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 前回のあらすじ!

 

 琴音さんとキャッキャウフフしていた私。

ナンパ師やら犬やらが邪魔してきたが、私と琴音さんの仲を裂く事など出来ない。

しかしその時……聞き覚えのある男二人の叫び声が聞こえてきたのだった。




 ※



 

 男の二人の叫び声。

私と琴音さんは叫び声の主達、兄貴と明正さんを確認!

 二人で何してんだ? もしかしてボーイズラブ的な……


「わん!」


「わぁぁぁ、まだくるぅ!」


 って、犬に追いかけられてる!?

しかもまたまた大型犬だ! そうか、兄貴の奴……私に食い物渡す時……犬のぬいぐるみも一緒に……。


迂闊な兄貴め! 


 というわけで琴音さん、避難しようか。


「えっ?! い、いいの?!」


「いいですたい。男二人は犬と戯れてるだけなんで」


 ワンコも嬉しそうに追いかけてるし問題ない。

まあ、兄貴達は死にそうな顔してるが。


「あ、昌! 助けて!」


げっ、こっちきた。


「あの犬達に追いかけられて……ぬいぐるみ! ぬいぐるみは?!」


「ちょっと待て兄ちゃん……犬……達?」


 そっと兄貴の後方を確認。

するとそこには……グレートピレニーズ、ゴールデンレトリバー、セントバーナード、秋田犬、サモエド、チャウチャウ……計六種類、六匹のワンコ達が集合していた! なんてこった! 圧巻すぎる!


「昌! ぬいぐるみ……」


「え?! あぁ、ここに……」


 しかしぬいぐるみは一個。

これで間に合うのだろうか。大型犬六匹に対して……。


「明正君! こっちだ! 昌の近くに!」


「な、なんで?! どうなってんの?!」


 あぁ、明正さんも顔を真っ青に、死にそうな顔してる。

私はとりあえずと、ぬいぐるみを巫女服の胸元へ! そのまま、琴音さん、明正さん、そして兄貴と輪っかを作るように手を繋ぐ!


「えっ、これなんの儀式?」


 琴音さんは首を傾げるが、何の儀式かなんて私が聞きたい!

私は今、何をしているんだ! なんか巫女服きてるから余計に儀式感が増してるし!


「わん!」


 その時、犬達が私達に迫ってくる!

なんてこった! こっちは、この意味わからんヌイグルミ持ってるのに!

やはり六匹に対してヌイグルミ一個では……


「クゥーン……ハッ、ハッ、ハッ」


 しかしワンコ達は私達の周りにくると、何故か大人しくお座り。

そのままエサを求めるようにつぶらな瞳で見つめてくる。


「まさか……たこ焼き、イカヤキ、カステラ、串カツ、焼きそば、リンゴ飴などなど……その他の出店料理に釣られて……」


 なんてこった! しかし犬達にこの出店料理はダメだ! 味が濃すぎるし油っぽいものばかりだ! お腹を壊してしまうぞ、犬達!


「クゥーン……」


 しかしつぶらな瞳の犬達のおねだり攻撃が……私の心のクリティカルヒット。

まずい、このままではカステラあたりをあげてしまいそうだ。ど、どうしよう……


「とう!」


 その時、私達の頭上を誰かが飛び越えた! なんてジャンプ力! 天狗か?!


「ワンコ共。狙うなら私を狙……って、ぎゃぁぁぁぁ!」


 蓑虫のような恰好をした女性。あぁ、あの人もしかして、ワンコ心ありますって出店だしてた人か。一目散に逃げて行ったけど……ワンコ達も後を追って行ったけども……大丈夫か?


「昌さん!」


 その時、ハッピを着た拓也が駆けつけてきた!

むむ、あの子犬はどうしたん? というか君、もう犬に追いかけられないの?


「大丈夫です。子犬は飼い主の元に戻りましたし、僕も呪い……いや、ワンコ心は解除してもらいました」


 ふむぅ。やっぱり呪いだったのか。

まあいいや。これで一見落着……


「あぁ、それで明正君、なんか話あるって言ってなかったっけ?」


 ってー! 兄貴!

そうだ、それだ! 明正さんと琴音さんが……キッスをしていた件が残ってたんだ!

 不味い、兄貴はその事について何も察していない!

明正さんも恐らく兄貴と二人きりで白黒つけたかったんだろう。しかしこの状況では……


「……大地君。琴音の事……どう思ってる?」


 その時、明正さんが堂々と……そんな事を言い出した。

いや、不味くないか、コレ。兄貴は……私や拓也、そして琴音さんが居る前で、素直に物が言えるだろうか。 


いやいや、大丈夫に決まってる。なんていっても私の兄貴だ。ここでイモ引くような……


「ど、どどどどどうって……え、えっと……な、なに、なにが?」


 めっちゃキョドってる!

しっかりしろ兄貴! 明正さんは勝負を仕掛けてきてるんだ!

 恐らく琴音さんは明正さんにキスされたことで、流石にその気持ちに気付いているだろう。

そして琴音さんは超が付くほど優しいし……恐らく後輩想いだ。そんな人が本気で迫られたら首を縦に振ってしまうかもしれない。

 

 だからここで兄貴の存在、そしてその意志が必要になってくるわけだが……。

ダメだ、兄貴はテンパっている。琴音さんの事を好きなんて……とてもじゃないが言えないだろう。


 そうなったら……琴音さんは……明正さんの方へ……


「大地君、俺は琴音の事が好きだ。もう大学時代から……琴音の事を想い続けてきた。コイツの両親が亡くなって大学を辞めたあとも……ずっと、ずっと……琴音だけを見てきた」


 って、ぎゃぁぁぁぁ! 明正さん! ここには私とか拓也とかもいるのよ! 思いだして! この世界は貴方達だけじゃあないの!


