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 突然ですが、皆様は雪……お好きでしょうか。

ちなみに私は好き”でした”


 子供の頃は雪だるまを作ったり、兄貴や友達と一緒に雪合戦したり……

雪最高! もっと積もれば鎌倉作れるのに! とか思ってました。


 しかし……悲しい事に、そんな想いは大人になるにつれ薄れていき……

今現在、私は心の底から雪うぜえ……と思うようになってしまいました。



 12月3日 (日)


 そんなわけで、私は今自宅マンションの駐車場で雪かきをしている。

私は車を持っている訳ではないが、大家さんに頼まれては仕方ない。

このマンションに住まう住民の一人としての義務だ!

単純に大家さんが70過ぎのお爺ちゃんという事もあるが。


「悪いねぇ、晶ちゃん……折角の日曜なのに……」


「いえいえ、彼も喜んでるので」


彼……というのは蓮君の事だ。

本日、午前中に春日さんと共に遊びに来たのだ。

 今現在、蓮君は雪だるまを作って遊んでいる。

昔の私を思い出すぜ……。


「それにしても……今年は積もるねぇ……十年ぶりらしいよ」


「そうなんですか……そういえば私が小学生の時も……」


かなり積もった記憶がある。

どのくらいかと言うと、学校が休みになるレベルで。

 ぶっちゃけて言えば、岐阜県で雪が降るなんて別に珍しい事では無い。

ただ年々降る量は少なくなっている。山に近い所は積もるだろうが、私が住む岐阜市では降ってもすぐに溶けてしまう程度。雪かきなど、それこそ小学生以来だ。


 雪かき専用のスコップで隅っこの方にどんどん雪を積んでいく。

もう山のようになっていた。蓮君が喜んで飛び込んでいる。


「ほらほら、蓮君あぶないよ。うまっちゃうぞー」


と言いつつ、私もダイブ!

うへぁー! つめてえ! なんか気持ちい!

久しぶりにスノボ行きたいな……。


「晶姉ちゃん、かまくら作ろ!」


なんだと?

また重労働な事言いだすな、この子はっ。

しかし私も子供の頃は鎌倉を作りたかった。

だが子供だけでは難しい。精々出来てミニ鎌倉だ。


 まあ、蓮君の体力も無尽蔵なわけじゃないし……その内疲れておとなしくなるか。


「じゃあ私雪積んでくから。蓮君は雪を固めるんだ!」


「がってん承知の助!」


どこで覚えた、それ。

今どきの小学生も言うのか? 

まあ、それはそうと私は雪かきを進めなければ。


 現在午前十時。

日曜だからか、駐車場には大半の車が停まったままだ。

まあ使おうとしても脱出は難しそうだが……


「うぉ! 車埋まってる!」


その時、マンションの住民だろうか。

チラホラと見かけるチャラい男がジャージ姿で現れた。

自身の軽自動車が見事に埋もれ、びっくり仰天している。


「マジかよー……ちょっと大家さん、ちゃんと雪かきしてよー」


ぶち殺すぞ、チャラ男。

お前……私達が何してるのか見えてないのか! っていうか手伝え!


「はぁ……ちょっと、そこの姉ちゃん」


誰が姉ちゃんだ。確実に貴様よりは年下だ。


「俺の車、出せるように雪かきしてくんない?」


こいつ……絶対舐めてる。

ここに兄貴が居たら半殺しにされてるぞ。マジで。

しかし私も大学生だ。もう大人の階段を昇り始めている。

ここで喧嘩しても仕方がない。ここは堪えて素直に雪かきしてやるか……。


「ワカリマシタ、ヤッテオキマス」


カタコトで言いつつ、チャラ男の軽自動車が出れるように雪かきしていく私。

大家さんも申し訳なさそうに手伝ってくれた。


「ごめんねぇ……あの人……根は良い人なんだけどねぇ……」


大家! あんた良い人すぎ!

いくら根がいいからって……こんな舐めてる男、久しぶりに見たわ!

つーかチャラ男何してる! 貴様も手伝え! っていうか今お前の為に……


「お、坊主。鎌倉作ってるのかー。ちゃんと固めないと崩れちまうぞ」


っく……蓮君の面倒を見てくれるのはいいけど……なんか納得いかん!

しかし私達が目を離したスキに蓮君に何かあっては困るし……うぐぐ。


 その後、なんとかチャラ男の軽自動車が出れるくらいまで雪かきする私と大家さん。

チャラ男は一言だけ「サンキュー」と言いつつ出て行った。

今度後ろから硬い物で殴りつけるぞ。


「晶ちゃん、気悪くしないでね。借りを作ったと思えば……あの人、結構顔広いから……何か困った事があったら相談してみるのも……」


「はぁ……そんなもんすか……」


何かあったら徹底的に使ってやる……と思いつつ、大家さんと雪かきを再開。

しかし進まんな。どれだけやっても、今夜も降ってしまえば振り出しだ。

大家さんも結構な歳したお爺ちゃんだし……疲れてる筈だ。


「大家さん、ちょっと休憩しませんか? というか疲れました。さっきのチャラ男ぶん殴りたい」


「お、落ち着いて晶ちゃん……根は良い人なんだって、ホントに……」


むむぅ、あのチャラ男め。大家さんのハートを鷲掴みにでもしたのか?

