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三種の神器

かつて世界は戦火にまみれていた。


魔王が魔物を引き連れ、人間たちの国を次々と落とし始めたのだ。


魔物たちは人より大きく強い体を持ってはいたが、頭を使うことが苦手で、ただ闇雲に暴れまわり、

人間たちは魔物より弱いものの、策を練ったり強力な武器を作るなどして魔物たちに対抗していた。


戦力は拮抗しており、互いに決定打が無く、ただただ戦争は長引くばかりであった。


そんな戦争の中、人間陣営から強力なパーティーが戦場に送り込まれた。

そのパーティーは魔王を倒すことを使命とし、人間陣営の最後の希望であった。


「剣と魔法の勇者」 ブレウス

人類の希望である勇者。彼は剣技に優れ、魔法にも精通し、剣と魔法を織り交ぜた戦い方により人間陣営の中では圧倒的な戦闘力を誇った。パーティーのリーダーを務める。


「怪力無双」 ガイ

圧倒的な筋肉量を誇った戦士。筋肉が発達しつづける特異体質を持っていた。魔法は一切使えず、肉弾戦を得意としておりその筋肉から繰り出される攻撃に耐えることができた魔物はいなかったといわれる。


「全能の賢者」 ユークリッド

あらゆる魔法に精通し、魔法に関しては彼女の右に立つものはいなかったとまで言われる。彼女の魔法一つで、数百体の魔物が一瞬にして消滅したのは有名な話である。


この三人の手により魔王は討たれ、人間と魔物の戦いは終わった。





ブレウスは自分が生まれた国であるアスデンティ法国に帰国後、魔王との戦いの影響ですぐに息を引き取ってしまう。


アスデンティ法国は他国と比べ国力が弱かった。魔物との戦争以前は、とある大国の属国となることで他国からの侵略を防いでいたが、戦争で大国は焦土と化した。

魔物との戦争が終わった今、近い将来他国が攻め込んでくるかもしれないと法国は危惧していた。


人類最強の一人であるブレウスがいれば他国も安易に戦争を仕掛けてこないと踏んでいたが、肝心のブレウスが死んでしまったため、法国は途方に暮れてしまう。


アスデンティ法国は何か良い案がないか模索し、ある一つの案が実行されることとなった。


法国では戦争中、より強い武器を作るための研究がなされていた。その研究の一つに、生き物を材料として武器を作るというものがあった。

捉えた魔物、人間の奴隷などで研究を重ねたが、戦争中にその研究を完成させることは叶わなかった。


しかしユークリッドがその研究に興味を示したため、彼女の魔法の力を借りることができた。

ユークリッドの魔法と、法国の研究成果が合わさって、ついにその技術を完成させたのである。

完成させたと言ってもユークリッドしかこの技術を扱うことができなかった。


この方法によってつくられた武器は、材料となった生き物の性質を引き継いでおり、強い生き物を使えばそれだけ強い武器ができた。


法国はブレウスの死体を材料として武器を作ろうと考えた。

ブレウスが材料ならば最強の武器を作ることができ、自分たちの国を守ることができる。


そしてブレウスはユークリッドの手により剣となった。

剣は常時光を発しており、きらびやかな装飾が施されていた。

その剣は「神剣ブレウス」と名付けられ、法国の戦士長に渡された。


神剣は装備した者の力を大幅に上昇させる効果を持っていた。

戦士長が神剣を振るうと、天が裂けたとまで言われている。


この神剣のおかげで、法国は現在に至るまでに小国から超大国にまで成長した。

神剣さえあれば、他国の侵略も容易かった。


神剣は代々、戦士長に就任する者に与えられた。





ユークリッドはブレウスを剣にした後、法国の追っ手を振り切り、法国に知られることなく母国であるホニア魔法国に帰国した。


彼女は研究室に閉じこもり、決して外には出なかった。


彼女に身を心配した魔法国の人々が、強引に研究室に押し入ると、そこに彼女の姿はなく、魔法陣の上に真っ赤な水晶玉が一つ置いてあるだけであった。


その水晶は「ユークリッドの宝玉」と呼ばれ、持つだけでありとあらゆる魔法を使うことができるようになり、無限に魔力が宝玉から装備者に供給された。


人々はユークリッドが宝玉に姿を変えたのだと思った。


ユークリッドの宝玉は魔法国の国宝となり、魔法国発展の礎となった。





ガイも魔物との戦争終結後、母国であるカタルト王国に帰国していた。


彼は母国に帰ったあと王国の軍団長に任命され、王国のために働いた。


年をとっても筋肉が発達し続ける特異体質のおかげでガイの体は衰えること知らず、むしろ年を経るにつれて彼の力は強くなっていった。


病気で死してなお、彼の筋肉は成長を続けた。


法国と同様にガイの死は、武力による抑止力の喪失を意味した。


王国は法国においてブレウスを材料に強力無比の神剣が作られたことを知り、王国の錬金術師たちに命じて、ガイの筋肉を材料に武器を作らせた。


王国は昔から錬金術に力を入れており、他国にはない独自の技術を有していた。


そして完成したのが「強化拘束具ガイ」である。

これはガイの筋肉と特殊な金属を融合させてできた装甲で造られた全身鎧である。


この鎧を装着することでガイのような怪力を得ることが可能なはずであったが、装着したところで怪力を得るどころか鎧が重すぎて装着者は動けなくなってしまった。


王国は錬金術師たちになんとかするように命じたが、この全身鎧は錬金術師たちの干渉をまったく受け付けなくなっており、どんな手を加えようとも改造することはできなかった。


ガイを失い、武具の開発にまで失敗した王国は、神剣を有する法国の侵略にあい、圧倒的な武力をもって滅ぼされてしまう。

その際、錬金術の技術も失われ、「強化拘束具ガイ」は行方知らずとなってしまいそのまま現在に至る。





「神剣ブレウス」「ユークリッドの宝玉」「強化拘束具ガイ」は三種の神器として後世に伝わっている。


「神剣ブレウス」はアスデンティ法国の戦士長に代々引き継がれている。

「ユークリッドの宝玉」はホニア魔法国の国宝として管理されている。

「強化拘束具ガイ」は行方不明。


これがこの世界で一般的に認知されている三種の神器についての知識である。



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