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 実家にてお雑煮を頂く私。

兄貴だけ丼で食っている。私と母は普通にお椀。


 正月と言えばお雑煮……そしておせち料理……そしてそして……


『だーかーらー! 俺はパンダじゃねえ! シロクマだっつってんだろ!』


『いいや! パンダだって黒い所塗ればシロクマだ! お前、パンダって漢字で書くと「おおくまねこ」だぞ! 熊と猫だぞ?! ほら!』


『何がホラだ! 意味分からんわ!』


そう、お笑い番組である。

朝から夜までテレビはバラエティーづくし。

兄貴も私もゲラゲラ笑いながらお雑煮を食い続けているが……


「あんたら、餅喉に詰まらなかすなや」


うふふ、心配し過ぎでござるよ、母上。

私はちゃんとカミカミして餅を……ふぐぅ!!


「ほらみい! 水! 水!」


「だ、大丈夫……」


なんとか飲み込みつつ、今度はおせち料理に手を伸ばす私。

母お手製のおせち料理……むむ、伊達巻を頂こうか。


「この伊達巻も手作りなん?」


「それは買ってきたヤツ。昔は自分で作ってたけど……もうめんどいなぁ」


ふむぅ。

まあ母も歳だ。何から何まで手作りなんて無理か。


むむっ! 黒豆! 黒豆は食べなければ!

自分の年齢分食べるんだっけ……?


「そういえばアンタら、初詣行かんのか?」


初詣……と、兄貴をジっと見る。

すると兄貴は目を逸らしつつ、既に完食したお雑煮のお代わりを求めてきた。

餅五個も食っといて……まだ食う気か。


「今神社行けば……可愛い着物の女の子仰山おるやろうに」


母は兄貴にナンパさせようとしている!

だ、だめだ! 迷惑条例違反ですわよ!


 そのまま母は兄貴のお雑煮を作りに。

ちなみに餅はまた五個。どんだけ食う気だ。


「あー……初詣か……」


兄貴は溜息をつきながらエビチリを摘まむ。

行きたいなら誘ってやろうか? 琴音さんを!


「いや、で、でも……迷惑じゃないかな……」


「兄ちゃん……むしろ琴音さん待ってるかもしれないよ。っていうか聞くだけ聞いてみようよ。嫌だったら嫌って言うだろうし」


「そ、そんな……嫌って言われたら俺ショックで寝込んでしまう!」


何言ってんだコイツ。

ああもぅ……メンドクサイ。

というわけでLUNEで簡易メッセージ送ってしまえ。


「あぁ、昌! 待って、待って!」


「もう送っちゃったわ。観念しな」


「おぅふぅぅぅ!」





 ※





《一方、柊亭》


 拓也の作ったお雑煮を食べつつ、バラエティー番組を見ながら爆笑する私。

シロクマとパンダの漫才コンビだ。羽根突きをしつつ、だんだんシロクマがパンダになっていく。


「あはははは、拓也きゅん! シロクマさんがパンダさんに!」


「ね、姉さん、そんなに面白い? なんか凄いシュールなんだけど」


何を言う。シロクマがパンダになっているんだぞっ。

 爆笑する私を冷たい目で見てくる拓也。

あぁ、なんだかその目がまた……


「危ない! 姉さん危ないから! その考え!」


「お姉ちゃんの心を読まないでおくれ、拓也きゅん」


その時、家のインターホンが鳴った。

むむ、誰じゃ……って、明正か。


「はーい」


そのまま拓也は玄関へと明正を出迎えに。

ちゃんとデザートは買ってきたのだろうか。

と、ふと携帯を見るといつのまにか簡易メッセージが届いていた。


お、昌ちゃんからだ。


『あけましておめでとうございます|д゜)b 兄貴が初詣行きたい行きたい五月蠅いんですけど、どうですか?』


その瞬間、ガタっと机を揺らす私。

な、なんだと! 大地さんが……初詣に行きたいと?!


いく、絶対いく! 行こう!