それとも大家さんが本格的にお人好しなのか……と、その時さっき出て行ったチャラ男の軽自動車が戻ってきた。って、早っ! どこいってたんだ?


「ただいまー。ほい、姉ちゃん。お礼」


「へ? あ、どうも……」


と、ビニール袋の中には人数分の肉まんとコーヒーが。

コンビニ行ってきただけか?


「あぁ、タバコ買いに。ちょっとそこのコンビニまで」


ほんとちょっとそこまでだな! 歩いて五分程度だぞ!

コイツ……絶対舐めてる。肉まん買ってきた事は評価してやるが……しかしそれでも気に食わん!


「ちょっとそれ貸して。肉まん食ってな」


いいつつ私からスコップを取りあげ、大家さんにも休んでてと言い放つチャラ男。

ふむ、ならば肉まん食いながら休憩するか。

ビニール袋の中から肉まんを取り出し、大家さんと蓮君に渡す私。

むむっ、蓮君用にオレンジジュースが! チャラ男のくせにちゃんと考えて買ってきたのか。


「ね? いい人でしょ?」


いやいや! 大家さん、私はそんな安い女じゃなくてよ!

肉まん程度で買収される程度じゃないし……。


《15分後》


 肉まんを食し、コーヒーを飲みつつチャラ男の雪かきを眺めていた私達。

あれだけあった雪が見事に……結構片付いてしまった。なんてこった……。


「こんなもんでいい? ほい、返す」


スコップを返された私は呆然としていた。

私と大家さんが一時間程度かけて、やっと駐車場の四分の一片づけたのに……。

このチャラ男、十五分で残りの雪をある程度まで片しやがった。

な、納得いかん!


「俺新潟出身だから。コツあるんだよ。さーて……一服すっか……」


と、タバコに火をつけ始めるチャラ男。

むむぅ、モヤシみたいな体して体力はあるのか。

大家さんの言う通り、根は良い奴かも……ってー! いかん! 私まで洗脳される訳には行かぬ!

チャラ男は敵……チャラ男は敵……。


「あがとうねぇ、澤田さん。助かったわぁ」


っく……なんか悔しい!

私も頑張ったのに! 


「晶ちゃんもありがとうねぇ。助かったわぁ」


うぅぅぅぅ! なんか釈然としない!

このチャラ男は澤田っていうのか。今後関わらないように名前覚えておこう。

必要になったら利用してやる……肉まんご馳走さまでした!


 そのままチャラ男はタバコを一本吸った後、自分の部屋へと戻っていく。

さて、私達も戻ろうか、蓮君。


「えー……まだ遊びたい……」


むむぅ、何となくそう言うと思ってたけども……。

私もう結構クタクタよ! 一緒にお風呂に入って疲れを癒そうぞ!


「……お風呂……一緒?」


「ん? まあ……私と一緒はヤダ?」


「入る……! 晶姉ちゃんとお風呂入る!」


な、なんだこの子……!

もしかして小学一年生にして、女子大生と風呂に入るのが貴重な経験だという事を理解しているのか?!

ま、まあいい。このまま風呂で釣って部屋に帰ろう。

春日さんもご飯作ってくれてるし。


「お母さん、今日の夜はお鍋って言ってた」


むむ、夜は鍋か。じゃあ昼はなんだろ。

楽しみでござるな!



 そのまま大家さんと分かれ、部屋に戻る私と蓮君。

玄関を開け放つと、春日さんが出迎えてくれた!


「おかえりなさいー。お疲れ様でしたー。ご飯にするー? お風呂にするー? それとも……私?」


お決まりの出迎えコマンドを炸裂させる春日さん!

勿論春日さんで! と言おうとした時……


「晶姉ちゃんとお風呂はいるー」


蓮君に先を越された!

あぁぅぅ! 私と春日さんの愛を育む場が!


「はいはいー、もうお風呂準備出来てるから。それからお昼ご飯にするねー」


なんて良く出来た妻なんだ……。

私が男だったら絶対春日さんと結婚するのに!


 その後、蓮君と一緒にお風呂へと入る私。

心なしか、蓮君の鼻の下が伸びてる気がする。


「晶姉ちゃん……お母さんより背おっきいのに……ちっちゃい……」


何が言いたいのかは分かった。


少しお黙り、小僧。


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