 やばい、不味い! 明正さんは本気だ! 今この場で……琴音さんを奪おうとしている!

いや、奪うも何も……別に琴音さん、兄貴の物じゃあないんだけど。


「…………そ、そっか……明正君……そんなに琴音さんの事、好きだったんだ……」


 そのまま……兄貴は頭を掻きむしりながら、観念するように……明正さんを正面から見た。


「俺は……うん、俺も……好きだと思う。琴音さんの事が……好きだ。守ってあげたいと……思う」


 お、おぉぉぉぉ! 兄貴! 私は感動したぞ! まさかここでそんな事が言えるなんて!

一方、当然の事ながら琴音さんの顔は真っ赤だ。もう夕日の如く。またはトマトの如く。


 しかし、男子二人が勇気を振り絞ってお互いの気持ちを告白したんだ。

もうここは……琴音さんが決めるしかない。


「あ、あうぅぅうぅぅぅ」


 だが琴音さんは頭がオーバーヒート気味だ。もう真夏の密室で延々とオンラインゲームやり続けたPCのように。このままではフリーズしてしまうだろう。窓を開けるかエアコンを付けないと……。


 しかしここで私と拓也に、しゃしゃり出る権利など無い。

流石にこればかりは……当人達の問題だ。答えを出すのは……琴音さん、あなただ!


「リンゴアメ……」


ん?


「昌ちゃん! リンゴアメをおくれ! 糖分補給!」


「え?! あ、はい」


急いでリンゴアメを開封し、琴音さんの口元へ。

琴音さんは小さな舌をだし、ペロペロ舐めている。なんかエロい。そして私の手に伝わってくる振動。


 なんか餌付けしてる気分だ。


「……二人共……ごめん……ちょ、ちょっと……考えさせて……」


 琴音さんはついにフリーズしてしまう。

兄貴と明正さんも、そのまま無言で……むむ、なんか兄貴がたこ焼き開封しだした。


「明正君……ここは……大食い対決といこうじゃないか」


 おい、何言い出すんだコイツ。

明らかに自分に有利な勝負言い出した! いや、っていうか兄貴、初詣に来る前に……餅十個食ったよな。それでもまだ入るのか?


「受けて立とう。俺は……ハラペコなんだ」


 いやいやいやいや! お前等落ち着け!

そんな対決で決めてどうする! 決めるのは琴音さんよ!


「ま、まってください!」


 その時、拓也が珍しく声を張り上げ待ったをかけた。

そのまま……琴音さんの車椅子を引き、二人から離す。


「姉さんは……姉さんは僕の姉さんです! 誰にも渡しません!」


 こともあろうに拓也も参戦!

琴音さんを後ろから抱きしめた! 


「はぅぁ! 拓也きゅん……! そうだよ、私は拓也のお姉ちゃんだよ!」


 ぁ、これ拓也も混乱してるパターンだ。

どうしようかと悩んでるうちに、とりあえず言いたい事言ってるだけだ。

 あかん、これでは収集付かん。ここは……私が……


「男三人共、落ち着け。とりあえず……お前等全員、琴音さんから離れよ。琴音さんには考える時間が必要だ! というわけで……琴音さんは私のマンションで預かる!」


 こうして……私は自分から泥沼へと嵌る事を選んだ。





 ※





 《数時間後! 昌のマンションにて》


 あれから兄貴の車で伊奈波神社から帰宅した私達。

ちなみに巫女のバイトはつつがなく終了した。そんなに働いてもないのに、お給料まで頂いてしまった。


 今、私のマンションには琴音さんと私のみ。

振袖は兄貴に実家まで持ってってもらい、私は今、ザ・部屋着で琴音さんと共にお笑い番組を眺めている。


「あははは! 昌ちゃん、パンダさんがシロクマさんになっちゃったよ!」


「懲りないですねー! こいつら!」


 今現在、テレビの中ではシロクマとパンダの漫才コンビがバイを投げ合うゲームをしていた。シロクマが投げたパイがパンダの黒い部分に見事に命中。妙に丸いシロクマが誕生した。


 琴音さんは無理やりに明るく振舞っているのだろう。

それは見え見えだ。先程から妙に携帯を気にしてるし、テレビを見て笑うタイミングが微妙にズレている。きっと明正さんと兄貴の事で……


 その時、私の家のインターホンが鳴り響いた。

むむ、誰じゃ? もしかして我が妻、春日さんか?


 いや、確か正月は里桜の家で過ごすって言ってた筈だし……となると拓也かしら。

きっと姉が居ない家に耐えかねて訪ねてきたに違いない。可愛い奴め!


「はーい」


 玄関へと向かい、一応覗き穴を確認……って、クマ?

覗き穴から見える光景に一瞬固まる私。熊が私の部屋の前に立っている。そして再びインターホンに手を伸ばし、ピンポーン……と鳴らした。マジか、クマが……インターホンを使いこなしてる。


「って、んなわけねえ。ど、どちらさまですかー?」


 扉の前から呼びかけてみると……微妙に懐かしい声が聞こえてきた。


「わ、私クマ……家出してきたクマ……どうか、中に入れて欲しいクマ……」


義龍村のクマッ子こと……興梠 月夜ちゃんがそこにいた。


って、家出って……正月にか?!



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