「おーす、あけおめー。来たぞー琴音」


「あぁ、明正。来てもらって早速だけど、車出せ」


「お前……一般常識って言葉知ってるか?」


知らん!

初詣に行くぞ!


「ちょ、姉さん……来てもらってそんなすぐに……」


「だ、だって……大地さんが初詣行きたいって言ってるんだもん! 拓也きゅんも行くよね? 昌ちゃんも行くって言ってるし……」


「行きます」


うむ。いい返事だ。拓也きゅん。


「……大地さん?」


明正は机の上にアイスクリームを置きつつ、私の携帯をのぞき込んでくる。

なんて失礼な奴だ! 人のプライバシーを覗き見るな!


「大地さんって誰? 拓也君」


「あぁ、えっと……姉さんの幼馴染っていうか……」


うむ、義龍村からの縁だ。

君は出店でイカ焼きでも食べてなさい。


「扱いヒデェ……まあ元々行くつもりだったから別にいいけど……どこの神社行くんだ?」


「ちょっと待って、相談するから」


昌ちゃんと簡易メッセージでやり取り。

どうやら伊奈波神社になりそうだ。あそこなら色々と出店も出てるし……わたあめあるかな。


「伊奈波神社? お前、すげえ人だぞ。車なんて停めれるかどうか……」


「むぅ……ぁ、大地さんが車出してくれるって。お屠蘇飲んでないんだ」


大地さんの車はワンボックスだ。明正も居るが余裕で乗れる。


「うふふのふ。大地さんと初詣……よし、テンション上がってきたー! 拓也きゅん! お雑煮おかわり!」


「え、まだ食べるの?」


「あ、じゃあ俺もー」


そんなこんなで初詣に行くことを決めた私達。

大地さん達が用意して車で迎えに来てくれるまで……どのくらいだろうか。

昌ちゃん……振袖とか着てきてくれるかな……写真撮りたい……。




 ※




《真田亭にて》


「琴音さんから快諾を頂いたぞ、兄ちゃん。でも拓也はともかく……琴音さんの後輩? って誰だろ」


「こ、後輩? ど、どうしよう……もし美人だったら……」


おい。

このドスケベ! あんたは琴音さん一筋だろ!


「そうは言われても昌……兄ちゃん、今まで女性とお付き合いした事ないから……ドギマギが激しくて……」


「何を意味の分からん弱音をさらけ出しとるんだ。拓也に振袖着てこいって言ってもいいんだよ?」


「待って! それマジでヤバイ奴だから! 拓也君可愛すぎるから!」


「振袖?」


その時、母が兄のお雑煮を作って持ってきた!

ぁ、母よ。私達初詣行くけど行く?


「お断りや。人多すぎるやろ。私はゆっくり過ごしたいんや。それより昌、あんた振袖着たいならあるよ?」


え? いや、別に着たいわけでは……。

ぶっちゃけメンドイ……


「大地、昌を拘束せい」


「がってん承知の助」


おい、貴様ら!

ちょっと待て! 最近私、着せ替えられるの多くない?!


あぁ、ちょっと! 

服を、服を脱がせるなぁ!



 ※



 《三十分後》


 まさか母が振袖の着付けが出来るとは知らんかった。

というか、初めて着たけど……似合ってる?


「可愛い可愛い。大地、写真」


「がってん承知の助」


ちなみに髪も下ろして可愛い髪飾りまで付けている。

むむぅ、髪切ろうかな……いい加減長いかもしれない。


「昌、髪下ろした方が可愛いなぁ……うふふのふ。兄ちゃんの自慢の妹よ!」


「兄ちゃん、ちょっと怖い」


いいつつカメラの前でポーズを決める私。

さてさて、では初詣に行ってくるぞ、母よ。


「いってらっしゃい、ぁ、リンゴ飴買ってきて」


「がってん承知の助」


兄貴はGJサインをしつつ、母へといい返事。

どうでもいいけど、がってん承知の助って……流行ってるの?



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