その11 女神が作り出したモノ
戦闘シーンまでたどり着かなかった!
セイジはリーウィの町に戻っていた。隣町に行くには距離があったからだ。セイジが真っ先に向かったのは『銀乙女の酒場』だ。今の時間帯、ギルド職員がここにいることの方が多いことをセイジは知っていたのだ。
「ちゃんとカーラちゃんが怪我しねぇように帰ってこれたってのは上出来だなぁ、『弾なし』」
「今回もやっぱ弾は撃たなかったか?」
カーラは眉を寄せる。早速と言わんばかりにセイジが酒を飲んでいる狩人たちの方へ突撃したからだ。セイジが席に座ったからか、ギルド職員も移動してきた。
ちなみに『弾なし』とはセイジの2つ名の1つだ。銃について説明するとき「弾がなくなったら役立たずになる」と発言したことで、『役立たずな状態のセイジ』を指すときにそう呼ばれるようになったのだ。言われている本人は下ネタと気づいていないのか全く気にしていない。
「で、わざわざこっちを選んだのはあの獣の情報が欲しいからか? あいにくだが前の酒の席で話したのが全てだぜ」
「いや、情報を貰う方ではなく出す方だ」
この空間だけ温度が下がったかのように彼らは黙り、表情が強ばる。ギルド職員もセイジも隠さずにいたので、セイジが『異界種』であることは狩人たちも知っている。見たことのない獣と『異界種』に何らかの関係性があると考えるのはとても自然なことだ。セイジは一呼吸置いてから話し始めた。
「まず、アレは異世界に存在しているもので、生き物ではない。『邪徒』と呼ばれる。『異界種』の使命の1つにアレの討伐があってな、私も何度も狩っている。あの蜘蛛型のは弱い部類だがへそ上のあたりにある核を破壊しなければ壊すことはできない。アレの特徴として、1体でも壊したら周囲から集まってきて壊したものを倒すまで群がるというものがある」
「つまり、うっかり倒しちまったら……」
「アレを全滅させるまで人の集まる場所へは行くべきではないな。私が逃げる選択をしたのも数が多すぎて準備無しに対処は出来ないと判断したからだ」
説明が一区切りついたのか、セイジは酒を煽る。
「あの『邪徒』だとかいう獣の倒し方はわかったが、準備できればセイジでも全滅させられるってのはどういうことだ?」
狩人の1人がセイジに問う。セイジは『ランク:赤』であり、狩人たちと力量としては大して変わらない。何か特別な方法があるのではないかと考えたのだ。
「アレを容易に全滅させられる魔法が存在する。1人が数体アレを壊し囮となっているうちにその魔法を発動させ一気に消すのが良くとられている戦法だ。しかしその魔法にはいくつか問題がある。1つ、詠唱に時間がかかり、数が少ない場合は自力で全滅させたら早いこともままある。2つ、あの魔法は『人種』などの生き物には効果がないが、詠唱者以外の『異界種』も対象となることだ。3つ、あの魔法を使うとしばらく……2、3日は喉を傷めてしまうことだ。他の魔法を打てなくなる」
セイジがまた酒を煽った。他の者たちは考え込み、やがてギルド職員は1つセイジに恐る恐る聞いた。
「生き物には効果がない、といったな。でも『異界種』にも効いちまう魔法……、まるで『異界種』が生き物じぇねぇと言いてぇみてぇだが」
「『異界種』は生き物ではない。女神が『異界種』を異世界に呼ぶとき、生きている別の異界の魂だけを呼び出し体を与えた。生きていない方が女神にとって都合がよかったのだろう、消耗品のように壊れては、同じ体を何度も与えられた」
ゲームではプレイヤーのみが死んでも生き返ることができる、その設定を掘り下げた結果そうなったのだろう。
「そろそろ本題に入りたい。アレを一気に壊す方法を私はとることができるが『異界種』がほぼいないこの世界ではどれだけアレの数が増えているかわらかない。私に群がっているアレの数減らしを引き受けてくれるものはいないだろうか?」
「片づけてくれるのはこっちとしてもありがてぇが、アンタがやる必要があるもんなのか?」
「アレに居座られるとカーラの依頼が達成できん」
ギルド職員の問いに対するその答えに周囲は呆れかえったのだった。
私が書くと戦闘シーン躍動感がないから頑張らんとな。
しかも間違えて『魔種』になってる




