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 突如、謎の美少年とエンカウントしてしまった私。

白いスーツに金髪って……ヤケに派手な兄ちゃんだな。ヤーさんみたいだ。


「楽しんでますか?」


上月(こうづき)と名乗った美少年。

両手にはグラスを持ち、その一方を私へと差し出してきた。


むむ、くれるのか。

これはもしかしてシャンパンだろうか。

そういえば数時間前から何も飲んでないから喉が渇いたでござるよ。

ありがたく頂こう。


「どうも……」


一応、しおらしく振舞う私。

普段だったら「ドモー」とか言いながら受け取っているが、今私は金持ちの娘なのだ!

演技なら任せてもらおう、これでも私は男装するときは男になりきっているのだから。たぶん。


「飛燕の叔父様も人が悪い。こんな美しい方をクリスマスに紹介なさるなんて……」


「ぁ、い、いえ……」


くぁー!

な、なんか背筋が! 背筋がゾワゾワする!

美しいとか普通に言うなよ……これだから金持ちは……。


「ところで、飛燕家にはいつから? 先月お邪魔した時には……」


うっ!

そ、そういえばそれ決めてなかったな……。

一番重要な気もするが、なんかキャラ設定のみで全く気にも留めてなかった。

いつから飛燕家の養子にって……いつからだろう。


ま、まあ適当に……


「そ、そうですね、大体一か月くらい前……」


「ほぅ。まあ、叔父様は気まぐれな人だから……貴方に一目ぼれしたんでしょうね」


な、納得してくれたのか?

というか、上月ってどっかで聞いた事あるんだよな。つい最近……。


「今度よかったら……二人で食事でもいかがですか? ぁ、叔父様には内緒で……知られたら何をされるか分かりませんからね」


堂々とナンパしてくる美少年。

まあ確かに……あのパパさん相当娘を溺愛してるからな。

里桜が合コン行きまくってるって言うのも知らない筈だし……。


しかし、この誘いに乗るわけにはいかぬ!


だって……めんどくさい事になりそうだから……


「申し訳ないのですが……」


と、断ろうとした時、美少年の後ろから見覚えのある強面の男が……


ってー! 思い出した! 上月家って……さっきのヤっちゃんと同じ……


「坊ちゃん。探しましたよ。勝手にウロウロせんでください」


「あぁ、五月蠅いのが来た……。なんだよ、別にいいだろ。折角のパーティーなんだから」


坊ちゃん……?

このヤーさんみたいな人は護衛か何かか。というか、本格的に任侠の方だろうか……上月家って……。


「ん? あぁ、そちらのお嬢さんは先ほどの。またアホに絡まれとるんですか」


あ、アホって……貴方、坊ちゃんに対して随分な態度だな!


「ほら、坊ちゃん。お嬢さん困っとりますがな。さっさと挨拶回り済まして帰りましょか」


「バカ言うな。今婚活中なんだ。邪魔するな、逢沢」


ほほぅ、こちらの強面の人は逢沢って言うのか。

私の好み的には逢沢さんの方がいいな……キラキラ美少年はどうにも……落ち着かん!


「それやったら……先ほど坊ちゃん好みの女の子が困ってましたよ。ビンクのドレスを着た……髪の長い子ですわ」


ん? それって……拓哉の事じゃ……。


「何っ、美少女が困っているだと。すみません、紗弥さん。用事が出来てしまいました」


そのまま颯爽と去っていく美少年。

なんだったんだ、一体。


「ご迷惑おかけして……すんませんな」


逢沢さんも頭を下げつつ、美少年の後を追っていく。


 むむぅ、上月家かなんか知らんが……あれ確実にヤーさんっぽいな。

というか拓哉大丈夫かしら。いや、まあ逢沢さんって人は結構常識人っぽいから、変な事にはならんとは思うが……。


 

『良い子の皆ー! お待たせしてごめんよー!』


その時、聞き覚えのある声が会場内に響いた。この声は里桜か。

あやつめ、私に挨拶周り任せて何を……。


『これより、クリスマスプレゼントビンゴ大会を開催するよ! 皆にプレゼントあるからねー。今回の一番の目玉は……! 最新ゲーム機! & ゲームソフト十本セット!』


にゃ、にゃんだとう!!

私も欲しい! 忘れられてるかもしれないが、真田 昌の趣味は男装とゲームだ!


『はーい、じゃあビンゴカードまだ貰ってない子居るー? 手上げてお姉さんに教えてねー?』


思わず手を上げそうになってしまうが、なんとか堪える私。

ここで上げてしまったら赤っ恥も良いところだ。お父様に恥をかかせるわけには行かぬ……!


『じゃあ一つ目いくよー?』


里桜はゆっくりビンゴの抽選機を回す。

そして出てきた数字は……


『はーい、75-! どんどん行くよー?』


はうぅぅぅ、私もやりたいなぁ……なんかヒマだし。


っていうか、そうだ。兄貴と琴音さんは何処に居るんだ?

拓哉が一人でうろついていたんだから、二人は一緒にいるとは思うが……。


(琴音さんは……まだ車いす乗ってるよな? でも……)


会場内に車いすに乗ってる人は見当たらない。

という事は外だろうか……しかし外に出たって大した物は……。


『はーい、最速リーチの子いるー? 手あげてー、お、チラホラと居る? すごーい!』


里桜は凄い楽しそうだ。

あんなに子供好きだったとは……そういえば、冬子先生を始めて見た時かなり喜んでたな。可愛すぎる白衣の天使が居る! とか言って……。


 その時、パーティーに来る前、冬子先生に言われた言葉を思い出した。

あの二人、拓哉と琴音に気を使ってやってくれという冬子先生直々の要請を。


いや、気を使うも何も、居ないしなぁ……

拓哉はさっき居たけど、琴音さんホントに何処にいるんだ?


