいから……あの子を見たい……」


いや、なにもそこまで消極的にならんでも……。

母親なんだし、もっと堂々としててもいいと思うけど。


 しかし兄貴は腕を組み「んー」と唸る。なんだ、何か不満なのか。


「春日さん、全面的に悪いって言いましたけど……元旦那さんと喧嘩したんですよね。言い争いが出来るって事は……それだけの材料があるってことでしょ」


あぁ、確かに。しかし喧嘩の内容を聞く限り、原因は春日さんの浮気みたいだしなぁ……。

春日さんは湯飲みを握りしめつつ


「まあ、確かに……不満はありました……。いつも花京院さんは仕事で帰りが遅くて……夕食も一緒に食べれない日が続いて……」


あぁー、ナルホド。それはイカン。寂しすぎるでござるよ。

だが兄貴は


「でも仕事でしょ? 仕方ないんじゃ……」


その発言にイラっときた私。当然のように春日さんの肩を抱きつつ


「いや、兄ちゃんには分からないかもしれないけど……我々女性は寂しい時に優しくされないと殺意抱くレベルで憎しみ沸くから。兄ちゃんには分からないかもしれいけど」


重要な事なので二回言う私。


「い、いや、晶……寂しいの?」


いや、別に。

兄貴は結構泊まりに来るし、私も週一くらいで実家帰るから寂しくは無いが。


「でも兄ちゃん、考えてみてよ。結婚して子供も居るのに、一緒にご飯もまともに食べれないんだよ? 寂しくてまともな考えできなくなっても仕方ないでしょ」


なんとなく春日さんのフォローに回る私。

間違っては居ない筈だ!

だが兄貴は不満そうだ。


「んー……でも家庭を維持する為には働かないと……。夜遅くまで家族の為に必死に働いてて、いざ奥さんが浮気してたら……男も殺意抱くレベルで憎しみ沸くと思うぞ?」


そりゃ……そうか。そうだな……。

春日さんもそれは理解出来ているのか、小さく頷いた。


「私が悪いのは分かってるんです……でも……」


その後の言葉が出てこない春日さん。

兄貴も腕を組みつつ、考え込みながら……


「まあ、でも子供に会いたいっていう春日さんの意見を拒否する元旦那さんにも……何か理由があるかもしれないですよ。たとえば……蓮君に何かあったとか……」


それを聞いて春日さんは顔を真っ青に……ってー! 兄貴! だから言葉選べ!

そんな事いったら余計に不安になっちゃうじゃないか!


「え? いや、ゴメン……。と、とりあえず……もう一度冷静に元旦那さんと話し合ってみたらどうでしょうか。何だったら俺と晶も立ち合いますし」


おおぅ、兄貴も立ち会うのか。って……もしかして春日さんが好みのタイプだからか!?


「いや、無いとは言いきれないけども……。ほっとけないし……まあ、今日はもう寝ましょう。晶も大学あるだろ」


「ぁ、うん。じゃあ春日さん……私と一緒の部屋で……兄ちゃんはここで寝て」


言いつつ春日さんの手を取って寝室に連れて行く。


「兄ちゃん、おやすみ」


それだけ言って寝室の扉を閉める私。


長い一日がやっと終わった。

だがすぐに次の朝がやってくる。っていうかもう午前三時か。あと三時間くらいしか寝れぬな……。


「晶ちゃん……私床でいいから」


いや、床で良いからって……敷布団も何もないぞ。


「いや、じゃあ一緒に寝ましょう。私寝相悪いんで……アレかもしれないですけど……」


そのまま無理やりに春日さんをベットに引き込み、逃げれないように抱き付く。

むむっ……凄い良い匂いがする……。

おっぱいおっきいな……今夜は……贅沢な抱き枕が……。





 翌朝、午前六時。

携帯の目覚ましで起きた私。ムム……抱き枕……春日さんが居ない。

どこ言ったんだ……って、なんかいい匂いがする。

味噌汁の匂いだ……。


 ベットから降りて寝室から出ると、台所からトントン、と包丁でまな板を叩く音が聞こえた。

そっと台所を覗くと……春日さんがエプロンを付けて料理を……


「お母さん……?」


「……ん? あー、晶ちゃんー。おはよーっ」


むむっ、春日さん……なんだか雰囲気が最初に会った時に戻ってる。


「おはようございます……凄い良い匂いッスネ……」


「ぁ、ごめんねー? 勝手に使っちゃって……。もう出来るからー。大地さん起こしてきてくれるー?」


了解ッス。

そのまま居間に向かい、兄貴を起こしに……って、ソファーから上半身だけ落ちてる。


「兄ちゃん……おーい、朝だよー」


顔を平手で軽く叩きつつ起こす私。

兄ちゃんはモゾモゾと動きつつ……薄く目を開け……


「ん……あぁ、晶……なんかお前……可愛いパンツ履いてるな……」


ああん? 何言って……ってー! パジャマのズボンが無い! 一体誰が! 私のズボンを脱がしたのだ!


