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ハードボイルド(笑)に生きよう  作者: 最小
歌う女剣士と同郷の女斧戦士
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その16 セイジ視点、積み重なる違和感

ゲームで昼寝という謎行動。

 ――夢を見た。


 白い空間……ではなかった。病院の待合場所。

 最近、健康診断以外で病院の世話になった記憶がないから健康診断の光景のはずだ。看護師に呼ばれ促されるまま私は個室へ行く。


「その年でVR適応診断は珍しいですね。普段どんなことをしているんですか?」


 看護師にそう話しかけられ、私は首を傾げたくなった。セイジの姿で異世界に来る直前の私は、もうすぐ28歳になるかで、そのくらいの年齢でVRを利用しない方が珍しいはずなのだが……。


「景色を見に行くくらいですね。居心地の空間で音楽を聴いたり、本を見たり、昼寝をしたり……あまり景色を見ていない気がしますけどね」


 夢の中の……登場人物として存在する私が勝手にそう答えた。そう、これが私のVRの楽しみ方だ。ゲーム(ホワイトドラゴンズ)でやってることは……銃の手入れが4割、昼寝が4割で、残り2割が敵を倒すだ。新しい職業や珍しい武器とか手に入ればその割合は変わるけども。

 そんなくだらないことに思いをはせていると、夢の中の私が右手の甲を見る。右手の甲にはちっちゃな傷あとがある。子供の頃、すりむいてできた瘡蓋(かさぶた)がついつい気になって剥いでしまって出来たとても些細なものだ。

 28歳とは思えない……セイジのように大きくはないが皺の目立つ手がそこにあった。





 夢見が悪いのか、すっきりとしない目覚めの日が続いている。そういう日は早朝の鍛錬にかける時間を多めにとるようにしている。目覚めの良くない日は、体に残る違和感が増すのだ。


「*@・-、セイジ」


 亭主がいつものように声をかけてくる。なぜか私は亭主が何を話したのか理解できなかった。

 亭主が怪訝な顔をして私に話しかけてくる。次第にピントが合うかのように、その言語が何であるかを思い出すことができた。


「セイジ?」


「ああ、亭主お早う。どうやら寝ぼけていたようだよ」


「あ! お早うございます、セイジさん」


 高い位置にくくってある犬のしっぽのような髪、ポニーテールというやつが揺れてるのが見えた。彼女が起きだす時間は夜明け、私が鍛錬をしている最中だから珍しい。


「お早う、カーンラッチェ(・・・・・・・)


「……え? ええ?」


 私が挨拶をかけると何故か驚かれてしまった。少し顔が赤いがどうしたのだろうか? そう疑問に思ったけど何も言わず鍛錬を始めることにした。

 今日の獲物は寸鉄と呼ばれる、輪が真ん中についた大きな針だ。暗殺用にしか見えないこの刺突武器はゲーム中では刺突属性の短剣として扱われ、盗賊系のみ装備可能のものだった。あの頃は時代劇にはまってたのでよく使っていたなぁ。

 真正面からの打ち合いができないため、奇襲以外でうまく刺せた試しがない。投げナイフなどの飛び道具ではよく当たるのにな。今回は、他に武器を出すことが出来ないという想定で動いてみよう。できれば、警戒されないよう相手の視界に寸鉄を見せないようにするべきだが……その状況では無理か。ならどう動くべきだろう。こちらは武器で受け流すことは出来ないから(かわ)し続けなければならない。

 目つぶし、足払いなどどうやって一撃を与えられるを考え、鍛錬の武器として間違った選択だったことに気付いた。とりあえず、正確な位置を貫けるよう素振りに近いものを始めることにした。ただ、剣の素振りとは違いどの体勢でも行えるようにとしたから、傍から見ればすごく滑稽に思えたかもしれない。





 朝食を終え部屋に戻ればレンが起きだしていた。彼女は――中身は彼であると早々に暴露されたが今の見た目は女性なので彼女とする――宿屋の代金を節約したいからと、私と同室になるのを希望したのだ。私が使用しているのは4人部屋。この宿屋は4人部屋が2つと6人部屋が1つしかないので、亭主も特に反対しなかったが、カーラ(・・・)は性別が違うのだから別なのが普通じゃないのかと不満そうに言っていた。不満のある時はカーラの頭にある尻尾(ポニーテール)……あれも心なしか垂れている気がする。


 レンは、高いランクの冒険者であることを生かしたかったのか、最初は『邪徒』専門の討伐を受け持っていた。『邪徒』の数が減り、戦うということに慣れてからは、少々無理をして狩人たちや私と狩りに行くようになった。

 最初は血の臭いに吐いたり、すくんで動けなかったようだが最近は自分から進んで武器を振るっている。そうなってくると、元のレベルの高さもあり活躍できるようになり、積極的に『殺し』をしようとしているように見える。私にはそれが少しだけ危うく見えた。


「なあ、オッサン。オッサンは帰りたいと思ったことある?」


 レンがそう聞いてきた。帰るとは……生まれ育ったあの世界を指しているのだろう。

 レンに言われ、私は元の世界に帰る方法を一切考えず、『どうやってこの世界で生きるか』試行錯誤していたことに気付いた。


「俺はさ、なんでか……ないんだよな。変だよな。こんなに寂しいのに、親父もお袋もここにはいないのに、友達(ダチ)もここにはいないのに……帰りたいとは思わないんだ。帰れないって思ってるからなのかなぁ」


 私は何も答えることが出来なかった。レンとほとんど変わらなかったからだ、帰ることは出来ないのが当たり前なのだと考えていたのだ。

セイジは相変わらず意味不明だなぁ。

この段階でなんでセイジがおかしいのか予想出来る人はおるんかね、核心つかず小出しにしてるから無理か。

レンは親元を離れてない年齢なので、1人で4人部屋は無理なようだ。

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