仕方ない、人類の英知である携帯電話を使うか。

兄貴にコールして、今どこにいるかを……


『うおー! いきなりビンゴ一位キター! おめでとうー! ステージの上来て来て! 名前はー?』


っぐ、里桜のアナウンスがうるせえ……外に出て電話かけるか……。


『え、えっと……上月 あやめです……』


……ん?!

また上月? というか女の子?

さっきの美青年の妹か何かか? やべえ、むっちゃ可愛い予感がする。


うぅ、しかしステージの上が見えぬ。前に立つ人が邪魔で!


まあいいか……その内見れるかもしれんし。

とりあえず兄貴と連絡を取って琴音さんと合流しよう。


 

 ※



 会場の外は直接玄関と繋がっているためか、かなり温度が低い。

しかし唯一の喫煙所があるせいか、チラホラと人はいる様だ。

一応喫煙所も確認するが兄貴の姿は無い。


 そのまま兄貴へとコール。


……


……


……


『はい、昌か?』


「あぁ、兄ちゃん……今どこに居るの? 琴音さんと一緒だよね、とりあえず合流しようと思って……」


……?

なんか違和感がある。

兄貴の電話……やけに静かというか……とてもこのパーティー会場内に居るとは思えない。


『あぁ……ごめん、昌。今ちょっと琴音さんと一緒に外出てて……実は今日は……』


外……?


あぁ、成程。


「もしかしてお墓参り……? 琴音さんと拓哉の両親の……」


『……知ってたのか。教えてくれよ……』


いや、私だって今日冬子先生に聞いたんだ。

知ってたら教えてるさ!


むむ、というか……拓哉は行ってないんだな。


『あと少ししたらソッチ戻るから、そんなに遠く無いし』


そうなのか。


「わかった。待ってるから……」


『あぁ、ところで昌、里桜ちゃんのお姉さん美人さんだな。あんな美人が出てくるなんて聞いてないから、兄ちゃんビックリしちゃったぞ』


……兄貴、それ私なんだが。


いや、まあいいや。帰ってきたら説明しよう。


『じゃあな、戻ったらまた連絡するから』


ういうい。


電話を終え、携帯を仕舞い会場に戻ろうとすると、いつのまにか後ろに上月家の護衛、逢沢さんが!


ひ、ひぃ! ビックリした!


「……お兄さんが居られるんですか? 紗弥さん」


げっ! 盗み聞きとは不埒な!


「それは謝りますわ。ちょっと聞こえてしまいまして……それで……貴方一体……」


……あかん、これバレたわ。

私が飛燕家の養子では無いという事に……。

まあ仕方ない、逢沢さんは割と常識人っぽいし……説明すれば分かってもらえるだろう。



 ※



 五分程で説明終了。

逢沢さんは口をふさぎながら凄い笑っている。


な、なにがおかしい!


「い、いや、すんません……。あのオッサン、相変わらずやと思ってしもうて……。そうですか。本当は昌さん言いますんやな」


「は、はい……すみません、騙してて……」


「いえいえ、全部あのオッサンが悪いんですわ。まあ……でも、今回は少し気持ち分からんでもないですけどな。まさか昌さんが生まれた日にお父さん亡くしてるなんて……あのオッサンやなくてもビックリしますわ」


ま、まあそうそう無いよな。

子供の誕生日が親の命日だなんて……。


「それにしても……どないすんやろ……」


え、何が?


「いえね、さっき挨拶回りしてた時に……各家々、皆紗弥さん……昌さんの話題で持ち切りで。もうかなり狙ってますで。自分の息子と結婚させようとしてる人、相当いますわ」


な、なんじゃと……


「これで冗談でした言うたら……」


ま、まさか……今後、飛燕家とは関わらない! という人が出てくるかも?


「それならまだ良い方ですわ。問題は貴方ですわ」


え、私? 私はただの一般人ですわよ


「もしこれで飛燕家の養子やないと分かれば……たとえば上月の当主……さっきのガキなんですけどね。あいつなら、間違いなく無理やりにでも嫁に取る筈ですわ」


え、え?! なんで! 私は飛燕家の血筋じゃなくてよ!


「今は血筋なんて大した問題あらしまへん。問題は貴方の人としての器量ですわ。飛燕家の当主に養子のフリまでさせられるほど惚れこまれてて、しかも跡継ぎ候補の里桜さんや涼さんと親しい。下手な血筋持っとるより有力ですわ、飛燕家と太い関係築くには……」


い、いや……でもそれなら里桜とか嫁に取った方が……


「それならそれで良いんですけどね。時には血筋よりも、ただ親しいってだけの方が都合がいい時もありますんや」


それって……もし飛燕家が事業に失敗したりしたら……って時の事?

いや、考えすぎか。


でもまあ……じゃあどうすれば?!


「私からオッサンに言うときますわ。カミングアウトせんように。その代わりと言っては何ですけど……貸一ついいですかい?」


「え? 貸しって……」


「いえいえ、もし上月家が困ったら……貴方が少し助けてくれるだけでいいんですわ」


助けるって……。


私に一体何が出来る。


「それじゃ。オッサンには私から言うと来ますから。昌さん……いえ、紗弥さんはさっきまで通り振舞っててください」



そのまま逢沢さんは去っていく。


むむ、ということは……もしかして……


私、このまま飛燕家の養女のフリし続けろってこと?


む、無理でござるよ! 心が折れそうでござる!




 こうして私は、クリスマスプレゼントとして、飛燕家の養女(仮)のステータスを得た。



正直いらねえ……


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