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ハードボイルド(笑)に生きよう  作者: 最小
イロモノ銃剣使いと盾戦士
28/45

その27 『彼女』の疑問

セイジ視点の補足をしたかった。ただ、補足はできてはない。

 彼女は不機嫌だった。気に入っていたおもちゃがまた壊れてしまったのだ。

 協力者であるウァンクナーテには内緒で、気に入ってた『異界種《おもちゃ》』だけ彼女は残しておいた。しかし『異界種(かれ)』らはゲームと同じ感覚で『邪徒』の討伐に参加したり、異世界に来たことに浮かれゲームでは抑えていた欲望を露わにしたりした。その結果、冒険者ギルドは『異界種』を使い潰す方向に舵取りをしたようだ。

 彼女は、目の前にある宙に浮いた映像を見て、また1人灰色になった箇所に手を這わせた。

 『セイジ』と書かれていた。おもちゃの中で3番目か4番目くらいに気に入っていたものの名前だ。




 ――セイジに興味を持ったのきっかけは、チュートリアルで1時間以上銃の出し入れの練習を始めたことだった。ゲーム初日、セイジは中々進めないチュートリアルの後、敵が出現するエリアで『昼寝』を始めた。敵がいるため、セイジは眠ったあとすぐに死に戻ることになる。セイジはステータス低下も気にせず何度も、昼寝をした。

 彼女はそれを面白いと感じた。しかし、最初は新鮮に感じたが、観察を続けるには動きがない。そのため、彼女はセイジのことを忘れ別のおもちゃの観察をしていた。

 2か月後、たまたまセイジの存在を思い出した彼女は、また観察をしてみることにした。

 ログインをして、銃の手入れをした後は2キャラ目に変更して武器の素振りを始めた。どうやら、銃以外の武器を使ってみたいようだ。その後は、やはり『昼寝』をしに行った。そこまではほぼ彼女が見たことのあるものだった。

 敵が近づいたので、また死に戻りするのだろうと彼女は思っていた。予想は裏切られた。

 セイジが無造作に銃を抜き放ち、敵を撃ち抜いたのだ。そしてセイジは、何事もなかったかのように昼寝を再開した。セイジは昼寝をするために強くなっていたのだ。

 セイジが得意とする『急所狙い』が出来る部位は非常に小さく、ゲームの命中補正機能を使った場合は滅多に当たらないように設定されている。どうやらセイジは、この命中補正機能に頼らず正確に攻撃を当てているらしい。あの無意味な素振りは、こういうところで役に立つのかと彼女は関心したものだ。

 それから暫くセイジの観察を彼女はしていた。銃の手入れや素振りを楽しそうに行い、敵との闘いではつまらなそうな顔をする。普通のおもちゃとは逆の反応をするセイジは何を考え遊んでいるのだろうかと、そう聞くことが出来ればいいのにと彼女が何度思ったことか――。




 彼女はリーウィの町の上空にいた。彼女はヒトではないため誰の目にも映らない。

 彼女の視線の先には、壊れているはずのセイジの姿がある。彼女はそれを見て1つの可能性に気付いた。

 『白竜』を倒すための戦力として『異界種』を作る際、普通は『記憶』と『体』を用意し、まっさらな『魂』を『体』に入れる。

 たまたま、『セイジの中身(プレイヤー)』が死んでいて、その魂が転生しそうになっていることに気付いた彼女は、なんとなくその魂を入れてみたのだ。もしかしたらあの疑問の答えを知ることが出来るかもしないと思って……。

 彼女はどうしても確かめたくなった。だから彼女はふわりと地に足をつけ、顕現した。そして、セイジに声を投げかけることにした。


「最近、『昼寝』をしないのはなぜですか?」


 もっと聞きたいことは色々とあった。だが彼女の口からするりと出た言葉はそれだった。あのゲームで昼寝をするおもちゃはセイジしかいなかったのだ。セイジが振り向き彼女を見る。表情の乏しい顔が驚きの色に染まるが、すぐに元の表情へと戻っていた。しばらくセイジは黙っていたが、じっと見つめる彼女に観念したのか口を開いた。


「昼寝をしたくなるほど疲れてはいないから、だ」


「疲れてたらなぜゲームしてたのですか?」


 首を傾げ聞く彼女に、セイジは苦笑して答えたのだった。


「音がとても心地よかったんだ。邪魔者がいなければ本でも読みに行ったのにな」


 残念そうに答えたセイジを見て、やっぱり変わっていると彼女は感じたのだった。他にも聞きたいことはあるがセイジの一言が、彼女の中にあった言葉を吹き飛ばす。


「昼寝をしなくなった『おもちゃ』は気に入らないか?」


「覚えて……いるのですか」


 彼女は思い出した。女神が……彼女がこの『記憶』を作ったのだ。今の回答も彼女が無意識に想像して出来た答えかもしれない。彼女の中にあった好奇心、興奮が冷えて消えてしまった。


「あのことは知らんぷりしたほうがいいですよ、さようなら」


 その言葉のみ残し、彼女は顕現を止めた。急に消えた彼女の姿を探すセイジに対し、最後にと彼女は宙にあった映像を引き寄せた。そして、あるものを表示する。それは今のセイジのステータスであった。


――――――――

狂狼 ●j'→

種族:異界種(元:狼)

Mジョブ:ガンナー、軽剣士、マジックソルジャー(*)、ガンマスター(*)

Sジョブ:格闘家、ガンナー、ガンナー、魔法戦士

レベル:25

体力  :★☆☆☆☆

魔力  :★★★☆☆

腕力  :★★★☆☆

器用さ :★★★★★

素早さ :★★★★★

守備  :★☆☆☆☆

魔力効率:★★★★★

――――――――

スキル:

なし

――――――――

称号:

『即死常連』『百発百中』『格上殺し』『死神』

『元:●j'→』『連れ去られた魂』『託された夢』

――――――――


 まず、名前がバグっていた。『狼』はおそらく『セイジの魂』の転生先だ。転生後がヒトではなかったため、彼女は転生が終わる前にその魂を取ってきたのだ。

 ジョブは2キャラ目以降のジョブが載っている。他の『異界種(おもちゃ)』もそうなっているはずなので、おかしな点はない。スキルがないのも全『異界種』共通である。

 称号の欄の前半はゲーム中にセイジが得たものだ。しかし後半は『連れ去られた魂』以外、彼女には思い当たるものはない。

 消え失せたはずのセイジに対する興味がまた芽を出すのを彼女は感じた。

セイジの設定の暴露回だったけど、まだ無駄に残ってるんだよなぁ…出てきてないセイジの設定。最終的に本編に出てくるけど。

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