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里桜たんの家で昼食を頂いた私。
やっぱり美味ぇ……あのシェフに後でレシピ聞いておこう。
勿論私が再現するわけではない。私の得意料理は卵かけご飯なのだから。
敏郎さんにレシピ横流しして作ってもらおう……。
「そうえいばアンタ……なんでそんな格好してるのよ」
グラスパを食べつつ、里桜はメイド服姿の私に尋ねてくる。
なんでって言われてもな……。
そのままあった出来事を説明する私。蓮君にジュースをぶっかけられ、春日さんに着替えさせられたのがメイド服だったと。
「私の携帯に電話してきなさいよ。友達の家に遊びに来たのに使用人として働くって……どういうことよ」
むむっ、里桜たんまだオコですか?
だめよ、カルシウム不足よ。
「うっさい。あー、でもメイド姿か……」
途端にニヤニヤしだす里桜様。
なんか良からぬ事を企んでる顔だ。何をさせるつもりだ。
「晶……コレ食べたら涼のお見舞い行くわよ」
「え? あぁ、うん」
なんだ、お見舞いか。
しかしそれだけじゃないだろ。
「それだけよ。私の事信用してないの?」
いや、信用するとかしないとかの話では無いんだけれど……。
約三十分後。
昼食を食べ終わった私と里桜は、涼ちゃんの部屋の前へとやってきた。
むむぅ、言っちゃなんだが……この屋敷広すぎ……食堂からここまで徒歩十分掛かったぞ……。
「慣れればもっと早く移動出来るわよ」
そんなもんか。まあ里桜にとっては自分の家だしな……。
コンコン……とノック。
するとゆっくり扉が開き、中から春日さんが顔を出した。
「あれ? 里桜ちゃんに晶ちゃん……もしかしてお見舞いに来てくれたの?」
春日さんに中へと招かれ、涼ちゃんの部屋へと入る私達。
おぉぅ、なんかいい匂いする……。
「ごめんねー? 涼ちゃん、ちょうど今寝ちゃった所で……」
むむっ、そうだったのか。悪い事したな……じゃあ帰ろうぞ、里桜たん。
「まあ慌てなさんな。可愛い可愛い涼の寝顔をゆっくり眺めるチャンスですぜ」
言われてみれば……と、里桜は既に涼ちゃんの傍に寄ってホッペをつついている。
私もそっと寄り、その様子を眺めた。ふぉぉぉ、なんて可愛い金髪美少女……。
まるで二次元から飛び出してきたようだ
「さて晶、良い事教えてあげる。涼の寝起きは凄いわよ」
え、何が? 寝起き?
「そう、鳥の雛が卵の殻から出てきて、最初に見た物に懐くって話知ってるでしょ? あれと同じ現象が起きるのよ」
んん?! それってつまり?
「つまり……寝起きの涼は、起きてすぐに見た人に甘えまくるのよ。普段は気の強いこの子が……」
な、なんだとう! け、けしからん!
「涼自身もその性質を理解しててね。春日さんが居ない時は私が、その役目を担ってるわ」
つ、つまり……普段、里桜は寝起きの涼ちゃんに甘えまくられてるって事か?!
なんて羨ましいっ! 私も甘えられたい……
「そう言うと思ったわ。晶さえ良ければ……その役目、今日だけ譲ってやらんでもない」
おお、神よ!
里桜が凄い良い奴に見える!
「え、えーっと、里桜ちゃん? まさか……」
ん? なんか春日さんが不安毛な表情を浮かべている。
なんですかい?
「大丈夫大丈夫、晶なら……じゃあヨロシコ」
そのまま里桜と春日さん、そして蓮君は部屋から出ていく。
むむぅ、しかし私はどうすればいいのだ。
風邪を曳いて寝込んでる涼ちゃんの看病するのはいいけど……
「ん……っ……パパぁ……」
ふぉぉぉ! 可愛い寝言いいおる!
なんだろ、夢の中でパパさんと遊んでるのかな?
可愛いなぁ……ウフフ。
「パパぁ……お兄ちゃんがほしい……んぅ……」
あぁーっ、分かる、分かるぞ。
私も小さい頃、母親にお姉ちゃんが欲しいとか無茶ブリした事があった。
もう父親も死んでるのに……しかもお姉ちゃんとか難度高すぎる。
ん? そういえば……里桜の母親って……聞いた事ないけど、健在……だよな?
確か前、リムジンの中で里桜と一緒にインフルに掛かって……
「んぅ……」
その時、涼ちゃんが目を覚ました!
薄く目を開き、途端に寂しそうな表情を向けて来る。
「ぁ……お姉ちゃん……お姉ちゃん……っ」
抱っこをせがむように両手を出してくる涼ちゃん。
か、かわええ……っ! ど、どうした妹よ!
