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 夏が過ぎて


焼き芋と秋刀魚が異常に食べたくなる季節


涼しい風が透き通る病室で


当たり前のように


私は琴音さんに焼き芋を与えていた


「って、あっつ!」


 新聞紙とアルミホイルに包まれた芋の皮を、少しずつ剥いて行く私。

ふぉぉぉ、中からホッカホカの甘そうなサツマイモ本体が!


「琴音さん、あーん」


 流石に本体はかなり熱いので、割りばしで少し崩して口に運ぶ。

ふふふ、美味いか? 頬がとろけそうか?!


「あ、あふ……あふぃ……」


「アフィリエイト……? 広告収入ですか?」


「違うの、熱いの」


ふむぅ。まあ焼き芋だしな! 熱いのは当たり前だ!

というわけでバニラアイスも買ってきたから交互に食おうず。


「晶ちゃん……最強だね!」


ビシっと親指を立てて称賛する琴音さん。

ふふふ、どうもどうも。


アイスの蓋を開け、スプーンですくって琴音さんの口に。

ぶっちゃけ、もう自分で食べれるが私が好きでしている事だ。

今日は更にサプライズもあるし……。


「ぁ、ところで琴音さん、あの子とは進展あったんですか?」


あのリハビリ科で出会った少年と……

すると琴音さんは頬をポリポリ掻きつつ


「ま、まあ……御嫁さん候補にはなれたよ……」


「……ん?」


この人……あの少年をたぶらかしてる!

だめでしょ! まだ幼い子を引き釣り込んじゃ……!


「い、いや! 大丈夫だって! 子供の言う事だし、その内同世代で好きな子出来るって!」


どうかなぁ……彼は確実は年上好きという事だろう。

いつまでも琴音さんの影を追って……


「無い無い! 第一……あの子もうすぐ退院して北海道行っちゃうんだから……もう会えないだろうし……」


「ぁ、北海道行くんですか?」


「あっちに牧場経営してる親戚が居るみたいで……」


ふむぅ、牧場か。

動物達に囲まれて……彼は幸せになれるんだろうか。


「約束したから。もう私達は不幸にはならないって……」


にんまりと小指をピコピコさせる琴音さん。

ふむ、指切りですか。

嘘付いたら針千本飲ませるという拷問の……


「そんなエグい約束してないから……」



 そんなこんなで琴音さんの退院も近い筈だ。

今は十月。担当の先生の話では、遅くとも十二月には退院できるとの事だった。

予想以上に早い回復に先生も驚いていた。


「琴音さん……もしかして念能力使えるんじゃ……」


「ん? なにそれ。また漫画の話?」


うぅ、はい。そうでござる。

 その後も琴音さんと漫画や映画の話で盛り上がる。

退院したら観に行きたい映画があるそうだ。ふむぅ、ならば私も着いて行こう。


「ぁ、その前に冬子さんの所に行かないとね。お礼とお祝いを兼ねておっきいケーキ買って行こうか」


ふむふむ。それはいい。きっと喜ぶでござるよ、あの人。

しかし私も最近冬子先生の姿は見ていない。

ぱったりと、大学に来なくなってしまった。

だからといって私が直接家に行くのも気が引けるし……


もしかしたら今頃、花村教授……いや、助手と愛を育んでいるのかもしれない。


 その時、私の携帯がワン切りされた。

ワンコールして切る事の略だ。最近は使わないから分からない人が多いだろう。


「琴音さん、散歩いきましょうか。今良い感じの気候ですよ」


秋の空に相応しい夕方。

何故だろ、また焼き芋食いたくなってきた。


「焼き芋もいいけど……なんかラーメンも食べたいね……」


あぁ、凄い分かる! チャルメラの音が聞こえてきそうだ!


 



 車椅子に乗った琴音さん。

その後ろから押す私。

今は病院の中庭をゆっくりと散歩中。むむ、夕日が綺麗ですな。


「気持ちいね、寒くもないし……熱くもないし……秋が一番いいかなぁ……」


「私は冬が好きですけどね……シチューが美味しいですから」


琴音さんと笑いながら中庭を散歩していると、正面に人影が。


「むむっ、拓也きゅん?」


よく分かるな、この人……。

あぁ、匂いで分かったのか? 


 そのまま人影はこちらに歩いてくる。

しかし……その人影の傍らに違う影が。

琴音さんは目を凝らし、その影がなんなのかと見つめていた。


「ワフッ!」


その影が我慢出来なくなったのか、一目散にこちらに走ってくる。


「うわっ、ちょ……待て、待て!」


拓也も引っ張られて焦っていた。

そのまま、多少早歩き気味に近づいてくる拓也と……


「まさか……ヴェル様?」


「ワフっ! ハッ、ハッ……」


一匹の柴犬が琴音さんの膝へと顎乗せする。

そのまま甘えまくる柴犬。

なんて羨ましい。


「ヴェル様……大きくなったね……もう普通の犬になったね!」


「いや、姉さん……最初から普通の犬だよ……」


ヴェル様の頭を撫でまわす琴音さん。

とても楽しそうだ! サプライズしたかいがあった。


「ありがとう……二人とも……ヴェル様に会わせてくれて……」


そのまま拓也と一緒に琴音さんを挟み


「どういたしまして……」


そっと琴音さんの車椅子を押す。


夕焼けの空が


私達三人と一匹の目の前に広がっている


吸い込まれそうな空


オレンジ色の景色


もうすぐ


琴音さんは退院する


そしたらもっと盛大に


お祝いしよう


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