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 真っ白なモフモフ・サモエドに、プールへと頭から突っ込まされた拓也。

上半身はほぼ水に浸かり、私も拓也を引き上げる時に振袖を少し濡らしてしまった。

まあ私はともかく……拓也はすぐに着替えないと風邪を曳いてしまう!


そんな時、私達の目の前に現れたのは……あのクリスマスパーティーで出会った藤堂さんだった。



 そんなこんなで藤堂さんの後に着いて歩き、とりあえず神社の事務所らしき場所まで来た。

ふぉぉぉ、巫女さんが沢山居る! なんでこんなに居るの?


「皆バイトなのー。この中では私が一番年上かしら……」


ヤヴァイ。なんか敵兵が勝手に自分で地雷を踏んだって感じだ。


「はぁ……三十代前半で独身のまま……正月で一人家で過ごすのもキツイのよ……」


ちょ、ちょっと! そんなヘヴィな話する前に拓也を着替えさせてあげて!


「ぁ、そうだったわ。というか紗弥さんも振袖濡れてるじゃない。乾かしてあげるから。貴方も着替えなさい」


いや、私は別に……大丈夫でござるよ。


「そんなわけには行かないわ。飛燕家の長女様なんだから! 私が怒られてしまうわ、社長に!」


え、えぇ?! 社長って……飛燕家ってそこまで入り込んでるのか!


 ほぼ無理やり、座敷っぽい部屋に連れてこられ振袖を脱がされる私。どうでもいいけど拓也が……目の前に居るんですが。まあいいか……私は結構拓也には見せてるし……


「よ、良くないです! っていうか何で僕までこの部屋に連れてこられてるんですか!」


「あら、あなた男子だったの? 可愛い顔してるからてっきり……」


いや、さっきから私、ワリと「拓也、拓也」って連呼してるぞ。「」使ってないけど。


「それなら文句は作者に言って欲しいわ。じゃあ拓也君、はい、ジャージ」


「ど、どうも……」


え、そんだけ?! 拓也寒くない?


「そうねえ……はっぴならあるけど……」


いや、ハッピって薄すぎるだろ。それ一枚着た所で……


 そのまま「じゃあ一応……」とはっぴも受け取る拓也。

私は私で下着姿に剥かれ、目の前に巫女さんの服が広げらる……ってー!


「ちょっと待たれよ! 藤堂さん! それバイトさんとか神社の関係者が着る物では?!」


「これしかないのよ。大丈夫、紗弥さん胸無いし、似合うでしょ」


なんか凄い胸に突き刺さった。胸だけに。


「というか、パーティーの時と随分雰囲気違うわね。やっぱりあの時は猫被ってたのね」


「ま、まあ……」


しまった……勢いでいつもの私のままだった。

というか、そんなホイホイ人格変えれんわ。チャラ男じゃあるまいし……。


「まあ心配しないで。私も今は素だから。ほらほら、飛燕家の方に恥かかせると私マジでヤバイんだから。着替えた着替えた」


「うぅ……はい……」


渋々巫女さんの服を着る私。

こんな簡単に神聖な服を着ていいのだろうか……。なんか怒られそう……。


「じゃあちょっと臨時巫女として見回りしてくれる? さっきから迷子が続出してるのよ。今日は妙に犬も多いし……」


あぁ、それなら早く……あの「わんこ心あります」とかいう出店撤去させた方が……。

まあ、あんな怪しい店行くの私達くらいだろうけど……。


「はい、完成。じゃあ、あの男の子と一緒に見回りしててくれる? 関係者には話通しておくから。何かあったら電話してね。これ私の番号ね」


「は、はい……了解ッス」




 ※




 さて、いきなり予想外な展開になった。

まさか巫女さんとして働く日が来るとは……。


「昌さん……似合ってますよ」


「お、おおぅ、ありがとう」


……?

拓也……てっきり『昌さんだけずるぅい! そんな可愛い恰好して!』とか言うと思ったのに。

なんか予想通りのリアクション来ないな。


「じゃあ見回り行きますか。姉さん達にも事情を説明しないと……」


「あぁ、そうだな。というか時間とか聞いてないけど……いつまで見回れば……」


と、その時早速私達の元に一人の女性が現れた!

