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 突如、私の家へ来訪した家出娘、興梠(こおろぎ) 月夜(つくよ)ちゃん。

何故か熊の着ぐるみを来ている。っていうかそんな恰好できたのか、君。


「そうクマ。なんといってもクマだからクマ」


 いや、人間でしょう、君は。

っていうかどうやって来たん?


「バスと電車で……クマ」


 マジか。おまわりさんに職質されなかった?


「大丈夫クマ。お正月はどんな格好してても許される日クマ」


 ハロウィンと間違えてないか、この子。

まあいい、とりあえず親御さんに連絡しないと……心配してるだろうし、この子はまだ高校生だ。未成年を親の承諾なしで泊めた日には……未成年略取で捕まってしまう!


 そのまま携帯を取り110番しようとする私。

しかしクマっ子、月夜ちゃんに携帯を奪われてしまう!


「何する気クマ?!」


「いや、警察に……」


「大丈夫クマ! 私、ちゃんと手続きは済ませてきたクマ!」


なんの手続きだ! いいから携帯返しなさい!


「いやクマ! 私は大丈夫クマ!」


 クマから携帯を奪い返そうとドタバタする私!

しかし、その時……琴音さんが自分の携帯で何処かに電話を!


「あー、もしもし、お久しぶりですー、柊 琴音ですー。あー、はい。興梠さん家の娘さん……はい、はい、今私の友人……っていうか真田さんの娘さんの家に……はい、はい、そうですそうです」


 ぁっ、なんか興梠家に電話かけてるみたい。

っていうかあんなド田舎の村にも電話あるんだ……当たり前か。


「ちょ! お姉さん何勝手にやってるクマ! っていうか貴方誰クマ!」


 琴音さんは一通りの電話を終えたのか、携帯をポッケにしまいつつ……抗議するクマ娘、月夜ちゃんに手招き。素直に月夜ちゃんは琴音さんの隣へと、チョコン……と座る。


「私は……義龍村、二大名家の一つ! 柊家の長女なり! 興梠家の娘よ、これからお母さん、こっちにくるらしいから」


「……?! 柊家の長女……! っていうかお母さんくるクマ?! や、やばいクマ!」


 二大名家って……あぁ、村長から聞いたアレの事か。真田家と柊家が確かうんたらかんたら……


【注意:詳しくは第(49)話を参照してね!】


 というか月夜ちゃん……なんで家出なんてしたん?

こんなド正月に……。


「むむ、よく聞いてくれたクマ……お母さん、酷いクマ……」


 ふむ、事情を聞こうじゃないか。何があったんだい?!


「実は……お母さん、もう高校生なんだからお年玉なんていらないよねー……とか言い出して……うぅ! 高校生だからこそ、お年玉は貴重な収入源クマ!」


 ……あぁ、成程……


 私と琴音さんは目を合わせ、コクンと頷く。

そのまま二人で両サイドから、クマの着ぐるみを着た月夜ちゃんを抱きしめた!


「わぁぁぁ! なにするクマ! うごけないクマ!」


「月夜ちゃん可愛い! 何その理由! そんなしょうもない理由で家出する高校生……初めて見たわ!」


「しょうもなくないクマ! 私は大真面目クマ!」


 あ、そういえば……なんで私のマンション知ってるの?


「あぁ、それは私の情報網を駆使したクマ。っていうか紅葉兄(もみじにぃ)に聞いたクマ」


 紅葉……あのチャラ男か!

奴め、私のプライバシーをペラッペラと喋りおって! まあ、月夜ちゃんなら別に構わんが。


 ところでいつまでその着ぐるみ来てるつもりだ、君は。


「うぅ、そういえばこの部屋暑いクマ……脱ぎたいクマ!」


脱げ脱げ。




 ※



 クマっ娘こと月夜ちゃんは、着ぐるみの下は見事に下着のみだった。

ホントに捕まったらどうする気だったんだ。おまわりさん困ってしまうわ。


「ふぅ、すっきりクマ」


 月夜ちゃんに適当な服を貸し、シャワーも浴びさせた私。

超可愛い女子高生、興梠 月夜が私の部屋に遊びにきていると今更実感する私!

