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ハードボイルド(笑)に生きよう  作者: 最小
イロモノ銃剣使いと盾戦士
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その28 ギルド職員への用事

難産! 色々セイジが知ってる情報をギルド職員に話してやりたいけど長いから一気はやめた。というか、出勤前に私は何やってんだと。

 『彼女』に話しかけれられるというちょっとした事態はあったが、セイジは冒険者ギルドに到着した。


「珍しくこちらにいたな」


「レンもそうだが、アンタら酒場覗いてから来たな」


「大体あちらの方にいるだろう、ラゥガンは。私のギルド証がここに保管しているというメモが置いてあったのだが……あるか?」


 その言葉を聞いたギルド職員は鍵のついた机を開き、ギルド証をセイジに投げ渡した。セイジは早速と言わんばかりアイテムボックスを開きコンパクトミラーとナイフを取り出す。


「すまない、髭を剃りたいから洗面所を借りても良いだろうか?」


 セイジが至極真面目そうな顔で言ったため、呆れた顔で好きにしてくれとギルド職員は答えたのだった。





「カーラとレンに顔見せておけよ……といっても、レンは狩りに出てるから今いないがな」


「そうか。そういえば誰が運んだんだ? 自力で帰る想定でいたのだがな」


「嬢ちゃん2人だよ。えらく心配かけさせた癖に想定内だったってことかよ。やってらんねぇな」


異世界(リュエンドクライム)で何度もやった手だったからな。違いは、多少被害が大きかったくらいだ。……やらないに越したことはないんだけどねぇ」


 声色が変わったことを訝しみ、ギルド職員がセイジの方を見てぎょっとする。今まで見たとこのない表情を浮かべていたからだ。付き合いが長いとは言い難いが、それでもニコニコと満面の笑みを浮かべることはないと知っていた。しかも、どこか物騒な雰囲気をたたえている。


異世界(リュエンドクライム)とこの世界では違うとわかっていながら、レンの強さを異世界(あっち)で考えていた私のミスだね。私自身も思い上がっていたね、格下しか相手しないでいたから鈍ってたのかなぁ。使える手はどれだけ増やしても足りないってことにさ」


 セイジがここまで自身の心情を吐露するのも珍しい。ギルド職員は口を開けたままセイジを見ていた。それを見たセイジは苦笑し表情を戻したのだった。


「ああそうだった、ラゥガン。ギルド及び『白竜』に伝えたいことがある」


 急にいつもの表情に戻ったセイジに、ギルド職員は手に持っていた書類を机に置いた。体を向け話を聞く体勢をとったのを見てからセイジは話し始めた。女神の目的がゲームと同じ『白竜』の討伐であること、今この世界にいる『異界種』は実力の足りないため捨てられたものであること。


「……アンタらが来た異世界だけの話じゃねぇってのかい」


「予行演習を『異世界(リュエンドクライム)』でしていたのやもしれん。例えば、どれほどの戦力を整えたら『白竜』を倒せるか、とかな」


 もっと細かく言えば、『白竜』を倒せるプレイヤーを再現した『異界種』が欲しかったのだろう。しかし、セイジはそのことを言わなかった。

 セイジは『生まれ育った世界』の記憶を2重に持っている箇所がある。片方の記憶――女神が作り出した記憶――しか持っていないのが普通ならば、『異界種』はプレイヤーではない、ということになる。セイジはレン、あるいは他の『異界種』に言わないことに決めたのだ。


「アンタの意見はこの町に来たときと変わらないのか?」


「『異世界(リュエンドクライム)』とこの世界の『白竜』は違うのだ。いや、あちらの『白竜』も悪ではなかったのやもしれん。『邪徒』を作り出したのは『白竜』であると、あちらにいるときは思っていたが……『邪徒』を作り出していたのは女神だった」


「オイ待て、そっちは初耳だぞ!」


「私も思い出したのが今朝か、その少し前か、だからな」


 思い出した原因が、体を癒すために飲んだ丸薬があまりにも不味かったからというのをセイジは黙っていることにした。話を戻すようにやや早口でまくしたてた。


「ともかく、『白竜』を信仰している地に住んでおいて害そうなどと私は思わないな。現時点で危険な思想を持つ『異界種』はもうギルドの方で対処したのだろう?」


「……ああ、友好的(・・・)な『異界種』しかギルドには属してねぇよ」


 ギルド職員は吐き捨てるように答えた後ため息をつき、絞り出すように言葉を続けた。


「今日はここまでにしといてくれや、あんまり一気に言われても困る。後、レンの他に1人『異界種』をこの町で預かることになってな…面倒見てくれや」


「ギルドのオッサン~、こっちにいたんだな」


「酒場いないからこっち来たぞ! ラゥガン」


 話に区切りがつき、セイジが帰ろうとしたところ丁度良くレン達が顔を出した。ギルドに狩人たちが来たということは、ギルド職員に大事な話があるのだろう。レンがセイジに気付き、表情を和らげる。


「あっ! 銃のオッサン目が覚めたんだな、よかった」


「ああ、それよりもラゥガンに話があったのだろう?」


「そうだった、ギルドのオッサン! 魔法士に何か伝手はない? 『物理キラー』の『邪徒』がいてさ。武器の攻撃じゃ傷一つ付けられないんだよ」


 首を傾げるギルド職員に、レンは『邪徒』が持つ耐性の説明をした。魔法攻撃が一切聞かず武器でしか倒せない敵の話をギルド職員に話してはいたのだが、セイジが寝込んだことを重視してレンが話したため覚えていなかったようだ。


「レン、『異世界(リュエンドクライム)』で有効だった魔法以外の手があるのだが試せるだろうか?」


 話を聞いていたセイジがレンにあるタグを渡した。レンがタグから武器を出してみると、それは何の変哲もない斧だった。


「投げ斧だ。投擲武器は『物理』、『魔法』のどちらでもないようでな。『遠距離キラー』出ない場合ならば有効だ。『異世界(あちら)』と同じなら投げなくても効果あるから、これを使うといいだろう」


 セイジが試してみたいこと……それはレンが知らなかった、酷く残念なゲームの仕様であった。

次はセイジと修の顔合わせ。魔法使えるからセイジ活躍するのかねぇ。

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