その19 レンと『邪徒』討伐
前々から書きたかったシーンで、勢い任せで書いちゃったから読みづらくなってるかも。
翌日、レンとカーラはセイジに『銃』以外持たせない状態で町の外に連れ出すことに成功した。安定志向
のセイジは勿論渋ったが、レンが倒したことのある『邪徒』であること、セイジより『1つ上』のランクの敵であること、町からそこまで離れていないことなどを理由にどうにか説得することができたのだ。しかし、装備をセイジに任せていると投げナイフや他の武器を持ってくることは明らかだったため、キャラ変更の指輪やギルド証を含めてレン達が取り上げ、昨日紹介された銃のみタグにセットしている状態だ。
セイジの今の装備は『リボルバー銃:黒狼』を3丁、下級攻撃魔法が発射できる『魔法銃:青燕』、バフ、デバフが使用できる『魔法銃:白雀』の計5丁だ。魔法銃と違い、『リボルバー銃:黒狼』の弾は今入っている分しかなく、全て合わせて18回しか使うことができない。そのため、結局のところ……。
「『雷の下陽:雷針』」
セイジは魔法を使うことになる。3キャラ目ではないため、やや火力不足だ。セイジはいつでもカーラを庇える位置に待機し、レンのサポートをするだけとなった。
レンがうち漏らした敵は魔法では間に合わなかったため『リボルバー銃:黒狼』を使わざるを得なかった。
「レン、迂回すべきだ」
「なんでだよ」
「私が得ている情報では、この近くに一つ目巨人型の『邪徒』が出現したと聞いている。目的地に行くとしてもこのルートは通るべきではない」
進んだ方向と地図を照らし合わせてセイジはレンに忠告を行う。セイジ達が向かっているのはリーウィの町から南西にある荒野地帯、街道から外れ草の丈が高く歩きにくい場所だった。
セイジは狩人や冒険者ギルドから『3メートルを超えたヒト型』『目が中央に1つだけある』『皮膚の色が青みがかった鼠色』の存在がいるという情報を得ていた。少なくともセイジの手に負えないことは知っているため、レンに迂回を提案したのだ。
「俺たちがこれから倒すのがその『邪徒』だぞ?」
「……待て。単純にゲームの強さをこの世界に当てはめると、アレは『ランク:緑』のパーティ推奨だ。どこが私の1つ上のランクだ」
「大丈夫だって、ほとんど俺1人のダメージで倒せる敵だからな」
レンが呑気に斧を振り回しそう答えた。そして、『邪徒』を呼び込む合図を出す。
レンはその種類の『邪徒』をパーティメンバーとともに討伐したことがある。そのときは後衛は一切手を出さず、レンを含む前衛3人で片づけた。動きは速いが単調だったため、問題なく狩ることが出来たのだ。
ちなみに、レン以外の前衛はスピードタイプで皮膚の硬いあの『邪徒』にはほとんどダメージを与えることが出来ず、囮に徹していたので嘘は言っていない。
「そんな話はいい。早く立ち去らなければ補足される……!」
セイジが話を途中で中断し、レンの目に終えぬ速さで2人を突き飛ばした。転がるレンは轟音とともに地が揺れたのを感じる。音の発生源に目を向ければ、レンとカーラがいた場所に青白い巨体がのそりと立ち上がるのが見えた。
セイジはその『邪徒』が何であるか目星がついていた。基本的に敵の情報は公式から公開されていないので正式名はわからないが、『ブルーサイクロプス』とプレイヤーの間で呼ばれていた。
この『邪徒』の特徴はいくつかあり、縄張りを持ち、縄張りに入ったものを獲物を認識する。
全『邪徒』共通ではあるが一度入った獲物が死ぬまで追い続ける習性がある。この習性により、知らないうちに獲物となった者が町へ入り『邪徒』に町が襲撃されるという事態がゲームでは何度も発生した。
セイジは考える。誰が獲物となっているかだ。なんとか立ち上がったレンとカーラに向かって『邪徒』は突撃していく。
セイジが獲物になっていなかった。セイジ1人なら確実に逃げられるだろう。しかし、セイジは2人を庇うため『邪徒』との間に立ちふさがった。
隠し持っていた腕輪型ホルダーにセットされていたタグを起動し『反射具:木の盾』を出す。消耗品で一度だけ攻撃を弾き飛ばすという効果だ。レンにはタグは10個までしか装備できないという、ゲーム仕様という固定概念が残っていた。一度取り上げたときにタグが10個既にあったため、この隠していたタグには気付かなかったのだ。
3メートル強の巨人と2メートル程度のセイジ、セイジが遠く弾き飛ばされるのは当然だった。なんとか着地に成功したセイジは、巨体の気を引くためだけに『魔法銃:青燕』から『雷の下陽:雷針』を発射する。
「レン、『ブルーサイクロプス』についてどこまで知っているかわからないから言っておく。奴は『魔法キラー』、ゲームでは魔法攻撃によるダメージを全く受けない体質だった。また、『遠距離キラー』で銃どころか投げナイフで切り付けようとしても弾き飛ばされる」
あのゲームは基本的にパーティプレイ推奨のゲームだ。通常の武器による物理攻撃、魔法や魔法武器による魔法攻撃の2種類が存在した。また、武器や魔法武器による近接攻撃、銃などの飛び道具や攻撃魔法の遠距離攻撃の2種類が存在し、その4つの耐性がそれぞれの敵に設定されていた。
絶対的な耐性を持っていた場合、〇〇キラーと呼ばれる。『ブルーサイクロプス』はセイジが言った通り魔法と遠距離攻撃に対する絶対的な耐性を持っている。セイジが使えるのは遠距離攻撃である『リボルバー銃:黒狼』、そして魔法攻撃を行うことができる『魔法銃:青燕』だ。
つまり、セイジは『ブルーサイクロプス』を倒す手段がなかった。
次は後半戦。セイジ役立たずの状況だけど頑張れ。




