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ハードボイルド(笑)に生きよう  作者: 最小
ハードボイルド(笑)な銃使いと白い竜
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その38 『白竜』の約束

進まないの進まないのって。前話の他視点のようにしたかった。

 セイジが朝の鍛錬をしているころのこと、レンと修は朝食を食べに1階に降りてきていた。


「『白竜』もメシ食うのか?」


「食べなくても大丈夫だから食べないけど、食べているところを見てるのは好きなんだよね」


 手をつけられていない朝食と、ニコニコと笑う『白竜』がそこにいた。机に置かれている数は5つ、レン、修、セイジだけではなく、トゥールニャータの分も置いているのだろう。


「キミたちに話があって、ここで待ってたんだ。キミたちは自身が誰であるか、『異界種』とは何か知らないだろうからね」


 その『白竜』の言葉を聞き、レンと修は無言で席に座った。なぜこの世界に来たのか、2人は知らない。以前にも来たという『異界種』が自分たちと同じなのかも知らなかった。


「まずは25年前に来た『異界種』について、ベータテスターって単語はわかるかい?」


 2人はうなずく。正式版がリリースされる前に、プレイヤーに動作、使い勝手などを調べてもらうのをベータテストという。そこでバグ修正、バランス調整など行われるのだ。


「彼らはベータテスト時にとられたデータをもとに作成された人達だ。データを記憶に、新しい魂と体を与える……プレイヤー自身ではない存在だ」


 『白竜』は一旦区切って2人の様子をうかがう。やはり、25年前の存在なのだから関係ないと思っているのだろうか、関心が持てぬようだ。


「25年後、今いるキミたちも似たものだよ。ゲームで得たデータをもとに、女神にとって都合の良い記憶を持ったプレイヤーではない存在だ。今もキミたち2人の元になったプレイヤーは生きているよ」


「俺らは、ニセモノって言いたいのか?」


「違うよ、女神が作った別人ってだけ」


 その言葉で納得したレンと修を見て、本当に女神にとって都合よく作られたのだと『白竜』は感じていた。25年前の『異界種』とは随分違う。彼らは元の世界に帰る方法ばかり探していた、女神に作られたプレイヤーではない彼らに『帰る世界』は存在しないのにかかわらずだ。


「まあそんなわけで帰す世界もないから昨日話した女神が作った体と交換って話になるわけで、『異界種』から変更するならどの種族にするかいって言いたかったんだよねー」


「あの……この話、セイジさんにはお話ししないんですか?」


 セイジがいない状態で『白竜』が話を進めることに、修は疑問に思ったようだ。それに対し、『白竜』は特に何も考えることもなく答えた。


「だって、死んだプレイヤーの魂を使っていて君らとは違うからね。半年くらいで壊れちゃうんじゃ話しても無駄かもしれないじゃん」


 カランと何か音がした。レンと修が音のした方を見ると、目を丸くしたカーラがいた。先ほどの音は、お盆を落としたことによるもののようだ。


「半年で死んじゃうって……どういうことですか?」


「そのままの意味だよ。死者の魂を無理やり使ってるせいか、転生しかかってるみたいだね。ほとんど壊れて、なぜか魂の壊れた部分を記憶で補おうとしてるっぽいけど」


 酷く狼狽するレン達3人、出会い頭に告げられたにも関わらず、落ち着いていたセイジの方がおかしいのだろう。どう話を続けようかと『白竜』が思案していると、朝の鍛錬を終えたセイジが帰ってきた。


「え、あ……銃のオッサン」


 『白竜』の視線で気付いたらしく、絞り出すようにレンから声が漏れた。心の準備というものは出来ていない。近いうちに死んでしまうと知ってしまった以上、どう接するべきかわかるものはいなかったのだ。だからだろうか、助けを求めるかのように3人の視線が『白竜』をとらえる。その視線の意味に気付いたのかどうか、『白竜』は先ほどの話を再開したのだった。





 セイジに話があると呼ばれた『白竜』は、廊下にいた。足元に転がるのはセイジの体、魂は破壊したため生命活動は直に止まるだろう。『白竜』は思いつくまま行動するのが好きだった。じっくり考えるのは性に合わないのだ。

 『白竜』が1人だけで戻って来たことにレン達は不思議に思ったようだったが、同時にほっとしていた。まだ、心の整理が出来ていなかったのだろう。


「『白竜』様、教えてください。セイジさんが死んじゃうって、助かる方法はないんですか?」


 カーラが『白竜』にすがり聞いてきた。助かるも何も、もう死んでいる(・・・・・)。転生させるということは、記憶と体が同じ別人を作ることだと『白竜』は認識していたからだ。そのことを正直に言えば面倒になるだろうと『白竜』には予測できた。なので、『白竜』は半分くらい適当にでっちあげることにした。


「転生しかけの魂を戻す方法はないよ。だからね、救う方法はない」


「そんな……」


「だったら、魂を転生させちゃえばいい。そうすればもう魂が体の寿命よりも前に壊れたりしないからね」


 泣き出しそうになっているカーラを宥めるかのように『白竜』は頭を撫でた。


「セイジさんを助けてくれますか?」


「うん、約束するよ」


 『白竜』は無責任にそう答えたのだった。『白竜』は知っている、魂を入れ変える時点で今まで存在したセイジと違うものになってもおかしくないことを。

鬱展開って難しいよね。

次回セイジ転生。若干ギャグよりになりそう。

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