 ふぉぉぉ、モノホンの女子高生! 抱き着きたい!


「お姉さん、ちょっと怖いクマ」


 グサっと私の胸に突き刺さる何か。

うぅ、別にいいじゃない! 女同士の友情を深めようぜ!


「それより……お願いがあるクマ! 私を……数日、この家に泊めて欲しいクマ!」


 何を言い出すんだ、この子。

君はまだ高校生でしょうが。今は冬休みだろうが、学校始まったらどうするんだ。


「だから冬休みの間だけでいいクマ! もう私、あんなド田舎での暮らしに耐えられないクマ!」


 そんな事を言われてもなぁ。

さっき琴音さんが月夜ちゃん家のお母さんに連絡しちゃったし……迎えくるぞ?


「そ、それは……そっちの柊家のお姉さんからお断りの電話入れて欲しいクマ! と、とにかく……今日は家に帰りたくないクマぁ……」


 琴音さんは私が煎れたコーヒーを飲みつつ、月夜ちゃんの要請に腕で大きく×印を作り返答。

それを見た月夜ちゃんは膝から崩れ落ちてしまう!


「燃え尽きたクマ……もう……ダメクマ……」


「いや、まあ……理由次第なんだけども……別に冬休みの間だけなら……」


「ホントクマ?!」


 私の言葉にテンション高めになる女子高生。

で? 理由を言え、理由を。


「と、都会で買い物とか……色々したいクマ……」


 可愛い! なんだこの可愛い理由!

しかし残念……岐阜市を都会とか言った日には……本当の都会にすむ人々に鼻で笑われてしまう。っていうか、それなら高山市でも十分だろ。あっちの方が風情あるぞ。


「飽きたクマ」


「あぁ、そう……」


 まあ、私は別に冬休みの間だけなら全然構わんが……琴音さんは依然、ダメっと腕で×印を作ってくる。


「なんでクマ! 琴音お姉さん、私だって少しくらい……遊びたいクマ! もっと女子高生みたいな事したいクマ!」


 琴音さんは溜息を吐きつつ、再び月夜ちゃんに手招きして自分の隣へと呼び寄せた。

自分の隣に座る月夜ちゃんへと、琴音さんは……いきなりチョップ!


「いたいクマ!」


「おだまり! 私だって高校の時は勉強漬けだったんだから! 学生の本分は勉強なり! 諭吉さんも仰られておる!」


 諭吉さんって……一万円の人か。確か学問に入ったら大いに学問しろって言ってたな。


「ぅー……でも私、勉強苦手クマ……それなら私に勉強教えてほしいクマ! 勉強合宿クマ!」


 そうきたか。

まあ、琴音さんは元々医者を目指していたくらいだし……勉強出来るだろう。私も一応獣医の大学だけど……高校の時に何を習ったかなんて……覚えてねぇ……


 しかし琴音さんは納得するだろうか。

勉強するしない以前に、この子は家出してきているのだ。初めからそのつもりで来たのならまだしも……親御さんも心配してるだろうし……。


「うーん……昌ちゃん、今日って執事喫茶やってる?」


「えっ、まあ一応開いてますよ。コックは敏郎さんだけですけど……央昌さんもヒマだからって、確か……」


 しかしこんな正月に執事喫茶が流行る筈も無く……恐らく客など居ないだろう。


「じゃあ、そこに拓也きゅん呼び出して……月夜ちゃんに勉強教えてもらおう」


えっ、なんで拓也?

別に貴方が教えればいいじゃない。


「いやいや、現役の方がいいでしょ。拓也きゅん、学年十位以内には常に入ってるから」


な、なにぃ! 拓也って……そんなに頭良かったの?!




  

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