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ハードボイルド(笑)に生きよう  作者: 最小
歌う女剣士と同郷の女斧戦士
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その18 イロモノ系ガンナー

セイジに持っている武器語りはさせちゃいけない。

 セイジは2人が見たいといった『銃』のタグをアイテムボックスから取り出していく。

 タグは薄くのばした板状の金属で、何が入っているかわかるように絵が彫られている。武器だけではなく農具や工具などを入れるものでもあるため、中身を判別しやすいようにするためだ。

 セイジが取り出したタグをカーラとレンは見ていた。


「なあ、これは?」


「『リボルバー銃:黒狼』だ」


「レンさんはその武器知ってますか?」


「ああ、銃の中で最強で一番いらないって言われてるやつだ」


「……いらない?」


 あのゲーム(ホワイトドラゴンズ)にはメンテナンスというプレイヤーの時間を拘束する仕様がある。プレイヤーから特に不評のある仕様、そのメンテナンスにかかる時間と頻度から、最もメンテナンスをする必要のある武器が何か調べたプレイヤーがいたのだ。件の銃『リボルバー銃:黒狼』がそうだ。

 その情報が公開されて以来、誰もその銃を使用しようとせず売ろうとした。しかし、NPCの店は在庫が一定を超えると買い取り拒否するようになっていた。そのためプレイヤーに売ろうとするのだが誰もいらないのだから売れない。最も安く手に入るいらない武器が誕生した。


「誰も使わない武器なのにセイジさんは持ってるんですね」


「手入れを苦に感じないならとても良い武器だからな。今腰のホルダーに差しているのがその銃だ」


「あの、同じ絵のタグがあるんですが、これは?」


「『リボルバー銃:黒狼』だ」


「……なあ、これは?」


「『リボルバー銃:黒狼』だ」


「いくつ持ってるんだよ!」


「タグホルダーに2丁、アイテムボックスに8丁だな」


「多すぎだろうが!」


「安く手に入るからな」


 そういう問題ではない。

 セイジは銃のメンテナンスの様子を眺めるのが好きだったため、わざと一番メンテナンス頻度が多いこの銃を選んだ、とのことだった。それにしても多いだろうとレンが思ったのだが、毎回のログイン時に銃の手入れがしたいからわざと増やしたことがわかった。レンはそれ以上突っ込むのをやめ、他のタグに目を移した。


「こいつは結構有名だな。『魔法銃:白雀』だろ?」


 レンが持つ『魔法銃:白雀』の知識を話した。Mジョブがガンナーの時のみ本来の能力を使用できる銃で、その効果は単体のバフもしくはデバフ……つまり能力の上昇と下降だ。ゲームによってバフやデバフが強かったり弱かったりするのだが、あのゲーム(ホワイトドラゴンズ)ではある意味前者で後者だあった。

 前者はバフやデバフは必ず成功するという点だ。敵の能力を必ず下げることができるため魔法系のジョブには必須の魔法となっていた。

 後者はバフで全能力合計値の1.1倍以上にすると、反動としてバフの効果終了後にダメージを食らうことだ。全能力とは腕力・器用さ・素早さ・守備・魔力効率の5つのことであり、どれか1つを1.4倍にするのが主流となっている。

 もう一つ、デバフは自身にかかっているバフの分相手の能力を下げるという謎の仕様があるためだ。たとえば、こちらの腕力を1.4倍にすると相手の腕力を4割減することができる。そのためまず自身のバフをかける必要があり、こちらの消耗の割りに効果が薄いと言うものがあった。

 さて、この『魔法銃:白雀』という銃の効果は『全能力を短時間2.5倍にする』というものだ。通常の能力上昇魔法よりもはるかに効果時間が少なく、15秒となっている。全能力を2倍にした場合、ほぼ死ぬギリギリの体力となる。もしバフの反動のダメージでは死なないという仕様がなければオーバーキルになっていたところだ。


「この世界にもバフの反動があってな、体の内側から破壊する効果となっている」


 そう、セイジがバフについて補足した。


「……この世界でもガンナーはアーチャーの劣化になってそうだな」


「この世界にジョブという概念があれば、真っ先にそうなってただろうな」


 その後も、セイジはカーラに見せたことのある下級魔法を撃てる銃の『魔法銃:青燕』のほかに、ガンナー初期装備である『オートマチック銃:鉄の銃』の紹介をしようとするセイジに、カーラとレンはもう紹介はいいと言い断ることに成功したのだった。




「でもセイジさんって、銃使ってる事ほとんどないって聞いてますけど、どうしてなんですか?」


 セイジが酒場に行ったところで、カーラはレンに訪ねた。カーラが銃を抜いたところを見たのは、初めて出会ったとき……つまりセイジに助けてもらったときだけだ。セイジとよく狩りに行く狩人からの話でも、セイジは飛び道具は投げナイフしか使ってないという話だった。つまり、カーラが知る限りセイジは銃を使っていないのだ。

 カーラはセイジが銃を撃つ姿を見てみたいと思っていることをレンに話した。助けてもらった時は逃げることで頭がいっぱいで、きちんと見ることが出来なかったのだ。


「あ、じゃあオッサン誘って狩りに行くときにカーラも来るか? 丁度狩ってみたいやつがギルドの張り紙にあってさ。セイジは銃以外の武器持たないように取り上げてから行ってみようぜ」


「はい! ぜひ行きたいです」


 レンとカーラはどうやってセイジに銃以外持ってこさせないか作戦を立てることにしたのだった。

次はレンを連れて戦闘回、セイジが置物にしかならなそうだ。

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