そのまま両手を繋ぎ、ベットに腰掛ける私。
「んー……こっち……」
こっちって……どっち?
ってー! 布団捲りあげて……誘われてる?!
私誘われてる?!
そ、添い寝しろと言う事か!
じゃ、じゃあ……失礼します……。
そっと布団の中に入り、添い寝する私に抱き付いてくる涼ちゃん。
うぉぉぉぉぉ! 可愛い! 妹ってこんな感じなのか!
そういえば私も小さい頃、兄貴に抱き付いて寝てたっけ……。
なんか兄貴がシスコンになっちゃった理由が良くわかる。
私みたいな可愛い妹が居たら……そりゃ猫可愛がりするわな。
しかし今は金髪美少女の涼ちゃんが私に甘えている。
あぁ、夢なら冷めないで欲しい。
「んぅ……ぎゅってして……」
ぎゃー! 鼻血が! 鼻血が出そう!
なんで私は男の子じゃないんだ! 男だったら……このまま……
「って、何考えてんだ……」
涼ちゃんはどういう経緯でここに居るかは知らないが、この家には実の親も兄弟も居ないんだ。
寝起きに甘えん坊になる理由も分かる気がする……。
何不自由ないこの家だからこそ、きっと寂しいんだろう。
以前春日さんから聞いた事がある。涼ちゃんは可愛い女の子を追い求めていたと。
つまり……友達が欲しかったんだ。
私も一度、メイド服姿の時に涼ちゃんに誘われて……
ん?
そういえば里桜……メイド服着てる私を見て、ニヤニヤと何か悪だくみを……。
「メイドさん……んぅ……」
すると私の胸をまさぐってくる涼ちゃん。
え、な、なんすか? 私のナイ乳探って何を……。
「んぅ……ひっ……ひぁぁぁぁぁーっ! あぁぁぁぁー!」
途端に泣きだしてしまう涼ちゃん。
え、え?! ど、どうしたの?! お、おーい!
落ちつけ、落ち着くんだ!
「あーあー、やっぱりダメか……」
その時、外で様子を伺っていたのか、里桜と春日さんが部屋の中に入ってきた。
な、なんなんですか! 一体!
「春日さん、お願いします」
「はいはーい。涼ちゃーん、おいでー?」
布団から這い出て春日さんに抱っこされる涼ちゃん。
そのまま……ってー! か、春日さん! な、なんで……おっぱい出してるの?
「ごめんねー? おっぱい欲しかったんだよねー?」
そのまま子供に母乳を与えるように……って、なんだこの光景。
涼ちゃんって高校生だよな?
「晶、隣りの部屋行くわよ。蓮君テレビゲームやってるから」
「へ? い、いや……あの……どういう事?」
「あっちで説明するから」
そのまま隣りの部屋に移動する私と里桜。
蓮君は巨大な壁かけテレビでニンテンドー○イッチをプレイしていた。
おぉう、すげえ……私もやりたい……って、いや、そんな場合じゃない!
涼ちゃんは一体どうなったんだ!
「実は……涼の寝起きの甘えん坊モードには相手によってバリエーションが変わるのよ」
なんだと?
「相手が私の場合はひたすら抱っこをせがんで、調子良い時はキスしたがる」
なんだと!!
「で、親父殿の時は一緒にお風呂入りたがるから、私達は全力で阻止してるわ」
あぁ、まあ年頃の娘だからな……正気に戻った時のショックがデカそうだ……。
「そして……相手がメイドさん、もしくはメイド服を着ている時、何故か赤ん坊みたいになって母乳を欲しがるのよ」
何故に?
「たぶんだけど……あの子の母親、メイドだったんじゃないかって……。でも覚えてる筈無いのよね。親父殿が涼を拾った時、まだ赤ん坊だったんだから」
ふむぅ……で、なんであんな大泣きしちゃったん?
「あんたの胸が薄いからよ。前に私で試した時は大丈夫だったんだけど……晶のサイズじゃダメって事ね……」
なんか凄いディスられてる気がする!
ワシ傷付いたでござる!
「まあまあ、でもこれで分かったわ。Aカップはダメって事ね」
うわーん! 里桜がいぢめる!
酷い! 酷いでござる! それを確かめる為に私をダシに使ったんだな?!
「いいじゃない、アンタ脚は綺麗なんだし……ちなみに蓮君で試した時は……」
おぉい! 何してんだ! でも凄い興味深い!
「聞きたい?」
ゴクっと唾を飲みこみながら頷く私。
「いや、やっぱり言えないわ……蓮君の名誉に関わるもの……」
「ちょ、そこまで言っといて……」
と、その時テレビゲームに夢中だった蓮君がこちらを涙目で見つめて来るのに気が付いた。
「い、言っちゃダメぇ……!」
い、一体何が……
一体何が起きたんだ! 凄い気になる!