いや、私か。何か凄いデジャブが……。

つーかこのパンツは飛燕お嬢様のだった……。


「兄ちゃんのエッチ。このパンツは……なんと女子高生のパンツだぞ! しかも金髪ツインテールの!」


「おぉ、マジか。通りで……晶はもっと子供っぽいもんなぁ」


聞き捨てならぬ。

まるで普段から私のパンツを見ているみたいな言い分だな! 変態兄貴!


「いや、だってお前……実家に居る時から平気で下着姿でウロウロしてただろ。兄ちゃんもう慣れちゃったよ」


そ、そんな馬鹿な! 妹のパンツだぞ! もっと喜べ!


「喜んだら喜んだで問題だと思うが……」


兄貴とそんなやり取りをしていると、御盆に朝食を乗せて春日さんが運んで来てくれた!


「二人は仲良しさんですねー? はーい、ご飯ですよー?」


居間のテーブルへ朝食を並べていく春日さん。

むむっ! 味噌汁に白ご飯……私が酒のツマミように買ってきてた漬物に……


こ、これは!


「春日さん……これ肉じゃが?」


「あー、うん。ごめんねー? 冷蔵庫にあった食材適当に使っちゃって……」


い、いや、それは構わんのだけど……肉じゃがってそんな簡単に作れるのか?

春日さんちゃんと寝たのか!?


「寝たよー? もともと昨日はワイン飲んだあとに結構寝ちゃったしねー」


そういえばそうだった!

私も結構寝てたよな……。


「うおっ、肉じゃが美味え!」


って、兄貴既に食ってる! ちゃんといただきますってしたか!


「したぞ。っていうか春日さん料理めっちゃ美味いですね。ちょっと晶にも教えてやってくださいよ」


春日さんは「そんなことないですよー」といいつつ一緒に朝食を摂り始めた。

私も食べよう……味噌汁とか久しぶりや。




 久々に朝から腹一杯食った気がする。

むむっ、今日は何でも出来る気がしてきた。


「じゃあ行ってきます」


先に兄貴が出社する。春日さんは兄貴のネクタイを直しつつ、肩のホコリを払い……


「いってらっしゃいーっ」


満面の笑顔で……ってー! なんか新婚夫婦のようだ! なんてこった!


「い、いってきます! 俺頑張ってくる!」


おおぅ、兄貴……いつもに増して元気有り余ってるな。

さて、私も大学に行く準備せねば。


「晶ちゃん……今日もう一日……泊めて貰っていい?」


ん? 別に構わないぞよ。


「ありがとうっ、夕食も作るから! 楽しみにしててね! 何がいい?」


ふぉぉぉ! 私にも美人妻が出来たようだ!

うぅ、何にしようかな……ビーフシチューはこの前食べたし……


「じゃあ……コロッケ……」


「コロッケね、分かったーっ、楽しみにしててねー?」


うほぅ! 私今日頑張ってくる!

 そのままいつもの数倍やる気を出してマンションを出る私。


「コロッケーコロコロコロッケー、今日は大好きコロッケー、あっりがとう、モモルフー」


モモルフって何だ。

あれか、どこぞの乳牛か。


まあ、なにはともあれ今日は夜が楽しみだ。寄り道せずに帰ろう……って、ぁ、そうだ。

兄ちゃんにもLUNEで知らせとくか。


「えっと……今日は春日さんがウチでコロッケ作ってくれるよ……っと」


数秒後……


『マジでか! 絶対行く! 寄り道せずに帰るから!』


おおぅ、凄い食いつき。

春日さんの肉じゃが美味しかったからな。今日はポテト祭りや!

ふふぅ、大学終わったら何かワインでも買って……


と、考えながら大学に向かう私。


その時は思いもしなかった。


まさか……あんな事になるなんて。


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