見るからに焦っている。もしかして……


「あの、すみません……! 娘が迷子に……」


あぁ、やっぱり!

ど、どうしよう、いきなり来た!


「えっと……服装とかは……」


「白いセータにスカートで、身長はこのくらいで……」


と、自分の腰辺りを示す母親。

ふむぅ、白いセーターにスカートね。髪型は?


「後ろで三つ編みに……あの、迷子センターとかに行ってないでしょうか……」


むむ、迷子センター?

そうだよな、当然あるよな。ちょっと早速だけど藤堂さんに確認してみるか。


 先程渡されたメモに書かれた電話番号へとコールする私。

藤堂さんは速攻で電話を取ってくれる。むむ、対応早い人好きよ。


「あの、迷子センターに今子供って居ますか?」


『勿論居るよ、どんな子?』


むむ、まるでこちらの状況を把握しているかのような返答が帰ってきた。

出来る女は好きよ!


「えっと……白いセーターにスカートで、後ろで三つ編みにしてる女の子です」


『……女の子は預かってないね。親御さんに、担当者に探させるって伝えてくれる?』


了解ッス、と電話を仕舞い、言われた通り母親へと伝える私。


「そ、そうですか……申し訳ありません、お手数おかけします……」


「いえ、私達も急いで探すので……」


よし、拓也よ、早速だが捜索開始するぞ!


「分かりました。手分けした方がいいですよね。僕アッチに……」


「いや、拓也……ちょっと待て。あの占い師に言われた事を思いだすんだ」


そう、拓也はあの怪しい蓑虫にこう言われたのだ。


『その美少女から離れてはならぬ』と。


「そういえばそうでしたね……でもそんな事言ってたら……」


「まあ聞け。私も、わんこに気を付けろと言われたんだ。そして今日は犬が多い。もしかしたら、女の子と犬はセットで居るかもしれん」


犬だ、犬を連れている人が、もしかしたら保護してくれているかもしれぬ!

だから探せ! 犬を!


「わ、わかりました」


 

 

 そんなこんなで迷子の女の子を捜索開始。

白いセーターに三つ編みの女の子か……これだけ人居ると探すのも一苦労だな……


「あれ、昌?」


むむ、誰じゃ? と振り返ると、そこに居たのは……兄貴!

なんだ、意外と速かったな。車停めれたのか。


「なんとか……それより困った事が……」


「……? どうしたの……」


と、よくよく兄貴を観察すると違和感に気が付く。


え、なんで犬抱っこしつつ女の子と手繋いでんの。

か、隠し子?!


「なんでお前までその反応なんだよ! 迷子なの! 犬もなんかセットで来て……」


ふむぅ、成程……と、兄貴と手を繋いでいる女の子を見る。

むむ? 白いセーターに……三つ編みの女児。


こ、この子だ……絶対この子だ! 間違いない!


「兄ちゃん! ナイスだ! 保護しててくれたんだな!」


「んぉ? う、うん。というか、なんで昌……巫女さんなの?」


それは……かくかくしかじか。

ホニャラララン、ホニャランポメラニアン……というわけじゃ。


「成程。そういう事か……じゃあついでにこの子犬もお願いしていい?」


言いながら柴犬の子犬を差し出してくる兄貴。

ふむ、可愛い子犬でござるな。引き受けたでござる。


 と、兄貴が子犬を手放した瞬間……


「ワン!」


……ん?! 兄貴の背後からラブラドールが凄い勢いで走ってくる!

なんだ、この凄い見覚えのあるシチュエーションは!


「ちょ、兄ちゃん、まさか……!」


よく見ると女の子が、これまた凄い見覚えのあるヌイグルミを抱っこしてる!

しかも凄い大事そうに! やばい……女の子から奪い取るのは……ちょっと気が引ける。


いや、待てよ……


「兄ちゃん! この子抱っこして!」


再び兄貴へと柴犬の子犬を抱っこさせる!

するとラブラドールはピタっと止まり、トコトコと飼い主の方へと帰っていく。


「兄ちゃん……まさかあの出店に行ったの?! わんこ心とかいう……」


「あ、あぁ。もしかして昌達も……」


不味い。あんなのに釣られてワナにかかる間抜けが私達以外に居たとは。

しかしどうしよう……女の子からヌイグルミ奪えないし……奪ったら泣きそうだし……。

だからと言って、兄貴にいつまでも柴犬を抱っこさせるわけにも……。


「昌さん! 僕に妙案が!」


その時、拓也が持っているヌイグルミを兄貴へと渡し、代わりに拓也が柴犬を受け取った!

いや、状況あんまり変わってないんだけども。ど、どうすんの?


「僕があの出店にもう一回行って……ぬいぐるみを貰ってきます。昌さんは、その女の子をお母さんの所に連れて行ってあげてください」


いや、しかし……君は私から離れるなとも言われているんだぞ!


「大丈夫です……僕に何かあったら……姉さんには、こう伝えてください……拓也は最後まで……諦めなかったって……」


何分かりやすいフラグ立ててんだ!


「ここは僕に任せて行ってください!」


待て! それ以上フラグ立てんな!


「この任務が終わったら……僕、たこ焼き買うんだ……」


止めろ! たこ焼きなら今からでも買ってやるから!


「というわけで行ってきます! 僕は変な占い師になんて負けません!」


あぁ、拓也! 拓也ぁ!

 そのまま颯爽と子犬を抱っこしたまま、あの怪しい出店へと走る拓也。

なんてこった……拓也が自ら犠牲になるなんて……。


「どうでもいいけど昌……その子早く連れてってあげた方が……」


「ぁ、うん」





 ※





 《その頃……琴音、明正の二人は》


 あの女の子をトイレに連れて行った後、大地さんは迷子センターに連れて行くと、再び私達と別れた。


「はぁぁ、大地さんと折角会えたのに……」


思い切り溜息をつきつつ、今は明正と一緒に一通りの少ない隅っこで待機している。

 目の前を歩く人々。つい、その足に目が行ってしまう。

私もリハビリを続ければ……普通に歩けるように……


「琴音、大地君とは……何処まで行ってんだ?」


「……はぁ? 何よ、いきなり……」


「いいから……。教えろよ」


なんだ、こいつは。

いきなり大地さんとの関係を暴露しろというのか?

まあ……暴露する程の関係でも無いんだが……。


「別に……まだデートらしいデートも出来てないけど……大地さん、結構奥手だからなぁ……。まあ、私がこんなんだから仕方ない……」


「仕方なくなんて無えよ……俺だったらお前を……何処にでも連れてってやるよ」


……あ?

なんだ、いきなり……。


「何よ、あんた……もしかして私に気でもあるわけ? あのねえ、そういう冗談は……」


「冗談じゃねえ……」


正面に回り込んでくる明正。

そのまま、車椅子の私と目線を合わせ……


「……え?」


顔を寄せ、唇を合わせてくる。


……?


え、ちょっと……今何が……何が起きてる……?


「俺じゃあ……駄目なのかよ……」


「あ、明正……?」


泣きそうな後輩の顔。

今まで明正と過ごした日々が脳内で高速で再生される。


そういえば、コイツ……私が困ってると何故かいつも……


「琴音……好きだ」


ドストレートに告白してくる明正。

いや、ちょっと待て……。

いきなり、そんな事言われても……。


「ずっと……琴音の傍に居たい……」



 泣きそうな顔で、訴えるように。

私の、生意気な後輩は想いを伝えてくる。


あぁ、私……卑怯だ。


頭が真っ白で……何も……考えられない……。


「明正、私は……」


と、その時……明正の後ろに、行き交う人々の中に一人の少年が立ち尽くしていた。

私の可愛い弟……拓也だ。


拓也はまるで「何してるの?」と目で訴えてくる。


「……拓也」


「……え?」


私が拓也の名前を口から出した事で、明正も気づいた。

明正に気づかれた拓也は、一目散に走り去ってしまう。



まるで、私の事を裏切り者だと……言わんばかりに……




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